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第11話 エミリーヒル3 【拠点建築計画2】



 作業指示した後、俺はエチカとラティーナと共に90式に乗り込み、木こりさんたちと一緒に丘の南側の森まで戻ってきた。


 もちろん木こりさんたちは戦車の様子に度肝を抜いていて、徐行速度の戦車と距離を取りながら、おっかなびっくりついてきている。


「モトム様! また撃ってもよいんですね!」

「エチカ、何だか嬉しそうだな」

「あの反動、体の芯まで響いて、忘れられないんです……絶対、外しませんから!」


 朝、サンプルの材木を作るために撃ったのがエチカの初射撃だったのだが、その時の感触にハマってしまったらしい。

 うーん……トリガーハッピーになっちゃったかな?


「お、おいまさか……その大砲で木を撃ってたのか?」


 戦車の横に退避している木こりさんから、操縦席のハッチから顔を出している俺に対して声がかかった。


「ああ……これなら一発で倒せるから」


 木こりさんたちの開いた口が塞がらないと言った表情に苦笑する。

 まあ、戦車砲で木を倒そうなんて、普通の奴はやらないからな。


 さて、どこを狙うかな?

 できるだけ、まとめて倒せるところが効率がいいよな。


『モトム、西側の五本ほど固まっている場所でどう?』


 ラティーナが周囲を見て、よさげな場所を見つけてくれた。

 確かにそこなら、貫通弾が飛んで行っても、被害は出ないだろう。

 

「木こりさんたち、もっと離れてくれ。これ、かなり音がうるさいから。必ず耳を押さえていてくれよ」

「いいけど………………ここでいいですかあ?!」

「おっけーです!」

『前後、左右、確認ヨシ!』


 これはラティーナ。

 よしよし、ちゃんと車長として安全確認してる。

 インターコムをオンにして、エチカに射撃を指示する。


「じゃあ、エチカ頼む」

『はい、ちゃっちゃっと行きますね!』

『エチカ、ゴーゴー!』


 ラティーナが、多分、ニコニコしながら、掛け声をかける。

 エチカは自分で砲塔を回転させ、森の最西端の一角に生えた木をHEAT弾で次々に撃ち倒していく。


『なかなか、照準付けるまでに時間がかかりますね……』


 いや……かなり速いけどな。

 一本当たり十分もかかっていないし。


 木の間隔が近すぎるので、センサーによる自動ロックオンじゃなくて、マニュアルロックオン。

 それなのに初めてでこれって、どう考えても才能あるよ。


 にしても、これは良い練習になるかもしれないな。

 風竜戦ではエチカの素早い狙撃がかなめだし。

 今のうちに存分に練習してもらいたい。


 俺たちは結局、午前中三時間で九本の木を倒した。


「ざっとこんな形だけど」

「あ、ああ……」


 転がった大量の丸太を見て、木こりさんたちは盛大に引いていた。


 彼らの力も借りて、三本ずつまとめて玉掛けして、戦車で丘の中央まで引きずっていく。

 それを都合三度繰り返して、今日の運搬作業は終了。


「あとは、10メートルぐらいの木を三分割に切ってもらっていいかな?」

「なにがなんだか……木こり界の常識が覆ってるぜ」

「きっと俺たちは木挽き要員やってればいいんだよ」


 鳩みたいな呆けた顔になってしまっているが、ちゃんと仕事をしてくれる木こりさんたち。


 三分割してもらって三メートルぐらいになった木を、木の皮で手を切らないよう、牛の皮でくるんで持ち上げ、戦車の砲塔バスケットに入れて行く。


「枝も落としていないけど、こんなんでいいのか?」


 不審に感じたのか、木こりさんの一人が戦車の上で、俺に聞いてきた。


「まあ、見ててくれ」

「うわ、何だこれ?! 生木が材木にじわじわと変わってく?! 気持ち悪っ!」

「めちゃくちゃな魔法だな……」


 木こりさんたちの生き生きとしたリアクションが嬉しい。

 午前中で丸太を一本処理し、三本の材木を得た。


 昼食の前に、丘を降りて、大工のおやっさんたちが行った川の方へ三人で歩いていく。


 孤児たちと俺は、異世界でサバイバル生活をするわけだが、何といってもまず衣食住の確保が生命線だ。


 特に、飲料水が最初で最大の課題だと思っていた。

 90式には飲料水として、ポリタンクに30リットル積載されていた。

 これも無限補給の対象で、実験の結果、一日使う分ぐらいなら一晩で回復することが分かった。


(ちなみに燃料もこの方式だった。昨日走ったときに使った分は、今朝には満タンになっていた)


