調査してみる
非常に分かりづらかったので、魔法の名称を整えました。(2016/5/1)
今までに登場した魔法
水の初期魔法
氷魔法 コキン→アイス・ブリッド
水魔法 ゴウン→ウォーター・ブロウ
風の初級魔法
ヒューム→ウインド・カッター
中級、上級はメガ・ギガ を頭に着けることでわかりやすいようにしていきます。
―――――
「今日は、にくやきいもセットで」
「私も同じ、肉、焼き芋セットを一つください」
お昼。ちょっと豪華なお昼を食べたい村人や冒険者パーティーがテーブルにつき、少し騒がしいギルドの食堂で今日も今日とてレイナさんは俺と一緒のメニューを頼む。
肉焼き、芋セットじゃなかったのか。
「受けましょうか。その依頼」
レイナさんは開口一番そう言った。
「わかった」
了承の意を返す。
依頼を受けるときは手伝うと約束したからね。
「お昼を食べ終わったら、問題の保管庫を見に行って、それからどうするか決めましょうか」
指先で丸を作り、彼女の提案に了承の意を告げ、レイナさんの食べ方を真似しながらのんびりと時間は過ぎていく。
「ここが保管庫だね」
件の事件――いつの間にやら食糧が少なくなっている事件――の調査に来た俺たちは木で建てられた倉庫を覗き込んだ。
中は、乾燥していて長期的な保存に向きそうだ。
真ん中は腰ぐらいの高さの台座が置いてあり、そこには決して多いとは言えない干し肉や野菜が麻袋に分けて入れられていた。この袋を持って、街に売りに行ったり、商人に渡したりするのだろう。
端には土のついた農具が立てかけてあることから、食糧保存以外にもこの倉庫が使用されているとわかった。
だから台座を置いて、万一にも食糧を踏まないようにしているのだろう。
扉以外に出入口はなし。台座や農具をどかして床を調べても穴などは開いていない。
そういえば鍵はどうしているんだろう。
見張りの村人に聞いてみる。
「ええと、普段は閂をしているだけです。ですので、俺みたいな村の男が交代で見張っています。盗みがあってからは、二人組で見張るようにしています」
誰でも犯人になりえると……。
小さい村だし仕方ないんだろうけど頭が痛くなる。
ちなみに質問をしているのは俺だけど、レイナさんの従者というイメージが広まっているのか、非常に丁寧な応対をしてもらえている。ありがたい話だ。
「被害にあう頻度は?」
「たぶんですけど……一週間に一度ぐらい……」
多すぎる……。
そんな頻度で盗みが続けば、この村はすぐに干上がってしまう。
それだけに切羽詰まっていたんだろうな。
「あと、疑わしい人は? 急に羽振りが良くなったとか」
「……これといって特に……。というか、ゴブリンの仕業って話ですし……」
ああ、そういえばゴブリンが食糧を運んでいるのを見たんだっけか。
これは失言だったかな?
彼も答え辛そうにしている。
「『疑わしいと思う人がいれば、教えてください』」
ニコニコと微笑むレイナさんから魔力が洩れるのを感じた。
「やっぱり冒険者のやつらか、村の見張りの誰かが……って何を言ってるんだ俺は。すいません確証もないのにてきとうなことを言ってしまって」
見張りの村人さんが魔法に気付かなかったことに内心安堵の息を漏らす。
「それじゃ、戻ろうか」
村人さんに礼を言い、レイナさんの手を引いて保管庫を離れる。
なんとなく、このまま質問をし続けるのが怖かったからだ。主に隣の人の魔法が。
俺でも魔法の発動がわかるんだから、きっと他にもレイナさんの魔法発動を感じ取れる人はいるだろう。
こうやってレイナさんが無理やり情報を聞き出しているとわかると犯人は雲隠れしてしまうかもしれない。
ギルドに戻り二階の宿屋のドアを閉めたら、作戦会議の始まりだ。
「さて、どうしよっか?」
蒸れやすいブーツを脱いでベッドに飛び乗る。
レイナさんはベッドの端に腰かける。
「その前に。ユウキさん。驚きました。あんなに調査がお上手だったなんて……」
予想外でした、と賞賛の言葉が紡がれる。
「いや、そうでもないと思うけど……」
本当に大したことはしていない。
保管庫の状態を見て、見張り番の村人に話を聞いただけだ。
「いえ、私では思いつきませんでした……」
キラキラ瞳の彼女に、レイナさんならどうするかを聞いてみると、
「実は私、調査をしたことがありませんので……」
ノープランだった。
保管庫に行ってみたはいいけれど、彼女は何をしたらいいのかもわからなかったようだ。
「そっか」
レイナさんは生粋のお嬢さまだったね。
すっかり忘れてしまい、なんでもできそうな印象がある彼女だけど、よく考えなくても年はずいぶん元の俺より若いんだ。
できないこと、知らないことも幾つもあって当たり前、当然だ。
頼りになりそうだからいつもつい頼ってしまうんだよねえ……。
頭をガシガシと掻く。
「それじゃ、まず犯人像だけど聞いてくれる?」
「はい、お願いします」
「犯人はゴブリンじゃないかって噂だけど、見張りの居る村の倉庫から見つからずに食糧を何度も盗み出すのは不可能だと思う」
「うーん……。仰る通りだと思います」
レイナさんも同意する。
ゴブリンは知能が低い。実力行使で食糧を盗んでいくならありうるにしても、こっそり何度も成功させるのはありえない。
床に穴も開いてなかったから地下から忍び込んだ可能性もない。
「週に一度ぐらい盗まれるんだから、犯人は村に常駐しているかそれに近い立場だと思う。ゴブリンは偶然か、あるいはブラフか」
「でしたら、私たちが居ると盗みに入らない可能性がありますね」
「盗む目的によるんだろうけど、余裕があるなら盗まない」
調査に乗り出した人間の前で盗むなんて――よほどの自信家か、特別な目的がある、もしくは余裕がない場合だろうとレイナさんに話す。
「私たちが来てからの被害はありませんね。何か考えはありますか?」
そんなつもりはないだろうけど、期待するような響きにプレッシャーを感じる。
さっき頑張ろうと考えたからかな。
「二つ、あります」
何故か敬語になる。
「一つが、ローラー作戦。もう一つがトロイの木馬作戦」
「おおー」
意味がわからない言葉にとりあえず拍手で乗ってくれるレイナさん。良い人だ。




