51話
龍大樹から帰って来た翌日、俺はアルカディア城に訪れていた。
いや〜突然訪問しても入れるもんなんだな。王様には申し訳ないけど、話の内容がアレだから早く話さないと。
もう王様には会う話はして貰ったので、急いで王の間へと向かう。
「ふぅ、やっぱり城の中広すぎだろ‥‥失礼します」
俺は扉をノックし、王の間に入る。すると、険しい顔をした王様がいた。
何かヤバい事が有ったのか?
「来たか。今日は何の様だ」
王様は前回とは違い、真剣な声で話しかけて来た。これは、早めに話を終わらせた方がいいか?
「初代の王‥‥アル・クォーツ様について話があります」
「初代についてだと?初代は病気で亡くなった。話すことは何も無い」
「病死じゃなくて殺されたんですよね。エピル・バースに」
途端、王様の顔がより険しくなり王様は立ち上がった。
「なっ‥‥!リンク・ノイズ、それをどこで聞いた!話によっては貴様を処す!」
「落ち着いて下さい、ドラゴン族の王に聞きました。ドラゴン族の王はアル様と親友だったらしいんです」
「そうか、ドラゴン族の長が‥。すまなかった。それでアル様の何を知りたいんだ」
切り替えが早いな。流石国の王様だ。
「いや、知りたいって言うか俺に協力して欲しいんです」
「協力?」
「はい。実は初代王、アル・クォーツ様は生きています」
「‥‥今何と言った?」
「アル・クォーツ様は生きています」
「初代は殺されたはずだ。今お主もそう言っただろ」
やっぱり王様も知らなかったのか。
俺は、ドラゴン族の王様から聞いた話をそのまま話した。王様は話を聞いて頭を抱えていた。
「何て事だ‥‥バース家めっ‥‥!」
「それでアル様は、バース家を滅ぼすつもりらしいんです。ドラゴン族の王様にそれを止めるよう頼まれました」
「‥‥なるほど。わかった、お主に協力しよう。だが条件がある」
「条件ですか?」
「ああ、リンク‥‥お主は前回アルカディア城に来た時、禁術魔法の本を図書室で見たそうだな」
「はい、見ましたが」
「アレは本来、宝物庫にあるべき物だ」
何でそんな物が図書室にあったんだ?
俺が困っている顔をしていたら、王様が説明してくれた。
「訳がわからないと言う顔をしておるな。つまり、何者かが禁術魔法で何か企んでいると言う事だ。そして城の関係者に内通者がいる」
「なっ!」
それって、結構ヤバいんじゃないか!?くそっ、悪い事が次々と重なっている。
「禁術魔法の本は、安全な所に保管しておる。問題は禁術魔法の本を使って、何を企んでいるかだ」
「せめて、禁術魔法の本を持ち込もうとした人さえ判っていたら、ある程度予測はできるんですけどね」
「持ち込もうとした奴については、ある程度予測できている。裁翼の騎士団の団長、ヒューレ・フィルル」
「‥‥団長」
下手したらシュウさん級と戦うのか。エンシェントドラゴンと戦った時より強くなったとはいえ、厳しいな‥‥。
後は目的か‥‥ヒューレさんが弱みを握られている可能性もあるから、なんとも言えないな。
「なるべく国が動くが、予想外の事が起きたら協力して欲しい。学生にこんな事を頼むのも情けない話だが頼む」
王様は頭を下げた。
おいおい!こんな所を、誰かに見られたら誤解されかねないぞ!それに、王様って簡単に頭を下げたらダメだろ!
「ちょっ、頭を上げてください!条件は飲みますから!」
「感謝する、リンク・ノイズ。お主にはアル様の得意な魔法を教えよう」
「得意な魔法ですか?」
できれば話し合いで解決したいけど、やむを得ない場合は戦うしか無いから聞いておくだけ損はない。
「うむ。アル様の得意な魔法は、無属性の結界魔法だ。断罪結界と言う魔法で、7種類の特性を持っている」
7種類か‥‥多いな。シュウさんの原初の七剣に近い魔法か?
