53話
また遅れてしまってごめんなさい‥‥某パズルアプリにハマってました…‥‥
「ごめん、今のは誤解を生んでしまったね。ヒューレさんが持ち込んだのはダミーの本だ。だから安心して欲しい」
ふぅ、紛らわしいな。ダミーなら問題ないがバレるのは時間の問題じゃないか?
「シュウさん、ダミーが持ち込まれたのっていつかわかります?」
「今日だ」
「今日ですか‥‥ん?きょ、今日?」
よ、予想外すぎて吃っちまった。それなら、最悪学園が終わってから俺も何かしら手伝えるな。
「ああ、今朝のことだな。昨日は確実にあった」
「じゃあ、僕が登校した後ぐらいですかね?登校する前なら、僕にも知らされているはずだし」
「そのくらいかな。それでちょっとヒューレさんの拘束に手伝って欲しい。流石に団長相手だと厳しいからね。情報が聞きたいのと、良い人だから持ち込んだのには何か理由があると思うんだ‥‥できれば殺したくない」
シュウさんは、悲しそうな顔でそう言った。まあ仕事の仲間ってのもあるし、普通に仲が良かったんだろうな。俺がシュウさんの立場でも、そう思う自信がある。
「僕も‥‥ヒューレさんが悪い事をするような人じゃないと思います。ぜひ協力させてください」
「俺も協力しますよ。王様にもそう言ったんで」
「ありがとう、今日の授業が全部終わったら城に来てくれ。大体の位置は判明しているから作戦会議をする」
「わかりました」
「はい!」
ハオの奴、凄いやる気だな。ハオもヒューレさんって人と仲が良かったのか?変に気を負わなきゃ良いんだが。
「取り敢えず、俺からの話は以上だ。時間をとらせてしまってすまなかった。残りの時間は、他のクラスメイトと同じように過ごしてくれ。それじゃ!」
シュウさんが、他のクラスメイトの所まで戻った後ハオが話しかけて来た。
「リンク‥‥もし、もしもだよ。自分がお世話になった人や、仲が良い人が極悪人だったら君はどうする‥‥?」
ヒューレさんの事か‥‥うん、俺だったらやっぱりこうするかな。
「ぶん殴る」
「えっ!?」
「何をそんなに驚いているんだよ。極悪人だろ?ぶん殴って目を覚まさせるしかねえじゃねえか。説得できるなら極悪人じゃねえよ」
「確かに‥‥」
「それでも目を覚まさなかったら、そいつの全てを受け止める。クックックッ、順序が逆かもしれないが、殴るより殴られる方が嫌だって理由だけどな」
単純に痛いのは嫌だしな。
「はぁ‥‥それでも駄目だった場合は?」
「殺すよ」
「えっ‥‥」
ハオは、俺がそう言うと思わなかったのか目を見開いて固まってしまった。
「ど、どうしてだい?極悪人でも親しい人なんだよ!?なんでそんな簡単に言えるんだっ!」
「親しい人だからこそだっ!」
「っ‥‥!」
「ハオは親しい人が、罪を重ねたらどうする?たとえまだ罪を犯してないとしても、これから多くの人が犠牲になるかもしれないんだぞ」
「それは‥‥」
「単純に1人の命を取るか、多数の命を取るかだ。俺は親しい人が他の人に殺されるくらいなら、俺が殺したい。俺が殺したら、他の人は殺したと言う罪悪感に苛まされる事もないだろうしな」
それに‥‥最後が見れないのが一番辛いし、余計な罪を重ねさせず、少しでも善人として死んで欲しいしな‥‥恥ずかしいから言わないけど。
「他の人の事も考えていたんだね‥‥リンクは凄いね。僕は自分の事しか考えられないよ」
「今の歳ならハオが普通だろ。俺なんかただの綺麗事だよ、言うは易しって言うしな」
「それでも立派な考えだ‥‥リンク、僕はどうしたら良いかな。ヒューレさんは僕にとって、恩人でもあり親みたいな人だからさ‥‥」
「お前はヒューレさんをどうしたいんだ?」
「僕は‥‥ヒューレさんを助けたいっ!」
「答えはそれだな。それで良いじゃねえか」
「でも!この選択が間違えていたら!」
「ハオ、人の行動に正解なんてねえよ。お前が出した答えなら、それで良いと思う。それに、シュウさんも殺したくないって言っていただろ?王様が処刑って言ったら、みんなで反対しようぜ」
「リンク‥‥うんっ!」
「まっ、ヒューレさんが極悪人じゃなかったらの話だけどな!そろそろ時間だ、行くぞ!」
「あっ、待ってよ!」
今の会話で、少しでもハオの気持ちが楽になれば良いんだが‥‥。
(リンク、ありがとう。僕はもう迷わない‥‥ヒューレさんが例え悪だとしても、僕は助ける!)
俺とハオは、小走りでクラスメイトの所へ向かうとシュウさんが魔法で靄を出していた。何をやっているんだ?
