村の問題を解決しました★(挿絵あり)
松明を持った男はしばらく相方を探していたが、やがて悲鳴を上げてどこかへ走り去っていった。
気持ちはわかる。
――――
それから先は早かった。
朝が来て冒険者を引きづりながら訓練場まで移動し、レイナさんマユちゃんと合流した。
レイナさんは号令魔法を何度も使い、事件の全容を掴んで村長に話した。
事件はどこぞの貴族が男たちにマジックアイテム『眠りの指輪』を渡して泥棒を頼んだのがきっかけだったようだ。
貴族はアーノルド様を次期領主にしたい一派で、レイナさんの評判を落とすのが目的だった。
おそらくその貴族は他の地方の領主のために画策する間者になったんだろうってさ。
ちなみにアーノルドというのはレイナさんの弟で魔法の才能があるそうだ。
号令魔法の才能はレイナさんに及ばないらしいけれど、他の魔法に優れた才能があるんだって。
この世界の上層部は魔法至上主義で、号令魔法よりも破壊力に優れる魔法を使える弟さんが領主になった方が政治で優位に立てると主張しているんだそうだ。
姉弟そっちのけで行われる政権争いの一端で彼女は命を狙われ、村は危機に陥っていたのだ。
そしてナーナ村で暗躍していた二人の冒険者は、報酬に目がくらみ国力を落とす計画に乗ったらしい。
「なんというか……なんというか……」
尋問して得た情報を話すたんたんと話すレイナさんにどう言っていいかわからず、二の句が継げなかった。
「もう数年になりますので慣れちゃいました」
「むう」
子どもの背伸びなんて見たくない。
けれど、どうしていいかわからずレイナさんの頭をわしわしと撫でつけて、
「力になるからね」
とだけ言った。
そう伝えたときのレイナさんの顔は酷く歪んでいて、笑っているような泣いているような不自然な表情で、
「そう言ってくれた人はみんないなくなっちゃいました」
と頬を緩めた。
俺が彼女の経験してきた経験の前に今度こそ何も言い返せず項垂れてしまうと、
「ですから、どうか普通に生きてください。ユウキさん。あなたは私の恩人なんですから」
……元気づけようと思ったのに逆に慰められてしまった。
普通に生きる、か。
言い返せなかったけれど、もっと常識も知識も力もつけていつか横に立てるようになったら改めて彼女に告げよう。
今はまだまだ彼女におぶってもらっている荷物なんだから……。
頑張ろう、そう思った。
――その後、ナーナ村に到着した馬車に揺られて俺たちは村を出た。
レイナさんの住む街――俺とマユちゃんが今後拠点とする予定の街には、馬車で一週間ほどで到着する。
ウッドクォークと戦うことになったあの日、レイナさんが持っていた手紙には親御さんから馬車の手配が整ったことが書いてあった。
片道一週間の道のりなのに、迎えに時間がかかった理由は怪しい勢力の排除を行っていたからだそうだ。
レイナさんの命を狙う勢力がいることは悲しい話だけれど、家族仲は良さそうだとわかって少しだけ安心できた。レイナさん曰く弟とも仲良しなんだって。
「そういえばユウキさんに内緒にしていたことがあるのですが……」
馬車の中、レイナさんとマユちゃんは秘密を打ち明けるようイタズラっぽい笑顔を浮かべている。
「なんだろう……私が外に出ちゃダメな理由が関係あるのかな?」
この一週間驚かせたいことがあるからと日中は外に出させてもらえなかった。
あまりに暇だと伝えたときも、従者の方が睡眠魔法をかけてくださるぐらいの徹底ぷりだった。
「どうぞ。外を見てください」
マユちゃんにぐいぐいと背中を押され、外に出る。
久しぶりに浴びる日光に目を細めると、バカでかい高さの何かが見えた。
「あれは……山? いや、樹!?」
「ようこそユウキさん。冒険者と世界樹の街タルミアへ!」
遠近感が狂ってるようなバカでかい巨木の周囲に広がる街門の前で、馬車から降りてきたレイナさんは誇らしそうに手を広げた。
「タルミアは冒険者を歓迎します。どうです? ユウキさん好みの街でしょ?」
口を大きく開けて動けない俺の手を引いて、レイナさんは得意げに歩き出した。
こうして開拓地ナーナ村を巡る一つの事件は解決し、俺たちとレイナさんは冒険者の街タルミアで別れることとなった。
――――
冒険者の街タルミア。
そこは若き夢追い人にとって憧れの地である。
ここタルミアは一旗揚げようと夢を抱いた若者たちの集まる土壌があった。
世界樹の存在、その存在がこの街に冒険者を惹き付けてやまない。
国の文献にも残らぬほど古い時代から、世界樹はこの地にそびえ立っていた。
その大樹の恩恵にあずかるため、周囲には人が集まり村となった。次に商人が利益を求めて集い、次第に名もなき開拓村は大きく繁栄していく。
現在世界樹は王家の所有する財産となっており、その調査と維持は辺境伯クリストファー氏が行っている。
未だ世界樹については謎が多く、冒険者の心を揺さぶる甘い果実となっている。
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次回より新章となります。
主役等々の変更はございませんが、しばらくレイナさんが登場しませんのでおまけに彼女のイラストと簡易設定をおいておきます。
名前:レイナ・クリストファー
種族:人間
年齢:16歳
性別:♀
性格:穏やか
ステータス
体力:D(一般人並)
筋力:E(一般人以下)
敏捷:C (なかなか)
精神:B(熟練)
魔力:A(高い)
汎用技能 :レベル
風魔法 :上級
補助魔法 :上級
回復魔法 :中級
護身術(無手・棒):C (なかなか)
立ち振る舞い :貴族級
固有技能
・号令術の才能 :A
フレーバーテキスト
クローラー王国、マニュット地方辺境伯の娘。
血で血を洗う暗い政治闘争の中、計略にかかり命を落としかけユウキと出会う。
性格は温和だが、ひとたび杖を握れば小さな体からは想像もつかない膨大な力が解放される。
膨大な魔力は彼女の想いに応え、天は裂け地にはハリケーンが巻き起こり家が吹き飛ぶ。
しかし、彼女の真の恐ろしさは風魔法ではない。
巧みに風魔法と組み合わせて放たれる彼女の『号令』一つで敵は戦意を失い民草は一兵まで死せる戦士へと早変わりする。
そんな彼女が真に求めたのは地方領主としての地位ではなく、気の置けない友人だったとか……。
――
本作のヒロインかつ導き手です。ユウキが転生して最初に出会う賢者ポジションです。
ユウキがこの世界のことを全く知らないので目立ちませんが彼女もなかなかに世間知らずなお嬢さまです。
魔法至上主義の本世界観において非常に強力な性能で、戦闘場面に彼女が登場するとそれだけで戦闘が終わる、ぐらいのものとして考えています。
ユウキにはちょくちょく人間ミサイルと評されています。
戦闘面ではほとんど隙のない半面、私生活では年相応に悩んだり幼かったりする――のですが上手く書けているかはなんとも……。
イラストはかしわぎタモツさん(pixiv.net/member.php?id=5530869)より頂きました! ありがとうございます。




