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第16話 リバイアストン周辺 【戦果報告】



 カンテラート大森林の駐屯地に報告を終えた俺たちは、一路リバイアストンに戻ることにした。


 凱旋というのは気持ちのいいものだ。

 さらに予定より一日早く切り上げられたことも重畳。

 俺たちはモナド平原を快走しながら、あれやこれや、将来のことを雑談していた。


「早くみんなに教えてあげないとね! お姉ちゃんたち、やったんだよって!」

「これでみんなドラゴンスレイヤーの称号持ちですね!」


 ラティーナもエチカもご機嫌だ。

 ほんと、俺も鼻が高い。

 思い返すと、うちの子たち、めちゃくちゃ優秀だったわ。

 まだバディ結成してから十一日目なんだけどね。


「シルミウスを倒したせいなのか、私たちのレベルも上がっていますね」


 そういえば、俺のレベルも結構上がってたんだよな。

 俺は現在【整備員レベル18】になっている。

 エチカやラティーナも、それぞれ【砲手レベル2】、【車長レベル2】になっているんだけど。


 このレベル、経験値制なのかどうか良く分からない。

 すぐ上がるわけじゃなくて、日が経つと徐々に上がっていくシステムのようだ。

 一晩寝たら成長している感じ。

 だから、今はエチカやラティーナはレベル2だけど、明日になったらレベル3になっているんだろうな、と思っている。


 また、レベルが上がったら何ができるようになるのか良く分かっていない。

 今度またマニュアル見て調べておかないとな。


「ねえねえ、モトム、賞金何に使うつもりなの?」


 ラティーナが砲塔から身を乗り出して、操縦手ハッチにいる俺に聞いてくる。

 ちょっと危ないな、と思って冷や汗を感じながら回答する。


「そうだなあ、当面の日用品を買っても余りそうだなあ」


 エチカの予測が当たっているなら、シルミウス討伐の賞金は、日本円にして五億円相当。

 エミリーヒルの生活をしばらく支えて、軌道に乗せるには十分な資金。


 というか、住居はあるし、その他の生活必需品を街で買うだけなら、二十四人の子供たち、大人になるまで養えるかも?

 大農場まるごと買えるぐらいって話だからな。


「土木工事して、畑作って……その後はみんなの欲しい施設を建てようかな?」

「楽しみだね! 丘の上の家も建ってるって言ってたしね!」


 そういえば、そうだった。

 二日留守にしただけだから、あんまり変っていなかもだけど。







 モナド平原を全速力で取って返して、まずはリバイアストン西のテント村だ。


 到着したら最初に、報告のために冒険者ギルドのデミスタンに会う。


 戦車をテント村の外に置いたままにはできないので、俺が留守番して、エチカとラティーナに呼びに行ってもらうことにした。


 三十分ほど待つと、デミスタンが馬に乗ってやってきた。

 その後ろには同じく馬上のラティーナと、その背にはエチカの二人乗り。


 俺は二頭の馬に乗った三人が近づいてくるのをモニターで確認すると、戦車を旋回させて、操縦席ハッチから出た。

 そして、砲塔の上に登る。


「モトム……二人に話は聞いたが」


 血相変えたデミスタンが言葉を続ける前に、俺はバスケットの中に入れていた角を持ち上げて、どんと戦車の後部に置いた。


 ほんのり空色、湾曲したバイソンのような角。

 エチカの狙撃で根本から折れていた、シルミウスの角だ。


「こいつは……やってくれたなあ! すぐに確認を送るからな!」


 そう言うと、馬首を引き返して、リバイアストン西門の方へ向かうデミスタン。

 あいつ、めちゃくちゃニヤニヤしていた。

 デミスタンも喜んでくれてるんだな。

 その様子を見て、ラティーナが問いかける。


「あっ、デミさん! このお馬さんどうするの?」


 デミさんて。

 ……短くて言いやすいな。

 俺も今度からそう呼ぼう。


「そいつもやるよ、俺からのご祝儀だ! 丘に戻っていてくれ! 後から結果を伝えるから」


 ヒャッホウ、という掛け声と共に、デミは馬で走り始める。


 俺は戦車を運転し、馬はラティーナが乗ってエミリーヒルに帰ることにした。


 戦車を中腹に停車する。

 そこでは、八人の男の子たち全員が、大工の助手さんの指示で柵を建ていた。


(ここにいるってことは、丘の上に建てていた家は完成したのかな?)