「ふぅ、これで良し!じゃあ、今から魔法を見せてもらうよ。自信のある子からドンドン来てくれ。人前だと恥ずかしいと思うから、この靄の中で魔法を見せてもらう」
なるほど、だから靄を出していたのか。人前でやりづらいと思う人の為に、気遣いもしてくれて嬉しい反面、ハオの魔法が見れないと言う残念な気持ちもある。
俺が残念そうにしていると、ハオが話しかけてきた。
「リンク、僕の出番の時に、リンクの目の前に魔法陣が出るけど気にしないでね」
「ん?お、おう。わかった」
そう言い、ハオはシュウさんの所へ行き、靄の中に入った。
最初にやるのはハオか。俺の目の前に魔法陣が出るって言ってたけど、まさか攻撃魔法じゃないよな?信じてるぜ、ハオ‥‥。
リンクが不安になっている中、靄の中ではシュウとハオが向かい合っていた。
「ハオ君が一番最初とは思わなかったよ。その顔を見るに、相当自信があるみたいだね」
(ヒューレさんの話をしていた時と、顔つきが全然違うな。まるで別人だ)
「はい。と言っても、最近できるようになった魔法なんですけどね」
「それは楽しみだ。それじゃあ、始めてくれ」
「はい。空間内操作」
シュウとハオの前に、2つの魔法陣が現れる。ハオが片方の魔法陣に手を入れると、シュウの目の前にある魔法陣から手が出てきた。
「‥‥驚いたな。空間魔法を使えるようになったのか‥‥!」
「まだ、2種類しか使えないですけどね。もう大丈夫ですか?」
「ああ、出たら次の人を呼んでくれ」
「はい、座標転移」
ハオは、新たに出てきた魔法陣に覆われて消えた。靄の中に残ったのはシュウのみとなった。
「成長したな、ハオ君。ヒューレさんも喜ぶだろうな‥‥いけないいけない、少し感傷的になってしまった。歳のせいかな‥‥」
靄の中でしんみりした空気になっていた頃、靄の外でリンクはビクビクしていた。
あ〜、いつになったら魔法陣が来るんだ?前に学園長にやられたけど、急に魔法陣が現れると心臓に悪いんだよな〜。
と、リンクが考えていた時、床に魔法陣が現れた。
「うぉっ!目の前じゃなくて、下じゃん!ふざけんな!」
文句を言うと、魔法陣からハオが現れた。は?もしかして空間魔法!?ハオの奴いつの間に使えるようになったんだ!凄えな!
「やあ、ビックリしたかい?」
「おお!目の前じゃなくて、下に魔法陣が現れたのに驚いたわ!」
「えっ、そっちの事!?」
俺が冗談を言うと、ハオはムスッとした顔になった。ハオって意外に子供っぽい所もあるんだよな。
「ははっ、冗談だよ冗談。それにしても、空間魔法を使えるようになったなんて凄いな」
「結構頑張ったんだ。使えるようになったのは最近だけどね」
そう言い、ハオは照れているのか少し口元が緩んでいる。相当頑張ったんだな〜俺も頑張らないと。
「あっ、みんな〜いつでも入って良いってシュウさんが言ってたよ〜!」
「うおっ!ハオ様って中にいたんじゃないのか?」
「いつ外に出てきたんだ?全くわからなかったぞ」
「わかりましたー!」
「ありがとうございます!」
「何かの魔法か‥‥?」
クラスメイトは、後ろから聞こえてきたハオの声に戸惑っていた。そっか、俺が後ろにいたから、魔法陣から出てきたところを見ていなかったのか。
「そう言えば、空間内操作って体ごと移動できたんだな」
「?今のは座標転移って魔法だよ?」
「そうなのか?違いがわかんないんだけど」
「座標転移は、簡単に言えば移動用の魔法だよ。自分の魔力をマーキングしておけばもっと遠くに移動も可能かな」
「なるほど。空間内操作は?」
「魔法陣は座標転移よりも小さいけど、使い道が多いんだ。物を空間内に保存しておく事も可能だし、座標転移より魔法陣の維持がしやすかったりね」
「ほぇ〜物の保存もできるんだな。空間内は時間の流れは変わらないのか?」
「いや、現実より少し遅いぐらい。こっちの時間で1時間だとして、空間内は10分位かな」
「なるほど。ハオ、今日の作戦会議で保存して欲しい物があるんだけど良いか?」
「良いけど、何を入れるんだい?」
「このチョーカーについている鈴と同じやつ。今の俺なら、鈴に魔力を込めても1時間は保つからな。いざと言う時に俺が近くにいれば共鳴が使える」
「なるほどね。わかったよ」
「サンキュー。じゃあ俺はそろそろ行ってくるわ」
「頑張ってね〜」
「う〜い」
ハオに笑顔で見送られ、俺は靄の中に入った。さっき、男子が出てきたばっかだから誰もいないだろ。
靄の中では、案の定シュウさんが一人でトレーニングをしていた。




