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異世界の冒険者  作者: かやばさん
異世界にいました
12/51

宿屋の一室

話がぜんぜん進まないのと、ストックがまだあるのとで、この三連休は更新したいと思います。

読んでくださりありがとうございます。


滞在期間や、別途必要な料金などお金に関わる話は一切なしで、レイナさんの支払った額のとんでもなさが想像できる。

なにもかも世話になってしまって申し訳ない。


自分が大変な時に、右も左もわからない俺の世話を焼いてくれるのだ。

この恩にむくいなければ人間失格の烙印を押されても文句は言えない。



「ねえ、レイナさん」


持ってきたわずかな荷物を床に置き、ベットに腰掛ける。

あまり上等なベットではなく、多少弾力があるぐらいだ。


「はい、何でしょうか?」


緑のマントを丁寧に壁にかけ、彼女は対面のベットに腰掛ける。

向かい合って座ると、目の高さが同じで、身長の差があまりないことがあらためてわかった。

ずいぶんと縮んだものだ……。


「もし村の人たちが、レイナさんに事態の解決を依頼してきたらどうするつもりなの?」


「そうですねえ……。内容にもよりますが、受けるつもりでいます」


「危ないかもしれないけど?」


誰も近づいていないのになくなる食糧に近くで発見されたゴブリン。

場合によっては戦闘も起こりうるだろう。

もしかすると、ゴブリンという生き物は、この世界ではとてもひ弱で可愛らしい生き物の可能性も残されてはいるが――どのみち厄介事には変わりない。


「はい、軍事の要であるマニュット地方の貴族は、みな善政をしくのが務めですから」


理由は釈然としないけれど、レイナさんは受けるまんまんらしい。


まあ、市民に優しい政治を行うのは良いことである。


しかし……レイナさんは依頼を受けるのか。


どうしたものか……。


正直腕っ節には一切の自信がない。俺の知っているゴブリンだったら、三匹も居れば餌になれる。

ただ、調査なら手伝えることがあるかもしれないし、なにより彼女には恩がある。

ここで怖いから頑張ってね、宿で待っているから、などと言えようか。


言えるわけないよなあ。


ここで見捨てられたら生きていけない、という打算もある。

だけど、彼女の助けになりたい気持ちも嘘偽りはない。


多少危険があったって、一人より二人の方が安心だろう。逃げるのにだって目は多い方がいい。

となると、俺の答えは決まったな。


「その依頼、私が手伝ったら迷惑かな?」


彼女の目をはっきりと見据えて、そう尋ねた。


自身の安全に関わることなんだ。嘘やごまかしなどで気を使ったりはしないだろう。

迷惑になるようだったら素直に降りよう。


「危険ですよ?」


彼女もまた俺の目をまっすぐ見つめる、沈黙が場を支配する。

彼女は真剣に俺の身を案じてくれている。


俺より十歳以上若いだろうに本当に出来た子だ。

それともこの世界では、これくらいが普通なのだろうか。


だけど、若い――俺にとっては高校生ぐらいに見える――内から人に気を遣ってばかりはいただけない。

年長者としてここはひとつビシッと言わなければいけないな。


沈黙を打ち破るために重く、カサカサに乾いた口を開く。


「あんまり危なかったら逃げるから安心していいよ」


茶目っ気たっぷりにウインク一つ。


「ふ、ふふ。なんですか、それ。全然安心できないですよ」


レイナさんは口元を手で隠し、笑い声を洩らす。


「しかも片目だけ目をパチンって、得意気に情けないこと言って。ふふ」


よほどツボにはまったのか、背中まで真ん丸になって笑いこらえている。

まるでアルマジロだ。


彼女はしばらく経ってようやく、背中をぷるぷる震わせながら顔を上げた。


「はー、ユーキさんが男性だったって嘘ですね。さっきのかわいにくたらしい顔も堂に入っていましたし、本当は女性でしょう?」


ひとしきり笑って気が楽になったのか、からかうような軽い口調だった。

お返しとばかりに彼女も片目を閉じているが、初めての挑戦で上手く目を瞑れていない。


「正直なところ、ユーキさんの申し出はありがたいと思っています。ただ、恩人のユーキさんに危険を承知の上でで頼むのもどうかと思っていまして……」


彼女は形の整った眉を下げる。


「私の方こそ、レイナさんにはお世話になってばっかりだし、自分の生活の仕方も考えていかなきゃいけないし……。迷惑でなければちょっとでも手伝わせてもらいたいんだ」


村人の依頼は冒険者が受けるものなんだろう。

この世界で生きていくのなら、冒険者――何でも屋――がどんな職種なのかを知っておくのは良い経験になる。

冒険者が手軽な仕事だと思わないが、他に俺の出来る仕事があるかもわからない。

それに冒険者という響きには大きな憧れがある。



そのような打算もありつつの提案なので、純粋な善意ではない。

だから彼女もあまり深く考えないでほしい。


「うーーん」


レイナさんは渋い顔で思案している。


「お願い」


「むう……。そう言っていただけるのでしたら……」


村人からの依頼があったときには力を貸して欲しいと頭を下げられる。

俺もこちらこそと頭を下げる。



「とはいえ、ゴブリンってどんな生き物なの?」


とっさの判断を鈍らさないためにも情報を集めておくにこしたことはないだろう。


「少し長くなりますが……」


レイナさんは壁をコツンと叩いたり、ドアの厚さを確かめたりした後、再びベットに座って話し始めた。


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