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45話

先にハオの話を書こうと思ってたのに、気づいたらポッセとクララの話を書いていた‥‥

 雲一つなく、太陽の光が地上をジワジワと熱する中、ある海に二人組の男女がいた。

 女は日陰で休みながら火属性の魔法を少年に放ち、少年はそれをひたすら躱しながら魔法の練習をしていた。


「ちょっ!クララさん、何かファイアショットの数が増えてない!?」


「そんな事ないよ?ほらほら!頑張って練習して、ポッセ君!」


 ポッセとクララは、マギア草原の正反対にあるノーレル海と呼ばれている海に、特訓をしに来ていた。

 周りには人がいなく、特訓するには絶好の場所だった。


「くそがっ!!!全ての生命の源よ。今、災害となり‥‥あぁっつ!!」


 ポッセは、死角から来たファイアショットを躱しきれずに掠ってしまった。


「次はきっとできるよ!休まずに頑張ろ〜!」


「く〜!鬼!悪魔!!ポンコツ!!!」


 クララは、ポンコツという単語に反応する。


「ポ、ポンコツ‥‥?そ、そんなに厳しくされたいんだ‥‥お望み通り数を増やして上げる!ファイアショット!」


「ごめんって!うぉっ、危な!」


 ポッセはいつでも詠唱魔法を発動できるように、敵の攻撃を躱しながら詠唱魔法を成功させる特訓をしていた。


(壁から跳ね返ってくるボールを取る訓練で、ポッセ君の反射神経が良くなっている。あと、私が身体強化で投げてたから、ポッセ君も身体強化で取るしかないのが良かったのか、魔力の流れも前よりスムーズになってるかな!うん、流石私だね!)


 クララが自己満足している間も、ポッセは魔法を躱していく。が、一向に詠唱魔法を成功させれる気配がない。


「魔力展開さえできれば、余裕なんだけど‥‥っな!」


 ポッセは、魔力展開を禁止されていた。魔力展開をした上で、詠唱魔法を使うと魔力の消費が激しく、詠唱魔法が途中で消えたり体力が保たないからだ。


「ポッセ君、動きが鈍ってきてるよ〜!頑張れ頑張れ〜!」


 クララの言った通り、ポッセの動きが鈍くなってきていた。

 ポッセは、1時間ひたすらファイアショットを全力で避けて、詠唱魔法を発動させようとしていたのだ。だが、そもそも1時間以上、副団長(クラス)の魔法を避けているポッセの体力が異常なのだ。

 ポッセから流れ落ちる汗が、砂浜にひたひたと吸い込まれていく。


「ハァ‥ハァ‥‥流石に疲れてきたな‥‥」


 そう言いつつ、最小限の動きで魔法を躱すポッセ。


(そろそろ休憩にした方がいいかな?倒れたら大変だし)


「ポッセ君、そろそろ休憩にしよっか!」


 クララは、一度魔法を放つのを中断した。


「いや、まだやれる。あと10分でいいから続けさせてくれ」


「頑張るね〜何でそこまでするの?」


「このままだと、エンシェントドラゴンの時みたいに足を引っ張っちまう!もうあんな思いは嫌なんだ!!」


「ポッセ君‥‥」


「それに、リンクの奴はどんどん強くなっている。負けてらんねえんだよ!」


「わかった。あと10分だけ続けよう。その後はしっかり休もうね?」


「クララさん、ありがとう!」


「それじゃあ行くよ!ファイアショット!」


 再び、無数のファイアショットがポッセに放たれた。


(クララさんの魔法を躱すのは、そこまで苦じゃなくなった。問題は詠唱魔法だ‥‥イオナから聞いたコツを思い出せ。言葉に一定の魔力を込めろ。多すぎても、少なすぎてもダメだ。)


「全ての生命の源よ。今、災害となりて‥‥」


 ポッセの体内の魔力が高まり始めた。


(あと少しだよ、ポッセ君!)


 ポッセに数個のファイアショットが迫るが、これを落ち着いて躱す。ポッセの詠唱が途切れることはなかった。


「害なす生命を絶滅させたまへ‥‥」


(あぁ‥‥いける。根拠はない、けど俺の本能が、心がいけると叫んでいる!)


理不尽な災害(ブラックハザード)!!」


 ズドドドド!‥‥シューーー。

 砂浜から黒い水が溢れ、全てのファイアショットを飲み込んだ。

 ポッセの前には、ファイアショットを吸収して大きくなった理不尽な災害(ブラックハザード)の球体がプカプカ浮かんでいた。


「っしゃぁぁぁ!!成功だ!」


「おめでとう、ポッセ君!」


(まさか、こんな短時間で成功するなんて‥‥!それに、最後の集中力は凄まじかった。初歩的な魔法とはいえ、私のファイアショットをあんなにあっさり躱すなんて)


 ポッセは疲れたせいか、ドサッと砂浜に倒れてしまった。倒れるのと同時に理不尽な災害(ブラックハザード)が消えた。


「あ〜もう立てねえや。少し休憩時間を多くしても大丈夫?」


「全然良いよ。今から冷たい物を買ってくるから日陰で休んでて、運び屋の風(キャリアウィンド)