「結界と言うことは、守るのが得意な戦い方ですかね?」
「いや、アル様は結界を攻撃にも使っていた。攻防一体の戦闘スタイルだろう。7種類の結界のうち、判っているのはのは2種類だ」
う〜ん、厄介だな。それに7種類中、2種類か〜渋い。せめて、4種類くらいは知っておきたかったけど仕方がないか。
「まず一つ目は赤い結界、憤怒。結界で覆った生物のダメージを魔力に変換する。ダメージは回復できないがな」
結界って何だっけ?もう、一つ目の時点で狡いじゃん。自分だけじゃなくて、他の人にも使えるあたり万能だな。
「もう一つは‥‥」
「‥‥緑の結界、色欲。覆われた生物の五感と知能を低下させる。互換に関しては、どこを低下させるかと、どのくらい低下させるかを調整できるらしい」
エゲツな。は?ちょっと強すぎないか?これと同じくらいの能力があと5種類もあるの?正気か?
「無茶苦茶ですね‥‥」
「同感だ。話し合いで解決できたら良いな」
くっ、頼まれたのが俺だからって他人事みたいにっ!!アル様が話が通じる人だと良いんだけど‥‥。
「はぁ‥‥取り敢えず、俺の用事は終わったので帰りますね?」
「うむ、気をつけて帰れよ」
「失礼しました」
あ〜アル様の件とクルトの件、それに年末の序列戦。やる事がいっぱいあるな。
早く家に帰って、学園に行く準備でもするか〜。
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時は戻り、リンクが孤児院の子供達を助けた日の深夜。ある屋敷に3人の男が話し合っていた。
その内の二人は、どうやら揉めている様だ。
「ニッカ!何で爺さんを殺しやがったぁぁぁ!!!手は出さない約束だっただろ!!!」
ニッカと呼ばれた男は、もう一人の男に胸ぐらを掴まれている。
「お前が禁術魔法の本を持ってこなかったからだろ?ヒューレ。な〜に、寿命が短いジジイが死んだだけだ。子供が生きているなら良いんじゃねえか」
「んだと、てめぇ!!」
「止めろ」
ヒューレはニッカを殴ろうとするが、もう一人の男に止められる。
もう一人の男の声に反応して、ヒューレの右胸から魔法陣が浮き出て来た。
「ぐぅっ!」
「‥‥ニッカも、今後気をつけろ。良いな?」
男から強烈な圧が放たれる。部屋の温度が数度下がったのではないかと錯覚するくらい、男は冷たい声、冷たい瞳だった。
ニッカとヒューレは、背筋が凍った様に動かなくなった。いや、動けなくなった。
「わ、わかりました」
「チッ‥‥」
「ヒューレは、今後も禁術魔法の本を探して入手しろ。ニッカは我々を捜査しようとしている人物の排除。これで話は終わりだ、解散しろ」
ヒューレとニッカは、部屋を出てそれぞれ違う方向に行った。
(くそっ‥‥爺さん、済まねえっ。俺が不甲斐ないばかりにっ‥‥!ニッカ・グリンジャー、それにノワール・バース!いつかお前らを殺す!‥‥子供達は無事らしいがどこに消えたんだ。それも調査しないとな)
二人が部屋から出た後、もう一人の男、ノワール・バースは高級酒を飲みながら微笑んでいた。
「フッフッフッ。あの本さえ手に入れれば、自分の体で復活できるっ!そしたら俺がこの国の王として君臨してやる!」
ノワールは赤い酒が入ったグラス越しに、窓から月を見ていた。
酒が揺れて時折、月が赤く染まったり染まらなかったりしている。
綺麗な月が真っ赤に染められているのを見て、己が綺麗だと思ったモノが汚されて悲しみや怒りが混ざったドス黒い感情と、汚されていてもやはり、どこか幻想的で美しいと言う喜びに似たような気持ちがノワールの頭を占めた。
「チッ、あの時を思い出すな。‥‥そろそろクルトに憑依するのを考えねばな」




