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第41話 エミリーヒル本館3 【素材加工】



︎︎市のオペラハウスで開かれたオークションに出席した俺たちは、地竜由来の素材を買い占めることにした。


「ちょっとモトム、小型地竜の皮なんていらないよね?!」

「えっ?︎︎でも皮ジャンに使えるかもしれないし」

「皮ジャンって何?!」


「あのー、最初からそんな高値を付ける必要はないのではないかと」

「だって、他に欲しがる人がいるかもしれないし」

「このオークションは私たちに優先権設定されているので……同額出せるなら私たちが買い取ることが出来るんですけど……」


 そういやそんなシステムだった……。


 あれ?

 そしたら最初は最低保証額でもいいのか?

 オークションってイマイチ良く分からないな……


 

 オークションが終わるころには、荷馬車数台分の地竜素材を買い占めてしまった。

 ちょっと買いすぎたかな?


 金貨一万枚分、総額十億円相当を使ってしまったが……でもオークションって富豪ならそれぐらい使うもんだよね?


「ふつうの美術品などでしたらそうかもしれませんけど……これは素材のオークションですから」

「ギャンガラドの角ですら、金貨二千枚だったよ……モトムって結構止まらないタイプだったんだね。これはお財布管理は奥さん側が見ないといけないかもね」


 エチカもラティーナも膨れっ面をしていた。


……少し使いすぎたかな。

 趣味に給料の大半を使う旦那みたいに言われてるぞ……。


「で、でも目的のカメレオンタイプの地竜の皮と鱗は全部買い抑えることができたし」


 さて、問題は90式の砲塔後部バスケットに乗せてみて、専用メニューみたいなものが現れるかどうかだな。


 実際エミリーヒルに持って帰って、荷馬車に満載した素材の中から、エリマキトカゲ型地竜の皮膚と鱗をバスケットに置いていく。


 緊張の瞬間だ。


『ピロン』


 戦車クラフトのメニューを開くと、今まで聞いたことのない音がした。


「おお……」

「ど、どうかな?」

「何か特別なものが作れるようになっていますか?」


【カメレオンネット 特殊備品:光学迷彩効果のあるネット。音響遮断効果も高い】


 きたきたー!


 これはすごい……潜入作戦におあつらえ向きの効果じゃないか!

 なんとなく、戦車クラフトなんてものを異世界で与えられたときからそうじゃないかとは思っていたけど、魔法効果みたいなものがある素材を使うと、こんな風になるのか……


「て、あれ? 作成ボタンがまだグレイアウト状態だ……」

「どうも素材が必要量に足りていないみたいですね」


 観察力に定評のあるエチカさんが補足を入れてくれた。

 俺が興奮しすぎて説明を読み飛ばしているだけとも言う。


「これネット一枚しか作れない量になってるな……」


 予備は作れないってことか。

 破損して使えなくなったら終わりか。


 く、あのエリマキトカゲ型地竜、もっと狩りたくなってきてしまうな。

 なんか危険な発想に染まってしまいそうだ……。


「まだ他にも但し書きが書いてあるようですね」


 本当だ。

 スクロールバーがウィンドウの右についてある。


【使用中は水を常に消費します】

【専用のタンクに水を補給して使用してください】

【タンクの容量は六十リットルです】

【三十リットルの水で約一時間使用できます】


 良く分からんが、あの迷彩効果は水を使っていたのか?

 三十リットルで一時間というのは燃費が良いのか悪いのか……


 ルキフグッサまでは片道七十キロ。

 登坂も考えると、90式の平均時速はせいぜい三十キロ程度だろう。

 二時間分六十リットルでは足りないな……


 この水はどこかで補給しないといけない。

 川や池の水でいいと思うけど。

 ルキフグッサのあるダンタリオ山脈の麓にはいくつか湖があるから、そこでキャンプがてら補給できるかな?


 とにかく必要な量の素材を入れて、作成ボタンを押せるようにした。


 そして意を決してボタンを押し、素材が完全に変換されるまで一時間待った。


 結構かかったな……。


 しかし、丁寧にたたまれた布地がバスケットの中に出来上がった時はなかなか感動した。


 みんなでそのネットを広げて、90式にかぶせてみる。

 もともとの見た目は色が鈍いグレーなだけで、90式の純正装備のカモフラージュネットと同じだが、これどうやって迷彩効果を使うんだろう?


