第六章「波状総力戦」1
賢者の村にて。
「<七魔雄ウォーイオット>が村に向かっているのは確かだな」
長老は集会所に発言力のある魔法使いを招集し、作戦会議を開いていた。
「はい・・・しかもそのウォーイオットは距離を進むごとに魔力が増していっているというのです・・・」
「何にせよ。リョウとエイシンが戻ってきてくれて助かった。2人は持ち場に着いているな?」
「はい」
「よし、他の者は手出しするな。賢者でなければ足手纏いになる。そして、手の空いた者は老人や妊婦、足の不自由な者から優先的に村の外へ逃してくれ」
そして会議は終了し、長老以外は集会場を出て行った。
(ヒカリ。アズサ。頼む。早く戻ってきてくれ・・・)
長老は頭を抱えながらそう思う。
しかし長老は、アズサが七魔雄エブリシングに敗れ、意識が戻らないことを知らないのだった。
そして一方で炎の賢者リョウと氷の賢者エイシンは、北からやってくるウォーイオットを迎え討つため村の外で待機していた。
「なるほど、あれだな」
エイシンは北の荒野を指差した。
何かが砂塵を巻き上げてこちらに近づいてくる。
上半身は人形のように無機質ではあるが人間とそんなに変わりはない。
しかし腰が分厚く板のように広くなっていて、左右にはまるで車輪の様な円形の脚が付いており、それが回転して戦闘用の馬車のように力強く前進していた。
「でかいな。幅は3メートルほどあるだろう」
リョウは言った。
「ああ、あんなおぞましいものが村に入れば大変なことになる」
エイシンが頷く。
ウォーイオットとの距離は約500メートル。
すぐにリョウとエイシンは同じように掌をウォーイオットに向けた。
炎と氷の弾が乱れ飛ぶ!
<炎魔法ファイアブラスト>
<氷魔法フリーズボックス>
ウォーイオットまで飛んでいった魔法が当たって弾けた。
「当たってはいるようだが、この距離ではどうしても威力が低くなってしまう」
エイシンは目を細めながら言った。
ただ、ウォーイオットがここに到達するまでにある程度は魔力を消耗させておきたい。
リョウとエイシンはウォーイオットの魔力を身を守る鎧であるマジックアーマーとして消費させるため、魔法を乱れ撃った。
残り100メートルの所まで撃ち続け、いったん止めてウォーイオットの様子を見ると、少しだけ減速している気もする。
彼らは魔法が効いている証拠と判断した。
「そろそろ、強力な魔法をお見舞いしてやろうか」
リョウが言う。
確かにもう後がない。
リョウの発言にエイシンは同意した。
リョウとエイシンが両手を広げ、強力な魔法の準備を始める。
<炎魔法バーンイラプション>
<氷魔法アイススパイラル>
勢い良く噴射される爆炎と、鋭利に研ぎ澄まされ回転する氷解が、ウォーイオットとマジックアーマーと激しく衝突し爆発が起こった。
砂埃が舞う。
「おいおい。マジかよ・・・」
リョウは絶望した。
爆発によって舞った砂埃が晴れると、そこには相変わらずこちらに向かってくるウォーイオットが見えたのだ。
「まさか、奴等は本当に不死身なのか!?」
「慌てるなリョウ。まだ終わったわけじゃない」
エイシンはリョウを落ち着かせ、前方約30メートルのところに氷の壁を作った。
「シャドウクラブを倒した時のことを覚えているか?」
「ふふ、あれがあったな」
リョウはすぐに察した。
「俺が合わせる」
エイシンはそう言って、リョウの背後についた。
2人がやろうとしているのは、ヒカリを含めた3人で七魔雄シャドウクラブを倒した魔力集中戦法である。
2人別々で違う魔法を撃つよりも、1人に魔力を集中させた方が力に無駄がないのだ。
エイシンはリョウの肩に手を置き魔力を注ぎ込む。
ウォーイオットがエイシンの作った氷の壁に一瞬阻まれたが、すぐにそれを簡単に押し潰してしまった。
しかしその瞬間、リョウの掌から凄まじい熱の光線が放たれる。
<ダブルブレイズ>
ウォーイオットの胸部を熱光線が貫通し、衝撃で四肢がバラバラになった。
「あががががが・・・」
空中で砕け散ったウォーイオットの肉片が宙に霧散していく。
「やったか!?」
リョウとエイシンが顔を見合わせた。
「やるじゃないか。賢者達よ」
上空から何者かの声が聞こえる。
「何者だ!?」
2人は上を向いた。
ウォーイオットは確実に死滅した。
しかし、上空に現れたのは鬼の様な別の魔族だった。
捻れた角に青黒い肌、背中には大きな翼を備え、悪魔にも似た風貌をしている。
「私は<七魔雄エブリシング>。一応名乗りはしたが、すぐにお別れのようだ」
エブリシングが右手を天にかざした。
すると、天が暗雲に覆われ電流が駆け巡る。
「これは・・・」
エイシンは瞬時に思い出した。
5年前の戦いを。
<サンダーストーム>
連続するいかづちがリョウとエイシンを打ち据える。
彼らは叫ぶ間もなく絶命した。
なんと、炎と氷の賢者を担うリョウとエイシンはこの瞬間に死んでしまったのだ。




