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異世界の冒険者  作者: かやばさん
異世界にいました
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冒険者適正 前

「嬢ちゃんはレイナ様の同行者らしいが、冒険者かい?」


おっちゃんは俺の対面に座り、腕を組む。

利用客が居なくて暇だから世間話でもしに来たのかな?


「んーむ、悩み中」


悩み中と答えると、おっちゃんはほう、と呟いた。


「そりゃまた何でよ。レイナ様のお付きともなれば、腕は立つんだろ?」


「いや、腕が立たないの。かといってどんな職に付いたらいいかもわからないから困ってるんだよねえ」


ため息を吐いてジョッキを口に運ぶ。


「そういえばおじさん、冒険者ってどんなことするの? 私でもできる?」


「んー、そりゃまあ。稼ぐには貴族お抱えの護衛になったり、珍しい魔物を討伐したりせにゃならんから腕っ節が強いに越したことはないが。村外の治安維持の依頼を受けたついでに野草集めとかしてれば生きていけんこともないってところだな」


一発当てるにはやはり並はずれた実力が必要なんだな。

それ以外の二流、いや俺なら三流以下かな、はその日暮らしの保証なしってところだろう。


俺には厳しいかもしれない。


だけど、せっかく異世界に来たんだ。

憧れのファンタジー世界を心の赴くままに冒険したいという欲求が俺にはある。


幼いころから、冒険家の英雄譚は目を輝かせて読んでいた。

テレビゲームも王道ファンタジーRPGが好みだったし、剣と魔法の世界には以前から強い憧れがあった。

夢に描いた世界に立っていると思うと、無理そうでも冒険者になってみたいのだ。


「よし、なんなら冒険者ギルドで適正を見てやろうか?」


「そんなことできるの?」


「おう、と言っても漠然としたものしかわからねえけどな。それで良ければサービスしてやるよ」


おっちゃんはカウンターに引っ込んだ。


冒険者の適正を見るって一体どうするのだろうか?

ゲームみたいにHPがいくつ、MPがいくつ、とステータス表示でもされたりするんだろうか。


「なんか怖い」


相手と比べて絶対に勝てないとか、あと何回殴られたら死んでしまうとかがわかるのは非常に恐ろしい気がする。


「おう、待たせたな」


益体もないことを考えながら少し待つと、おっちゃんはカギのかかった桐の箱を持ってきた。

その箱を横の机に置き、開くと、中には頭ほどの大きさの透き通る球体が入っていた。

こんな大きなものは見たことがなかったが、おそらく水晶かクリスタルか、そんな類の鉱石だろう。

意表をついてガラス玉という線もあるが。


「これは見聞の玉って代物でな。手を乗せると、体に流れる微量の魔力から個人の能力を測るんだ。詳しい原理はわからねえが、ギルドでは冒険者登録の際に使用が義務づけられている」


ま、乗せてみたらわかるさとおっちゃんは玉を叩いた。

俺は玉に触れるか触れないかギリギリの近さまで左手を伸ばし、


「ところで」

その手を寸前でぴたりと止める。

一つだけ、確認しておかないとならないことがある。

手を伸ばす代わりに口を開く。


「私にサービスしても、レイナさんへの貸しにはならないけど?」


おっちゃんのサービスの裏にはレイナさんに取り入りたい思惑があるんじゃないか、その確認だ。

俺に貸しを作ってもレイナさんに近づくことはできない、そこは明らかにしておかないと彼女に迷惑がかかってしまう。


「は……」


俺の問いにおっちゃんは顔を歪める。

やはり彼女に取り入ろうと考えていたのか。


「は?」


「ははははは!」


と思ったら、突然これまでにないほどの大声で笑い始めた。

ぽかんとする俺。

対するおっちゃんはにんまりとほほを釣り上げた。


「世間知らずな嬢ちゃんだと思っていれば存外したたかじゃねえか。言質を取りにくるとは思ってなかったぜ! だが、残念。そいつはハズレだ。俺は嬢ちゃん個人に興味があったんだよ」


笑いながら頭をバンバン乱暴に叩いてくるおっちゃん。


痛い。


「私に興味……?」


眉をひそめて無言の抗議を送ってもおっちゃんは頭を叩いていて聞いていない。

世が世ならセクハラで訴えられるぞ。


男に言い寄られても嬉しくも何ともない。

まだ自分の容姿を確認していないが、なんぞ興味を引くような特徴があるのかな。


「ああ、嬢ちゃんのその防御力の低そうな軽装はここらじゃ見たことがねえし、黒の目と髪もマニュット地方じゃまず見ねえ。だからちょいと興味が沸いたんだ。どんな嬢ちゃんかとな」


そういうことなら特に気にしないで適性検査を受ければいいか。

俺に貸しができたってたいしたことはない。

むしろ、一開拓村のギルド員と繋がりが持てたと考えれば喜ばしいことだ。


「それなら、検査お願いします」


今度こそ見聞の玉に触れる。


「ええと、何々」


すると玉の表面に、鮮やかな緑色の模様が浮かび上がる。

その模様は表面を流れながら、次第に大きくなり、形を作っていく。


おっちゃんは手にもった色あせた紙と玉を並べて真剣に見つめている。。


「よっしゃ、わかったぜ。よく聞いてくれ」


紙と玉を元の場所にしまいこみ、おっちゃんは咳払いをした。


「嬢ちゃんの現在の能力だけどな。

 種族は人間。

 性別は女

 年齢は18歳か。若いな。

 性格は、調和を好む緑。協調性の少ない冒険者たちをまとめる役にいいんじゃねえの?」


胡散臭い性格診断みたいな結果だ。

大丈夫かこれ。




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