「スイッチみたいなものはないな……」

「おお? ちょうど砲塔ハッチの付近に、魔法陣があるよ。ここに魔力を注ぎ込むんじゃないかな?」


 砲塔に登って車長室ハッチに入れるかどうか試していたラティーナが、スイッチ機構らしきものを発見した。


 ニューシャルマニアによくある、魔法式ランプと同じような発動方式だそうだ。


 これ、科学と魔法のハイブリッドのアイテムなんだな……

 まあ完全な光学迷彩なんて科学技術ではまだ開発されていないしな。


「なるほど。それなら戦車のエンジン切っていても使えそうですね」

「ちょっと流してみるよ」

「大丈夫? 魔力切れで倒れたりしないの?」


 なんとなくそういうの、良く聞いたことあるので不安だ。

 マジックポイント切れ酔いとか。

 この世界の魔法の仕組みよく知らないけど。

 うちのラティーナさん、結構無茶する子だし。


「これは起動するのにちょっとだけ魔力がいるタイプみたいだから、大丈夫だよ」


 そう言った後、ラティーナが何かしたらしく、ブオンという音がして、いきなり、忽然と90式の姿が消えた。


 元々90式の砲塔に登っていたラティーナが中腰で宙に浮いているように見える。


 その効果は、SF映画やアニメで見る光学迷彩とほとんど同じだった。


 目を凝らすと、輪郭の付近がわずかに歪んでいるのが分かる程度。


「すごい……これなら遠目に見れば全く分かりませんね!」


 エチカも興奮気味で喜んだ。


 俺はといえば口をあんぐりと開けて呆けることしかできない。



 調子に乗って色んな素材を入れてみることにした。


 長々と実験した結果だが、さすがに120ミリ砲や複合装甲みたいな攻防の要をアップデートするような装備はまだ作れなかった。


 ギャンガラドぐらいだとちょっとランクが足りないのかな?


 しかし、今ある素材でも、劇的に戦況を変えそうな装備もちらほら見受けられた。


 まずこれ。

 90式の砲塔サイド両側に一基ずつ付いている、発煙弾発射機スモーク・ディスチャージャーから発射する、<催涙効果付発煙弾>。


 こいつの説明はかなりややこしかったのだが、かいつまんで言うと、爵位付きの上位竜には通じないが、モブの古竜には通じるぐらいのレベルのようだ。


 ラプトル型の地竜の一頭を材料にして作ったという何らかのペーストを入れたら出てきたメニュー。


……どの部分のペーストなのかは詮索したくない。

 樽に入った状態でもらったのだが、蝋で隙間を完全に密閉してあっても、ものすごい悪臭を放っていた。


 ラプトル型地竜は全部一緒だと思っていたが、こいつはスカンクみたいに逃げるときに屁で敵をダウンさせるタイプだったらしい。


 ほとんど催涙弾な上に、煙幕にも使えるぐらい広範囲にまき散らすという、もはや生物化学兵器並みの威力である。

 もし赤竜や火竜の大群に囲まれたときには効果を発揮しそうだ。



 それから、今度はギャンガラドの、どこかの内臓を日干しにしたものを入れた時に作れるようになった、<引力弾頭>と<斥力弾頭>。


 これはギャンガラドのあの謎の磁力ブレスと同じ効果があるみたいで、上手く使えば戦況を変えてくれそうな気がする一品。


 だが、今は残念ながら、材料不足で作れない。

 足りていない材料は、ニトロセルロースとかニトログリセリンみたいな、弾頭の薬莢に必要な無煙火薬類だ。

 この辺はリバイアストンには存在しないので、本当の原料で代替にならないのかは実験の余地ありだな。


 大量に買ったギャンガラドの鱗や高質化した皮膚は、耐熱性能が高かったらしく、<軽量有機素材耐熱装甲板>というのに変えられるようになった。

 これも火炎ブレスを吐く赤竜戦では効果が期待できそうだ。


 こんだけ色々作れると、クラフトが楽しくなってくるな……

 ちょっと高位のドラゴン素材はなかなか手に入らないのが難点ではあるが、色々試したくなってくる。


 ちなみに一番高かったギャンガラドの角はなんと使い道ゼロであった……

 

 価格と実用性は一致しないものだね……







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