 ポッセが運び屋の風(キャリアウィンド)でパラソルの下に運ばれて行く。


「あ〜楽ちん。ありがと〜」


「ふふっ、どういたしまして」


 クララは小走りで、買い物をしに行ってしまった。


「ふぅ〜日差しと日陰って、こんなに温度の差があるんだな。涼しい〜」


(これで少しは強くなれたかな。後は、詠唱魔法をスムーズに発動できるように頑張らなきゃ)


「動いたら腹が減ったな。何か食うか〜。ん?‥‥こ、これは!」


 ポッセは腹が減ったので、バックにある食べ物を取ろうとして、ある物に気づいてしまった。

 クララのバックの隙間から、ピンク色の生地が出ていた。


「も、もしかして下着‥‥!?ブハァ!」


 ポッセには刺激が強かったのか、血圧が上がり鼻血を出して倒れてしまった。


「くっ‥‥やっぱりポンコツじゃねえか!」


 ポッセがどうしようか迷っていると、クララが買い物から戻ってきた。


「お待たせ〜はい、これがポッセ君の分ね‥‥って鼻血が凄いよ!?どうしたの!?」


 クララは買ってきた飲み物を置いて、ポッセに回復魔法をかける。

 が、一向に鼻血が収まらない。それもそうだ。ポッセは別に怪我をしていないのだから。


「なんで効かないの〜!?今騎士団の人を呼ぶからね!」


 クララが去る前に、ポッセがクララの手を掴んだ。


「ま、待ってくれ!バ、ババババック‥‥」


「へ?バックに何かあるの?」


 クララはバックを確認しようと近づいた。そして気づく。気づいた。気づいてしまった!ポッセが鼻血を出した理由に!


「こ、これって‥‥全部見た!?」


 クララはピンク色の生地をバックに入れ、ポッセの方を向く。今のクララは、自分の髪に負けないくらい顔が真っ赤になっていた。


「み、見てない!出ていた部分だけ!」


「〜〜っ!!」


 クララは声にならない悲鳴をあげる。ポッセはこれまでの経験から、身の危険を感じて上体を後ろにそらした。


「エッチ!!」


 ズォォン!!


「はぅっ!」


 上体を後ろにそらした刹那‥‥ポッセの目の前に、クララの身体強化された張り手が通り過ぎた。張り手が速すぎて、風圧でポッセの前髪が浮かんだ。


「‥‥‥」


「‥‥‥」


 ポッセとクララに静寂が訪れる。しかし、気まずさはなかった。

 クララは恥ずかしさと、下着を見られた怒りで。ポッセは下着を見た恥ずかしさと恐怖で震えていた。

 2人の共通点は羞恥心だけだった。


「そ、その‥‥可愛い下着を付けてるんですね‥‥良いと思います!」


 ポッセは励ますために、鼻を抑えながらもう片方の手で親指を上げた。

 しかし、クララの震えは止まらない。ポッセの震えと鼻血も止まらなかった。


「‥‥カ」 


「え、なんて?」


「バカって言ったの!ファイアショット!!」


 ポッセは不意打ちのファイアショットを、ありえない反射神経で躱す。

 特訓の成果が出ていた。


「あ、危ねえ‥‥何すんだ!」


「何すんだ!じゃないよ〜!ポッセ君には気遣うという事ができないの!?このバカバカバカ!」


 クララはボカボカと、ポッセの胸板を割と強めに叩く。


「カッチーーン!俺だって見たくて見たわけじゃねえよ!リンクに可愛い下着を付けてるってバラすからな!」


「は?」


「ひっ!!別に下着を見られるより、ヤバいことをしてるんだから良いだろ!」


 クララは、普段から想像できないくらい低い声が出てきた。ポッセがクララの顔を、恐る恐る見ると顔が歪んでいた。その顔は、まるで鬼神を想像させるようだった。

 ジリ‥‥ジリジリ‥‥。ポッセが後ずさると、クララはその分距離を詰める。


「ヤ、ヤバい!」


 ダッ!!ポッセは不意に、逃げ出した。クララはそれを直ぐに追い、ファイアショットを撃ちまくる。


「待て〜!今度という今度は許さないんだから!ファイアショット、ファイアショット、ファイアショットォォ!!」


「ひぃ〜!!し、死んじまう!全ての生命の源よ。今、災害となりて、害なす生命を絶滅させたまへ!理不尽な災害(ブラックハザード)ォォ!!」


 ポッセは恐怖から、驚くべき集中力を発揮して、早口での詠唱魔法を成功させた。

 理不尽な災害(ブラックハザード)は、ポッセをファイアショットから守り吸収していく。


「こんな時に成功させて!馬鹿にしてるの!?ファイアランス!」


 理不尽な災害(ブラックハザード)にファイアランスが当たると、少しだけ蒸発した。

 それを見たポッセは、走る速度を上げる。


「し、してない!信じてくれ〜!!」


「じゃあ止まってよ!ファイアランス!!」


「それなら、魔法を止めやがれ!」


「いや!」


「俺も嫌ぁぁぁ!!!」


 日が沈むまで、ポッセとクララの物騒な追いかけっこは続いた。第三者から見たら、狩られる者と狩る者に見えるだろう。

 ポッセはこの追いかけっこがきっかけで、動きながらの詠唱魔法をマスターした。

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