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50話

 俺は、龍の里で3日ほど過ごした後、ベニちゃんの背中に乗って家に向かっていた。


「‥‥‥」


「リンクさん?」


「‥‥ん?どうしたんだ?」


「いえ、深刻な顔をしていたので何かあったのかと‥‥」


「ああ、ちょっと考え事をしていただけだよ。気にするな」


「それなら良いんですが」


 夏季休校はあと2日残っているな。できれば学校が始まる前に、またアルカディア城に行って王様の話をしたい。

 アル様の情報を少しでも共有したいからな。


 ベニちゃんに乗る事数十分、マギア草原に到着した。

 今回は、普通に降ろしてくれたから酔わなくて済んだな‥‥‥。


「リンクさん、今回はありがとうございました」


「こちらこそ、また用があったら龍の里に行くよ」


「用がなくても来ても良いですからね?それでは!」


 ヒュンッ!とベニちゃんは空へ飛び、龍の里へと帰っていった。


「ルンちゃん、俺達も帰るか〜」


 ルンちゃんは面積を増やし、プカプカと浮かび始めた。


「おっ、運んでくれるのか?よろしくな」


 ルンちゃんは嬉しそうにプルプルしている。ルンちゃんに乗るのも久しぶりな気がするな。帰りは空からの景色でも眺めながらゆっくりするか〜。


 あと十数分で家に着く頃、ふと下を見ると4人の子供達が大人の男性に追われているのを発見した。

 子供達の表情が穏やかじゃないな、念の為降りて事情を聞こう。


「ルンちゃん、先に降りてるな!」


 俺はルンちゃんから飛び降り、子供達と大人の間に着地した。


 ドスン!!

 く

 いってぇぇ!!!身体強化を使っておけば大丈夫だと思ってたけど考えが甘かった!二度とやんねえ!


「空から人が降ってきた?い、意味がわかんねえ‥‥」


 俺が空から落ちてきたのにビックリしたのか、子供達は口を開いたまま固まっていた。男性の方は驚いてはいるものの落ち着いているな。

 あっ、やっべ。何か言わないと変人扱いされちゃうな。


「いや〜すんません。ちょっと子供達の様子がおかしかったんで、大丈夫かどうか確認しようと思って‥‥‥あっ、俺は怪しい者じゃ無いですよ」


 そう言うと、目の前の男性が喋り出す。

 ‥‥今、視線で子供達を牽制したな。やっぱり何かある。


「そ、そうか‥‥俺はそこの子供達の親から世話を頼まれてね。子供達を迎えに行ったら遊びたかったのか追いかけっこが始まってしまったんだ。助かったよ」


「そうなんですね!こら、大人を困らせたらダメだろ?」


 そう言い、俺は子供達の方に振り返りつつ、近づいた。子供達が怯えている。


「安心しろ、味方だ。あの人が悪い人なら3回連続で瞬きしてくれ」


 小声で喋りかけると、子供達が全員3回瞬きをした。


「お前ら、良い子にしてろよ?ルンちゃん!この子達を乗せてくれ!」


 ルンちゃんは2人を身体に乗せ、もう2人を触手で掴んで離れていった。


「て、てめえ!何してんだ!」


「お前が怪しい奴だってわかったから、子供達を避難させただけだ」


「チッ!めんどくせえな‥‥関わらなかったら今頃お前はいつも通りの生活を送れたのにな」


「ん?どう言う事だ?」 


「こう言う事だ!死にやがれ!」


 男は懐からナイフを出し、俺に向けて刺そうとして来た。結構早いけど問題ねえ!今の俺には龍の王様から貰ったこの瞳があるからな。最悪魔力さえ見れれば対処はできる。

 俺は身体を少しズラした後、ナイフを持っている方の手首を掴む。


「はっや」


「‥‥何者だ?今の動きについてこられるなんて。身体強化も使っているんだぞ?」


「最近、無能を卒業した一般人だよ」


 まあ、アリスと師匠以外はまだ俺のことを無能と思っているだろうがな。


「何言ってんだお前、本当にめんどくせえ‥‥なっ!!」


「うおっ!?」


 男は空いている手で、もう一本のナイフを取り出して顔を狙って来たが、俺は先程と同じ様に手首を掴んだ。

 この瞳のおかげで、次の予備動作が予想しやすくなったな。


「これも反応するのか!」


「さて、あの子に何をしようとしたのか教えてもらおうか」


「嫌だね」


 カチッ‥‥ヒュン!!


「危なっ!」


 男はナイフの柄にあるボタンを押すと、ナイフの刃が顔に飛んできた。


 めんどくせえ道具を使いやがって!手を離したから振り出しに戻っちまった!


