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第18話 リバイアストン市街区1 【都市観光1】



 そして翌日の早朝。


 俺たちエミリーヒルの住人、総勢二十五名は、リバイアストンへ移動することになった。


 90式と、その後ろに牽引している、ここへ来るときに使った幌馬車荷台。

 それに、デミスタンが置いて行った馬車の荷台を新しくもらった馬に引かせて、分かれて乗車する。


 丘を降りて、三百メートルほど進み、リバイアストンの南門に到達。

 南門はいつも兵士が詰めていて、基本部外者がはいる時は検問されるが、今回の俺たちはスルーパスだ。

 むしろ、最初に出会った城壁の兵士さんや、堡塁の兵士さんは、90式や俺たちの姿を見とめると、一斉に敬礼のポーズを取りだした。


 なかなか壮観で、感動的な光景だった。

 シルミウスは軍隊にかなり大きな損害を与えていたらしいからな。

 リバイアストンの軍人たちは、やつを退治した俺たちに、敬意を抱いてくれたようだ。


『うわあ……』


 その様子を見て、ラティーナが思わず感嘆の声を漏らす。

 エチカも嬉しそうに言う。


『私たちのこと、認めてくれたんですね……』


 ちょっと泣きそうになるエチカ。

 確かにこの光景は感動するかも。

 最初に来た時はめっちゃ怪しまれた、という反動もあるかも。

 あれは主に俺のせいだったかもしれんが。

 

 兵士さんたちの熱い視線を受けながら、城門をくぐる。

 今回は戦車ごと市内への乗り入れ許可が出ている。

 

 リバイアストンの城門の橋も、目抜通りも石畳舗装されていて、戦車でも走りやすい。

 そのまま通りを走行して、市の中央から少し南東にあるという、冒険者ギルド本館へ向かう予定。

 城内に入ると、通りの先、市の中央にそびえたっている白い尖塔がすぐに目に入る。


「なあ、あれなんだ?」

『あれはねー、リバイアストンのお城だよ!』


 ラティーナが元気いっぱいに、ざっくり説明をくれる。

 確かにお城かもしれないけど……。


『ラティーナったら。それじゃモトム様がわかんないですよ。モトム様、あれは元のリバイアストンの領主、リヴェー家の領館だったんです。そこを改修して、議事堂にしたんですよ。今は<虹の水塔>と呼ばれています』

「へえー。リヴェー家のみなさんは今もここに住んでいるの?」

『それが、九十年前の戦争で、リバイアストンをニューシャルマニア政府に譲渡して、本国に帰っちゃいました』


 へえ、領主が領地を捨てて逃げて行っちゃったのか。

 まあ、竜族を恐れたんだろうな。

 

 しかし、エチカは本当に歴史や文化に詳しいなあ。

 何でも教えてくれる万能ガイドみたいだ。

 異世界人の俺にとっては、とても心強い仲間。


 遠くに見える塔にも驚いたけど、リバイアストンの街並みにも度肝を抜かれた。

 まずメインストリートの建物は、まっすぐの長方形ではなく、少しねじれたような不思議な建築様式で、全て五階建て以上。

 白亜というか……モルタルなのか何の石なのかわからないが、全ての建物の壁が、綺麗に白一色で統一されていた。

 そして、建物の窓の先には、植木鉢やプランタに入った見たことない形の花が咲き乱れていて、色合いも華やか。

 異世界情緒はたっぷりだ。


 不思議なことに気付いた。

 建物の最上階に、煉瓦とセメントで作られた高架橋が連結されている。


「なあ、エチカ。建物にくっついている、煉瓦の橋はなんなの?」

『ああ、あれは上水道用の水道橋ですよ』

『すごいよね。リバイアストンって何と、水洗トイレがあるんだよ!』


 嬉しそうにお手洗いの話をする金髪エルフことラティーナ。

 水回りはライフ・クオリティにとって重要な要素だからなあ。


 街道の脇にも水路がいっぱいあるけど、汚水を水路に流したりはしていないようだ。

 下水道もあるみたいだな……かなりインフラが整備されている……

 エミリーヒルもトイレ事情、なんとかしないとな……。


 だんだん、都市の中央に近づいてきた。

 

 嫌が応にも目立つ、中央に鎮座する、透き通る白さの塔。

 かなり高い。

 さすがにスカイツリーほどじゃないけど。

 東京タワーの半分ぐらいの高さかな?

 そいつ、遠目からだと霧がかかっていて、その霧のせいで虹がかかっているように見えたが、どうやら、塔の中断から水が噴き出していて、滝となって落ちているので、その水飛沫が霧になっているようだ。


「すごいな……水が豊富なんだな……」


 戦車が通り過ぎるので、左右の通りの建物から市民たちが顔を出して、目を点にしている。

 そりゃ驚くよね、こんなの見たら。


 90式が大きすぎるので、主要な通りしか通れない。


 中央の塔の前は大きな堀になっていて、その周辺は広場になっている。

 そこで左折して、左右の大通りをしばらく進んだところが官公庁街で、冒険者ギルドの本館もそこにあった。

 かなり立派な建物。

 貴族の館にしか見えない。


『この建物、元は侯爵家の持ち物だったらしいですよ』


 と思ったら本当に貴族の館だった。


 本館に付くと、既に入口の前にデミスタンが待っていた。


「ちょっと、ギルドに入る前に戦車停めてきてくれるか」


 案内されるまま、宿泊先だという隣の敷地の建物に行く。

 そこが結局、今日の宿泊先だった。

 これまた三階建ての立派な建物。


 ギルドで手続きをした後、宿泊先に荷物を置きに行く。

 建物の案内してくれたのが若い兵士さんだったので、不思議に思ったが、ここは軍令部の所有する土地らしい。


 あまり興味はないが、この都市の軍隊は冒険者ギルドとかなり連携しているみたいだな。

 むしろ冒険者が軍隊に監視されているみたいな感じかも。


「部屋はこの階になります。皆さん以外に現在宿泊している人はいませんので、好きに割り当ててください」


 兵士さんの案内で、居室になる三階フロアを案内される。

 内装は豪勢、最上階だが水場もあって清潔感がある。

 間取りは日本の学校校舎に似ていて、一つ一つの部屋が広い。


「広い広いー!」

「こんなきれいなお屋敷に泊まるのなんて初めて!」


 女の子たちの喜びの声が洋館に満ちた。

 なんか、修学旅行の引率の先生になった気分だな……


「素晴らしい眺めですわ! まるで貴族の令嬢になったようですわ!」


 三階の窓から市街地を見ていた少女が声を上げた。

 ちょっと、おしゃまな話し方をするこの子、アマティという名前。

 くるくるウェーブのツインテールで本当にお嬢様みたいな外見をしている。


「アマティ、エミリーヒルの家より気にいったか?」


 俺が話しかけると、アマティはこちらをむいて、きょとんとした顔をした。

 その後、人差し指を立てて、


「モトム様、ここはちょっと贅沢な旅行先のホテルですわね。エミリーヒルはみんなの帰る家でしてよ。毎日こんなきらきらしたところに住んでいては、目が落ち着きませんわ」


 なかなか大人びた考え方で、一本取られたような気分になった。













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