 この無限湧水、便利なのだけど、俺を含め、二十四人の生活分にはかなり心許こころもとない。

 デミスタンからも、馬車一台分の樽に入った真水をもらっていたが、それももって十日というところだろう。

 一刻も早く、水の補給手段を考えないといけない。


 井戸はすぐにでも開削したいところだが、一日二日でできるものじゃない。

 だから、まずは濾過装置を作って、少しづつでも補給していこうと思っていた。


 俺たちが、大工さんと少年少女が向かった川岸にたどり着くと、既に樽が二つ、台の上に立っていた。

 おまけに、柱を立ててその濾過装置を覆うように建物を建てている。

 雨避け、風避けの庇みたいな感じだ。


 休憩しているらしき大工のおやっさんに、俺は声をかけた。


「これどうしたんだ?」

「ああ、サービスしといてやるよ。無いと不便だろ?」


 いやほんと、これはありがたい。

 確かに思いつかなかった。


 軒先があるのとないのとでは、炎天下でも風雨の時でも、水汲み難易度と疲労が段違いだ。

 おまけに、滑車式釣瓶みたいなものも取り付けてもらっていて、濾過装置の上まで桶が運べるようになっている。

 これがあると、水汲みの後の持ち上げがかなり楽になる。


「ありがとうございます。本当に、助かります」


 俺は感謝のあまり、素直に頭を下げてしまった。


 大工のおやっさんはそれを見て呆けた顔をした後、よせやい、と照れくさそうにしていた。


 おやっさん達の作業速度はどんでもなく早くて、結局、材木が揃うまでに濾過装置を六つも作ってくれた。

 これでしばらくは水の心配はなさそうだ。



 夜半まで、材木加工を行う。


 木こりさんたちが眠った後も、俺は一人で加工を行っていた。

 昼間にちょっと加工していて、戦車の後方にスロープ作ったら、もう一人でも丸太を転がして砲塔バスケットに入れられることが分かった。

 それで俺は加工作業に夢中になっていた。


 こない今のペースなら、日間四十本の規格材を作ることができる。

 おやっさんから、さしあたり二百本用意してくれと言われているが、風竜退治に出る一週間後までには十分間に合いそうだ。


「モトム様、少し休んでください」


 俺が戦車の後部で丸太を抱えていると、魔法の灯りをともしたエチカが近くにやってきて、そう言った。


「んっ? おおっ、そうだな……」


 思わず熱中して時間の経つのを忘れていた。


 エチカの心配そうな顔に、ちょっと心苦しくなる。

 しかし、今日の分の丸太は処理しておきたい。


「あと一本で終わるから。それが終わったら寝るよ」

「……ではこれを」


 そう言うとエチカは、自分が羽織っていたカーディガンを俺の首に巻いてくれた。


 そう、この草原、今はどうも春先ぐらいの気温で過ごしやすいのだが、大陸のせいか、夜はかなり冷える。

 エチカがくれたカーディガンは暖かった。


「だけど、それじゃ君が寒いだろう」

「私はテントに帰って、みんなと毛布にくるまりますから」


 そう言ってエチカが微笑する。


「そうか、ありがとう」

「モトム様……どうして、どうしてここまで私たちのために」

「ん? ああ……あんまり気にしなくていいよ。前にも言ったけど、仕事が好きなんだ」

「そう、なんですか……でも心配です。私たちから見ても、モトム様は働きすぎだと思います」

「そうだなあ……まあ、明日からは、木こりさんたちに木挽きしてもらっているときは休めると思うし、適当に日中仮眠取ることにするよ」


 そう俺が彼女を安心させようとできるだけ優しい声で言うと、エチカはちょっと困ったような表情をしたが、うなづいた。


「では、私はこれで。おやすみなさい」

「うん。おやすみ」


 なんだか名残惜しそうにエチカはテントの方へ歩いて行った。





 材木が一定数揃い、濾過装置も軌道に乗り出した。


 大工のおやっさんたちは、丘の頂上に既に俺たちの新居建設を始めている。


「こいつは俺の一世一代の作品になるな!」


 と、おやっさんは息めいている。


 作業が始まって五日目、俺は日中に材木の加工中、目の前に青ウィンドウが立ち上がるのに気づいた。


「あれ?!」


【加工数制限が近づいています。】

【一日の最大加工数 四十五本/五十本】

【一週間の最大加工数 百九十九本/二百五十本】


……加工数制限なんてあったのか。


 よくよく考えてみたら、今、90式は完全に木材加工マシーンとしてしか使っていないが、元は戦車だからな。

 それでも一週間に二百五十本ってのは結構な数だけど。

……本業やらせろ、っていう苦情かもしれん。


 俺はおやっさんに相談しに行った。


「どした?!」

「実は……」

「あん、二百五十本しか作れない? うーん……だったら、二百本より先は別のもの作ってくれるか?」


 既に柱とかは別加工でやっているので、それは問題ない。


「もう基本的なところはお前さんの材木でやっちまってるから、問題ない。後細かいところは、普通の木材でいいだろ」


 俺はそう言われて、目の前で作られている建物の壁を見て度肝を抜かれた。


「なんだこりゃ?! すげえ……普通のログハウスじゃねえ!」


 形的には、どっかの公園にある木造住居なんだけど……なんというか細部のきめの細かさが……異様に精度が高い。


「ふっふっふっ、すげえだろ。見ろよこの壁。隙間が一切ないんだぞ。寒さも暑さも防げる。いやあ、いい仕事させてもらったよ」


 とおやっさんはとても満足げにのたまった。


 さすがチートで作った変態素材だ。

 もうこれ、現代木造建築よりある意味レベル高いのでは……





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