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夏の夜に咲く花  作者: 怪盗エース
3/3

後編

「俺の彼女・・に手を出すな!」


 あの、猫のお面をつけた少年が立っていた。手にわたあめを持ちながら。五年前、私を助けてくれた人――


「なんだー、彼氏いるのかよ……どうする?」

「いや、借りたっていいだろ。こいつ、ガキっぽいお面付けてるし……こんな可愛い子、そうそう会えねぇし。ほら、こいよ!!」


 私は必死で逃げようとしたが、その人たちの力の方が強かった。


「いやっ……やめて!」


 すると、あの子は何かを取り出した。顔は見えないけど、怒っているように見える。


「そーいう態度とるなら、許さねぇぞ!! 不良共!」


 取りだした物に火をつけ、私たちの足めがけて投げた。

 と、同時に爆発音。


「うわぁぁっ!?」

「な、なんだこれ!!」

「どけ、不良!」


 その人は私のところまで走ってきた。その時、顔を見ようと思ったけどそれどころじゃなかった。


「逃げるぞ!」

「うん!」


 え?

 自分の体がフワッと浮いた感じがした。気づくと――お姫様だっこの状態。


「俺が担いだ方が早い!」

「ちょ、うそ!?」


 彼は私を抱えて、もう一度何かを相手に投げつけた。一体、これはなに?


「爆竹だよ。最近じゃ見かけねぇけど、俺の父さんが作れるからいくらでも使える」


 その人は、私が考えていることが分かったように教えてくれた。

 あぁ、絶対にあの時の人だ。私を助けてくれた、優しい人。

 嬉し過ぎてどうにかなりそう。自分の心臓の音がものすごく大きく聞こえた。





「ここまでくれば、大丈夫かな」

「うん……有難う」


 彼は私を降ろしてくれた。重くなかったかな……

 そして、私は頭を下げようとしたけど、止められた。


「ほら、わたあめ。食べるんだろ?」

「あ、どうも……って、え?」

 

 渡されたわたあめをポカンと見つめる私。なんで私がわたあめ食べたい事知ってるの? と、言うより、あの騒ぎの中一回も手放さなかったの!?


 もしかして……


「ちょっと!」

「あ、ダメだ! やめ……!」


 私は強引に、彼の猫のお面を外した。






「……魁人」

「…………さっさと気づけよ」


 仏頂面で、魁人は私から目を逸らした。周りのあかりのせいか、顔が赤いように見えた。


「なんで、もっと前から気づいてくれなかったんだよ」

「……うすうす、分かってた……ような、気がする」

「は!?」


 私は一度、深呼吸をしてから、魁人から目を離さず話し始めた。


「本当は、魁人は私と助けてくれた人なんじゃないかって思ってた。でも、それ以前に……私は魁人のことが好きだった。だけど、中学生の時一緒だったから私と約束していた人とは違うと思った。私を助けてくれた人は、一度転校するって言ってたから。そうでしょ?」


 魁人は、私に笑って見せた。今まで見たことのない、とっても優しい笑顔。


「父さんが、一度引っ越したらもうここに帰って来れないかもって言いだしたんだよ。だから、俺はここに残るって決めた。俺は、佐緒里がもう忘れているんだと思ったからなかなか言い出せなかった。でも、俺はどうしても言いたかった。佐緒里、好きだ……って」

「!」


 私の目から、涙が流れた。悲しくないのに、魁人の前で泣いた。


「おい、どうした!? もしかして、爆竹が当たってたのか!?」

「違う……う、嬉しいの! 私、魁人と両想いになれたからぁ……」


 魁人は私を抱きしめてくれた。とってもあったかくて、心地よかった。

 そのとき、後ろで大きな音がした。


「今年、俺の親父が帰ってきたんだ。「やっぱりここで打ち上げたい」ってな。だから、俺は花火作りを手伝わせてもらった。一発だけ」

「?」

「ほら、あがるぞ。見てろ」



 私が綺麗だと言った、向日葵の形をした花火があがった。とっても大きくて、周りからも歓声が上がっていた。

 そして、空に咲いた花は、キラキラと輝きながら消えていった。


「わぁ……! すごい!!」

「たった一発なのに、作るまでがものすげーかかるんだよ。でも、人を幸せにできるならそんな苦労ふっとんじまう。特に、好きな人に言われると」


 夢じゃ……ない。こんな幸せ、受け取っていいの? 神様、最高のプレゼントです。有難う……


「おーい!! 新カップル!」


 冗談めかして言ってきたのは、美紀だった。リンゴ飴を三個持っている。


「え、あ……!!」


 抱き合っていたのを忘れていたので、私は魁人と同時に離れた。


「佑太。俺、彼女できちゃったよ。いいだろ~」

「僕だって、いるもんね」


 佑太君は「ね?」と美紀を抱きしめた。


「あら、いくら彼氏でも私は高いわよ?」

「いいよ。君になら、いくらでも払う」


 すると、佑太君は美紀の頬にキスをした。珍しく、美紀が動揺した。でも、すぐにいつもの美紀に戻り「じゃ、あとでもう一個リンゴ飴ね」と言った。どれくらい食べる気だろう?


 でも、すごい……! 私は、二人のやりとりを見て驚いた。恥ずかしくないんだ。人に見られても。


「俺たちは、昔恥ずかしいとか思ってたけど、そうじゃなかったのかもな」

「……うん」


 佑太君は、魁人に聞いた。


「うらやましいかい?」

「おお、挑発する気か?」


 魁人は佑太君と話し始めた。美紀は私の所に来て、


「ほら、やっぱり来た方が良かったでしょ?」

「もしかして、この前の悲鳴って……」

「お父さんが花火師の人は、魁人しかいなかった!」


 だから、あんなに必死で私を夏祭りに参加してもらおうとしたんだ。魁人がくるっていうのは偶然だったのかな? ……でも、今はそんなことはどうでもいい。

 有難う、と美紀にお礼。


「どしたの。かしこまって」

「美紀のおかげで、私今とっても幸せだもん!」

「いいわよ。親友でしょ?」


 魁人と佑太君の話は、いつのまにか口論になっていた。


「僕はさっきしたさ。君に出来るのかい?」

「俺だってできるさ」

「ゆーた、何の話?」

「『人の前で彼女とキス』だよ。でも、僕らしたもんね。さっき」


 魁人は、私の所に走ってきた。絶対、何かを企んでいる目だ。


「んじゃお前ら、まばたきするなよ」

「え、え?」


 盛大な花火が上がると同時に、魁人は私にキスをした。

最後まで付き合って下さった皆様、有難うございました!

よくありそうな話ですが、あえてそこ書きたかったのです。

意見、指摘、ポイント評価などお待ちしていますm(_ _)m

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