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異世界の冒険者  作者: かやばさん
異世界にいました
16/51

冒険者適正 後 そしてFランク冒険者へ

そういえばこの話って……ガールズラブ予定なんですよね。

話が進まなさ過ぎて忘れてました!



「ほれ、これに必要事項を記入してくれ」


トン、と置かれた作りの荒い紙にはまるで読めない文字が細かく書いてあった。


「私が代りに書きますね。ユーキさんは字が読めないんです」


ボロを出す前にさっと、羽ペンと取り紙を手元に寄せるレイナさん。


「私の質問に正直に答えてください。えーと、まずは名前ですね」


「ユーキ・ニシムラ」


素直に答える。


「次は性別と、女性でいいですよね?」


「もちろん」


もちろん女性と書かざるを得ない。


「年齢は?」


「18です」


「出身地は、東の地、ココットでしたっけ?」


「うん。よく覚えてるね」


しれっと虚偽申告。


「犯罪歴はありますか?」


「なーし」


「特技は、何かあります?」


ちらりと目配せするレイナさん。

慎重に答えてください、とその目が言っている。

おっちゃんも心なしか注視しているような気がする。


「んー、特にこれと言って思いつかないんだけど、特技ってどんなのをかけばいいの?」


逆質問をして彼女に答えを求める。

レイナさんなら的確な回答をよこしてくれるだろう。


「マニュット地方で認められている技能・スキルのことですよ。ユーキさんなら、自己強化・初級です」


「ほう、嬢ちゃんはすでに自己強化ができるのか」


「う、うん」


何ですか自己強化って。

初級ってことは中級とかもきっとあるんですね。


「あとは登録職業ですが希望はありますか?」


うーん。無難にレンジャーでいいんじゃないか。

それか、俺の肉体変化が見られにくそうなグラップラーかだね。

便利なのは間違いないけれど、はたして肉体変化が武具よりも役に立つかどうか。

ここで剣や盾を使わなさそうな職業で登録するメリットはあるのかなー。

でも、一度決めちゃったらそれに引きずられそうなんだよなあ。



「嬢ちゃん、別に登録した形でしか生きられないってわけじゃねえんだ。合わねえなと思ったら変えればいいんだぜ?」

「そうですよユーキさん。これは冒険者がパーティー探しをする際に利用する程度のものです。単なる自己紹介ですよ」


悩んでいる俺を見かねて二人が助け舟を出す。

そんなもんなのか。


「じゃあ、グラップラーで」


選択した理由は単なる好みだ。

ただ、自分の力を試してみたかったのだ。

もしもなんらかの職業にすることで著しい問題が生じるなら彼らは先に一言言ってくれている。

レイナさんが俺に選択を任せたのなら、別に何だって大きな差異はないはずだ。

それなら俺は自分の手足でこの世界を感じてみたい。


「では、グラップラー、と。こちらで書類は構いませんか?」


おっちゃんはレイナさんから受け取った書類を幾度か見返した後、問題ないと首を縦に振る。

後で聞いてみると、文字が書けない人間が多数おり、代筆は当たり前に認められているものだった。ときおり悪用して不当な契約を結ばせたりする例もあるそうだが、今回はおっちゃんの目の前で質疑応答しながらの代筆だったので、おっちゃんも書かれた内容の正誤判断をつけることができた。


こうして俺はかけだし、ランクF冒険者として生きていくこととなった。



――――――


冒険者になって一週間が経った。

一週間の間に俺は自身の特殊な技能を使って、華々しく新進気鋭の冒険者として活躍――するようなことはなく、レイナさんの監督の下、基本的な文字をなんとか読めるようにしたり、村から離れた森で戦うための訓練なんかをひたすら行っていた。


ひらがなのように、表記と読みが一致する言語体系だったのが幸いした。

単語の意味はわからずとも、とにかく読みだけはできるようになった。

あとは良く使われる単語に注意していけば、自然と必要な知識は覚えていける。


レイナさんは初日に彼女の住んでいる街へ手紙を送って以来、返事待ちですることがあまりないらしく俺の特訓に付き合ってくれている。


村人たちの依頼は、レイナさんたちが村に来てから被害がないためひとまず様子見となったとおっちゃんから聞いた。

だからこの一週間は日がな半日体を鍛えて、もう半日頭の勉強をしていたわけだ。

初めてのことが多くて大変だけども、教えてくれる人がいるうちにできるだけ多くを学ばなければならない。

レイナさんは俺の事情も理解しているから、一から教えてくれているのもありがたい。

彼女の気遣いはやる気につながった。


そんなわけでギルドに貼ってある依頼はまだ受けておらず、常駐して貼ってある依頼を特訓のついでに手に入れ納品したぐらいだ。

おかげで村周辺の野草には詳しくなった。

そして、能力を使った小動物の狩猟も行っている。

まだ森狼のような中型の動物を倒してはいないが、身体強化の魔法さえ覚えれば次の段階で戦うことになるだろう。

森狼を一人で倒せたら冒険者の始まりです、とレイナさんが言っていたから頑張りたい。



「少し野暮用があります。ユウキさん、今日は訓練にお付き合いできません。ごめんなさい」


朝ご飯の少し固い窯焼きのパンと穀物のスープを食べていると、レイナさんは申し訳なさそうにそう言った。

話を聞くと、今朝届いた手紙の返事をしたいとのことだった。


「りょーかい。特訓メニューが終わったら、安全そうな場所で薬草の採取でもしてみるよ」


彼女の監督なしで森に入り、狩りをする自信はない。

年下のレイナさんに色々甘えているのは恥ずかしいけれども、命の危険があるんだ許して欲しい。


ほんわかふわふわしているレイナさん。

一見戦いとは無縁のように見える彼女は、上級の風魔法使いで狼程度ダース単位で相手に出来るつわものだ。

そんなとびきりの実力者である彼女が初めて出会った時に余裕がなかったのは、食事に毒を混ぜられていたかららしい。


ちなみに上級魔法使いがどれくらいの強さかとギルドのおっちゃんに聞くと、一人で街を相手どって戦えるぐらいの強さがあるそうだ。


……人間ミサイルだ。


「ユウキさん。くれぐれも……」


声を潜めて口元に人差し指を持っていく。


肉体変化は人に見られないように、という合図だ。


魔法なんてものがあるとんでも世界でもルールはあるようで、無言で発動する魔法はないらしい。

なんでも言葉にすることで己の意思を明確化し、その意思を魔力で発現するのが魔法だそうだ。

その『言葉』を無視できる点が異端であり、『時の迷い人』だとばれる危険があった。


「もちろん。そんな無茶はしません」


わかってるから大丈夫と、腕を軽く叩く。


「では申し訳ありませんが……」


今日は彼女とは別行動となった。



―――――



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