「お前には勝てなそうだから退かせてもらうぜ」


 男はポッケから魔法陣が刻み込まれた、板の様なものを取り出して魔力を込めた。


「逃がすか!」


「逃げさせてもらう、あばよ」


 男は光に包まれて消えた。

 くそっ、間に合わなかったか。鈴を常に出しておくべきか。


「ルンちゃーん!戻って来て良いぞ〜!!」


 俺が大声で呼ぶと、ルンちゃんがプカプカ浮いたまま戻って来た。

 ルンちゃんは子供達をゆっくり降ろした。


「すみません、ありがとうございました!」


「「「ありがとうございました!」」」


「おう、無事なら良かった。あの男とはどう言う関係なんだ?」 


 俺が質問すると、子供達の中で一番背の高い男の子が答えてくれた。


「実は、僕たちは孤児院に住んでいるんですが、ある男に魔法をかけられて奴隷にされたんです。さっきの男はその男の下っ端です」


「そうか‥‥」


 下っ端であの強さか‥‥ここら辺でそんなに強い盗賊とかっていなかった気がするんだけどな。


「そう言えば、孤児院には味方がいなかったのか?」


「院長がいたんですけど‥‥ヒグッ‥僕たちを‥‥に、がすために、囮になって‥‥ヒグッ‥」


「悪かった、もう言わなくて良いぞ」


 思ってたより重い問題だな‥‥この子達は別の孤児院に連れて行くか‥‥さて、取り敢えずこの子達にかけられた魔法を解くか。


「皆、俺の周りに集まってくれ」


「?わかりました」


 4人が俺を囲う様に近づいて来た。


「今から、お前らにかけられた魔法を解く。ちょっと気持ち悪いかもしれないけど我慢してくれ」


「そんな事できるんですか!?」


「ああ、それじゃあ行くぞ?手を繋いでくれ」


 子供達が手を繋いだのを確認すると、俺は動の魔力を少しずつ子供達に流す。

 一気に流したら子供達に負担がかかるだろうし、魔法を使った奴にバレかねないからな。


「うわぁ、変な感じ」


「ね、身体の中がブルブルしてるー」


 魔力を流して数分後、子供達の中にあった変な魔力が消えたのがわかった。

 ふぅ、これで問題ないな。


「よし、終わったぞ。よく頑張ったな。今から別の孤児院に連れて行くから、またルンちゃんに乗ってくれ」


「「「「はーい!」」」」


 孤児院に行く途中、またあの男に襲われるか心配だったが杞憂だった様だ。

 俺達は無事に孤児院に着き、子供達は預けられることになった。


「お前ら、あまり迷惑をかけない様にな〜」


「うん、ありがとう!」


「じゃあね〜!」


「また会いに来てね!リンク!」


「おう!ノキ、みんなの世話を頼むぞ」


「はい!」


 子供達の中で、一番年上の男の子のノキは元気に返事をした。

 うん、元気になったなら大丈夫だな。

 俺は孤児院を離れ、家に帰った。


「ふぁ〜久しぶりの我が家!素晴らしい安心感だ!!」


 ルンちゃんも家が落ち着くのか、俺のベットでコロコロ転がっている。可愛い奴め〜プニプにしちゃうぞ!


「リンくーーーん!いたら返事をして〜!!」


 ん?アリスの奴どうしたんだ?‥‥‥あっ!アリスに龍の里に行くことを伝えて無かった!やっば!


「い、いるぞ〜!家に上がれよ!」


「あっ!リン君、どこに行ってたの!?心配したんだからね!」


 ヤ、ヤバい‥‥ちょっと怒ってる。あ〜階段を登る音が聞こえてくる〜!説教は嫌だぁぁ!!


「リン君!」


「ひ、久しぶり〜」


「何処に行ってたの?」


「ちょっと遠くに行ってた。へへっ」


 そう言うと、アリスは俺の匂いを嗅いできた。えっ、もしかして変な匂いがするとか?でもいつもと変わらないはずなんだけどな。


「何か良い匂いがする‥‥女の人にあってたの?」


 アリスのハイライトが消える。正直に言うべきか言わないべきか‥‥いや、今回は言わないことにしよう。


「いや、違うぞ。それよりアリスに頼みたいことがあるんだが」


「ふ〜ん‥‥頼みたいことって?」


「実はアクセサリーが欲しいんだけど、何か良いのがないか?」


「何で急にアクセサリーなんて欲しくなったの?‥‥気になる子でもできた?」


「違うって!ほら、魔鈴があるだろ?あれを常に持ち歩く状態したいんだよ。どうせならオシャレな方が良いだろ?」


 それに、ただのアクセサリーだと思われた方が効きやすそうだしな。


「なるほど‥‥うん、任せて!リン君にピッタリな物を見つけてくるからね!夏季休校が終わったら渡すね!」


「お、サンキュー!」


 アリスの機嫌も良くなったし、一石二鳥だな!

 明日はアルカディア城に行って、できれば直ぐに王様と離したいな‥‥。

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