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ちょっと私がさあ、本気でサンダーストーム撃ったら脳が破壊されたんだが(笑)  作者: 熾火慎之助
第二章「炎の山」

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第二章「炎の山」1

ヒカリ達は何もない荒野をひたすら歩いている。


「ここらはいつ来ても暑いなあ」


「はぁ・・・はぁ・・・」

文句を言うジムに対して、ヒカリは息を切らしながらまるで亡者のように歩いていた。


ヒカリ達の感じている気温の高さは、賢者の1人が暮らす炎の山に近づいている証拠だろう。


「やっぱりアンタ、帰ったほうがいいんじゃない?」

突然、後ろから聞こえる涼しげな声に、ヒカリが驚いて振り向くと、そこにはクールな印象の眼鏡をかけた魔法使いが立っていた。


「アズサ・・・!なぜここに?」


「今回の仕事、アンタには荷が重いと思ってね」


「何ィッ!?」

ヒカリは怒りを露わにした。


「その様子だと山を登り切れないんじゃない?良かったら代わってあげましょうか?」

眼鏡を拭きながらそう言うアズサは、妙に涼しい顔をしている。


(こいつ、また卑怯な手を・・・)

ヒカリはアズサが魔法で暑さを軽減していると思った。


実際にアズサは魔法の力で身体と地下の熱を交換して、自身の快適な温度を維持している。


「余計なお世話だ」


「そう。それならここで潰(・)し(・)て(・)お(・)こ(・)う(・)か(・)し(・)ら(・)」

アズサがそう言い終えると、辺りが揺れ始め、隆起した地面の中から体長3メートルはある巨大な土の人形が現れた。


「傀儡魔法、ブラウンジャイアント」

そう言ってアズサはヒカリを通り過ぎ、先を行こうとする。


「あ、待てッ・・・!」

ヒカリがアズサを引き留めようとしたが、すぐさまブラウンジャイアントの巨大な拳が振り下ろされ、ヒカリは前転でそれを避けるのが精一杯だった。


アズサはそれに目もくれず、そのまま先を歩いていき、やがて姿が見えなくなった。


「舐めやがって・・・」

ヒカリは最初、この仕事をアズサが行えば良いと思っていた。


しかし、こうまで馬鹿にされては逆に火がついてしまう。


(とはいえ、この土人形をどうするか・・・)

アズサはヒカリを足留めし、先に炎の賢者に会うつもりだろう。


それならば、ブラウンジャイアントは必死でヒカリに喰らい付いてくるはずだ。


(倒して行くしかないか)


このように巨大な怪物を相手にする時は、魔法で倒してしまうのが最も手っ取り早い。


しかし、ヒカリの場合は魔法を使うことにリスクがある。


「ヒカリ、どうする?」

ジムが聞いてくる。


しかし、ヒカリは熱で頭が回らない。


「考えるのすら億劫だ。時間経過で消滅させる」


この手の魔法は無限に持続するわけではない。


使用者がいなければ、魔力の供給がないため、やがて行動が停止するだろうとヒカリは考えている。


そして、ヒカリはブラウンジャイアントの攻撃を10分ほど適当にいなすと、ブラウンジャイアントは活動を停止し地面に帰っていった。


「ふう、それじゃあ麓の里に寄ってから山を登ろうや」

ジムの提案にヒカリは従う。


ヒカリは里でしばらく休むと、行商人から氷を大量に買い込み山を登り始めた。


おそらく、魔法で地形を操れるアズサに追いつくことは不可能だろう。


ただの意地だけでヒカリは進もうとしていた。


炎の山。

山頂が標高3000メートルで、辺りには溶岩の川が流れている恐ろしい場所だった。


しかしこんな山を地道に登っていられないと思ったヒカリは、近道として垂直の岩壁にしがみつきロッククライミングの要領で登っている。


落ちればマグマに飲み込まれるかもしれない。


「やばいな・・・氷が頂上まで持たない」

ヒカリは腰にぶら下げた皮袋の中から、早くも溶けそうな氷を口の中に放り込み言った。


「無茶じゃないか?やっぱり降りて普通に登ろうや、ヒカリ」

ジムは心配した。


「炎の山登りは熱、つまり時間との勝負だ。最短で登ったほうがリスクは少ない」

ヒカリそう言って、わずかな壁の凹凸を探る手を止めない。


そして、やはり賢者にまで成ったヒカリの胆力は凄まじく、危なげなく崖を登りきり、頂上で城のような建物を見つけた。


炎の賢者の住む城である。


しかし、ヒカリが城の門を叩いても、なんの反応もない。


「妙だな・・・」

ジムが呟く。


この城は賢者1人で使っているわけではなく、少なくとも世話係や見習いの魔法使いが50人ほど暮らしているはずで、見張り役1人居ないのは何故なのか。


「生臭い・・・」

ヒカリは城内の匂いを嗅いで言った。


少しして、ドタバタと複数人が床を強く踏む音や金属の擦れ合う音が聞こえてくる。


「戦っているのか!?」

ジムがそう言うと、ヒカリはすぐに駆け出した。


廊下には魔法使いらしき死体が無数に転がっている。


「これは酷いな・・・」

ジムはそう言い、ヒカリは目を背け駆け抜けていった。


そして、炎の賢者の居るであろう最後の扉を蹴破ったヒカリの目に入ったのは、地面に膝をつく炎の賢者と、それを見下ろしている蟷螂と人間を融合したような黒い魔族だった。


<炎の賢者リョウ>は赤茶のローブに身を包むガタイの良い青年である。


2人共すぐにヒカリに注目した。


「貴様は雷の賢者か!?」

魔族は驚きと怒りの声を発する。


「大丈夫か!?」

ヒカリは魔族を無視し、傷だらけのリョウを見て叫んだ。


「ヒカリか、助かった・・・」

リョウが消え入りそうな声で言う。


「ちょうど良い、雷の賢者。貴様も一緒にあの世へ送ってやろう」


「黙れ。私の雷を喰らって魔界へ逃げ帰った分際が」


この魔族は5年前にこの世界を襲い、ヒカリに撃退された七魔雄の1人<黒爪のマンティス>だった。

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