「あ、お帰りなさい!」


 俺たちを真っ先に出迎えてくれた声は、ハンスという一番年長の、人間の男の子からだ。

 隣にはエルフのマルコもいて、彼も、顔を上げると叫んだ。


「村長、もしかして、成功ですか?!」

「おう。みんなのおかげでな。ばっちり成功したよ」


 その場にいた男の子皆に、笑みが浮かんでいく。

 両手を上げて万歳している子もいる。


「柵作ってくれているのか?」


 俺はマルコたちに近づくと、彼に聞く。


「はい、丘の上の、館が完成したので、次は入口の柵を作っています。柵ができたら、堀を作る予定です」


 確かに、柵も堀も作ろうと思っていたんだよな。

 まず、周辺にうようよいるはずの、遊牧騎馬民族が簡単に侵入できないようにしないといけないから。

 大工さんたち、気をきかせてくれているなあ。


 ちょっとマルコが言ってたことで気になったことがあった。


 <館>って言ってたが。

 丘の上に大工さんたちが作ってくれていた住居、一体どんな風になったんだ?


「着々と形になってますね、エミリーヒル」

「ほんとだね。……ところで、お馬さんってどこに繋げばいいのかな?」

「多分、丘の上じゃないかな?」


 男の子たちと別れて、ちょっと丘を登ったらすぐに、くだんの建物の屋根が見えてきた。


「うわっ、なんじゃこら」


 すげえのが出来上がっていた。

 丘の上にできていたのは、確かに館と言っても差し支えないぐらいの立派なログハウスだった。


 まず結構な大きさだ。

 長手方向は二十メートルくらいありそう。

 日本だと、地方の公民館並みのサイズだな。


「おう、帰ったか。早かったな」


 大工のおやっさんが測量器みたいなものを持って、玄関の前にいた。

 母屋おもやはできあがっているから、次は外構を作っているのかな?


「その様子だと、仕事は上手くいったようだな」

「はい、おかげさまで! それにしても、この屋敷、本当にすごいですね! 貴族の館かと思いましたよ」

「はっ、中に入ってみろよ。確認してくれ」


 そう言うおやっさんの案内で、俺たち三人は館の中に入る。


「うわあ……ホバルク村の村長の家より立派かも」

「とても広いですね……それに、すごく立派なつくり」


 ラティーナとエチカが即座に感嘆を漏らす。


 入ったらまず大広間だった。

 天井の手を伸ばしても届かない位置に横梁が四本、トラス形式の骨組みに支えられた屋根が見える。

 平屋だけど、二階建て以上の高さがあるな。


 家具は何もないから、公民館の体育館という表現がぴったりかも。

 無垢フローリングにしか見えない床が、新鮮な木の香りを発していて、マイナスイオンが出ていそう。

 そうそう、最後の方の材木は全部床板に加工したんだった。


「個室は左に一つと、あとは右に台所。中央は広間にしといた。宿泊できるところは後で建てる予定だが、この部屋の面積なら、全員寝れるだろ?」


 なるほど。そういう配慮か。

 確かに、変にいっぱい部屋を作っても全員収容できないかもしれないしな。

 最初に建てる建物としてはこういう大きな部屋一つが適切かも。


 子供たちもまだエミリーヒルに慣れていないし、一人で寝るよりはみんなで一か所に固まって休んだ方が、一体感が出るだろうしな。

 

「で、お前ら何にしに出掛けてたんだっけ?」


 おやっさんが聞いてきたので、俺は背中のリュックの中に入れていたドラゴンの角を広間の床にどっと置いた。


「こいつは……」


 おやっさんはしゃがみ込み、角を鑑定するように眺めている。


「俺ぁ、詳しくねえが、こいつもかなりの値がつくんじゃねえか? 素材としても使えそうだ」

「これは美品ですから、結構な値段が付くと思います。金貨百枚くらいは……」

「そんくらい行くだろうな」


 おやっさんとエチカが、角の値踏みをし出した。


「これで百枚。ほえー……」


 相場観のないラティーナが目をぱちくりさせているのが面白い。

 そんだけの価値があるなら、お金に困ったときに保険になるな。

 まあでも、俺たち三人の初のハンティング成功記念品だから、この広間に飾っておくってのもいいな。


「しかし、デミスタンの野郎の話はぁ、半信半疑だったが、お前ら本当にドラゴンスレイヤーだったんだな……あの化け物みたいな車、マジでつええんだな……」


 そう、おやっさんが感嘆してまじまじと見てくるので、俺は苦笑して所在なげになる。


「つーことは、今からお前ら大金持ちになるわけだ。こりゃあいい。竜の素材とか、賞金入ったら、また依頼してくれよな!」


 そう言って、おやっさんは俺の背中を割と強めにバンバン叩いた。







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