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31話

 クララさんとジュンと別れ、俺とアリスはいつもの帰り道を歩いていた。


「私、リン君に謝らないといけない事があるの」


「え?アリスに何かされたっけ?」


「うん。序列戦で賭けをしたの」


 そんな事をしてたのか‥‥まあ、アリスの事だから危ない賭けはしてないだろう。


「賭け?どんな内容だ?」


「勝者は敗者に一個だけ知りたい事を聞くって内容。相手はリン君の情報を漏らした教師を賭けて、私はリン君の弱点について賭けたの」


「ああ、そんな事か‥‥全然良いぞ」


「やっぱ怒ってるよね‥‥え?」


「だから許すって。そもそも怒ってないけどな」


「何でそんな軽いの!?弱点って結構大事じゃない!?」


「だって勝ったから結果オーライじゃん。それに負けたとしても怒んなかったと思うぞ」


「そうだけどさ‥‥怒らないのは何で?」


 アリスには普段からお世話になってるし、別に自分で悪い事をしたら反省できる奴だから怒る必要がないんだよな〜。アリスが危ない目にあってない限り怒る事は一生ないな。


「だってアリスだし」


「え!?ど、どう意味!?」


「ひーみつ。それより俺の情報を漏らした教師を教えてくれよ」


「むぅ‥‥名前はクルト・バース。ちょっと細くて身長とプライドが高い人。わかる?」


「あぁ、やっぱそいつだったのか。学園長と話してたから大体わかるよ」


「そっか‥‥情報を漏らした証拠を貰ったからこれで罰せられるかな?」


「いや、まだ軽いな。たかが情報を漏らしただけだ、注意で終わるだろ。まだそのカードは温存しておきたい」


「なら放っておくの?」


「おう。多分、今後も俺が不利になる行動をすると思う。そこを抑えたい」


「なるほど。じゃあ泳がせとく感じ?」


「そうそう。餌をたらふく食わせないとな」


「あっ、今リン君悪い顔してるよ?」


「アリスも中々ヤバい顔をしているぞ?」


「えっ!嘘!?」


「うっそーーん」


「もう!リン君の意地悪!」


 ああ、普段の日常に戻ったって感じがするな〜平和が1番‥‥って思った矢先にこれか‥‥勘弁してくれよ。


「‥‥アリス」


「うん、後ろの人だね」


 俺とアリスの十数メートル後ろに、人の気配がした。ねっとりした視線が気持ち悪いくらい感じるんだが、尾行する気があるのか?


「同時に振り向くぞ」


「うん」


「せーのっ!」


 バッ!

 振り向くと黒いローブを着た長身の人がいた。ブカブカのローブだから体型がわからねえな、多分男か?それにしても見るからに怪しい奴だな‥‥ん?あれは‥‥丁度良いな。


「あの、さっきから私達について来てますけど何か用ですか?」


 アリスが用件を聞くと、ローブ野郎がいきなり魔法を放ってきた。


「チッ!ウィンドカッター!」


 俺は鈴を出さなかったため、魔法が消せないので、俺とアリスはウィンドカッターをしゃがんで避ける。


「今の声は‥‥」


「クルトで間違いないな」


 しっかし、めちゃくちゃ嫌われてんな〜普通、無能ってだけでプライベートの時に攻撃までしてくるか?


「ミストカーテン‥‥」


 クルトらしき人物は霧に包まれて姿が見えなくなった。


「逃げたね。今なら追いつくけど」


「いや、追わなくていい」


「え?追わないの?」


「アイツがウィンドカッターを放つ前に、空に魔法陣があった。光っても何も反応がない所、恐らく学園長の空間魔法だな」


「よく気づいたね」


「この前のお見舞いの時にちょっとな。恐らく今ので証拠はゲットできたな。アイツが逃げる時に顔も撮ってあるだろうし」


「またカードが増えたね!」


「ああ、アイツの悪事をバラす日も大体予想がついている」


「本当!?いつなの?」


「今年の学園が用意する方の序列戦だ」


「序列戦でやっちゃうの?大丈夫かな〜」


「逃げ場を無くすなら、ほぼ全ての生徒が見る序列戦はうってつけだからな。まあ、あくまでも俺の予想だが」


「話を聞いてたら当たってそうな気がする‥‥」


「もう俺らにはできる事はない。のんびり過ごそうぜ」


「それもそうだね」


 そのまま無言で歩いていると、空から何かが落ちて俺に当たった。


「いって!?」


「大丈夫!?これは‥‥灰色の鱗?」


「エンシェントドラゴンの鱗じゃねえか!まさか!」


 嫌な予感がして上を見ると、そこにはバルーンスライムがいた。もしかしてあの時の奴か?


「何でこんな所にバルーンスライムがいるの!?」


「アリス、攻撃するな。もしかしてあの時のバルーンスライムか?おーい!こっちに来いよ!」


 バルーンスライムがフヨフヨと降りてくる。俺の前まで来ると体が萎み、普通のスライムと同じ大きさになった。


「もしかしてこれを俺に届けるために来てくれたのか?」


 バルーンスライムが肯定するようにプルプル震える。


「ありがとな!お前は賢いなあ」


 俺はバルーンスライムを揉みしだく。

 き、気持ちいい。冷んやりしてるしこのプルプルが堪んねえ‥‥‥

 バルーンスライムは喜んでいるのか、体を激しくプルプルさせた。


「可愛いな〜そうだ!俺と一緒に暮らそうぜ!」


「リン君!?確かにこの子は他のモンスターと違って賢しこいかもしれないけど大丈夫なの!?」


「大丈夫だろ!俺が前に乗った時も抵抗しなかったし。なあ?」


 返事をするようにプルプルするバルーンスライム。可愛いなぁコイツゥ!


「本当に賢いんだね‥‥私も触っていいかな?」


「おう、ほらよ」


 俺はアリスの前にバルーンスライムを出す。


「そ、それじゃあ触るね?」


 アリスがバルーンスライムを触ろうとしたその時。

 プルンッ!

 バルーンスライムの一部が触手の形になりアリスの手を弾く。


「何で!?」


「好感度が足りないんじゃないか?」


「むぅ。この子可愛くない!」


「そんな事言うなよ。かわいそうじゃないか。なあ?」


 俺に抱きしめられている、バルーンスライムが小刻みにプルプル震える。やっぱり可愛いな!


「羨ましい‥‥‥じゃなくて、露骨に媚びてるよ!リン君、目を覚まして!」


「大丈夫だって。それより、一々バルーンスライムって言うのも面倒だな。うーん‥‥バルーンから取ってルンちゃんで良いか?」


 バルーンスライムが縦に小刻みにプルプルしてる。うん、大丈夫そうだな。


「よし!これからよろしくな、ルンちゃん!」


 ルンちゃんが俺の胸の中で、器用に跳ねる。くっ、可愛すぎるぜ!


「私でさえあだ名で呼んでもらえてないのにぃ‥‥‥」


 アリスがショボンとしているが、どうしたんだろう。


 家に帰ると両親に心配されたが、元気だと伝えると安心していた。ついでにルンちゃんを紹介したらめちゃくちゃ可愛がってたな‥‥父さんが1番はしゃいでたし。明日は学園長にルンちゃんの件とクルトの件について話に行くか。



 ーーーーーー


 ブカブカのローブを来た男は、路地裏に逃げ込んでいた。


「ハァ、ハァ‥‥くそっ、なんで尾行していたのがバレたんだ。まあ良い、顔は見られていないから正体はバレていまい」


 ローブを着ている男は、フードを取った。正体はリンクとアリスの予想通り、クルト・バースであった。


「チッ、あの無能に少しずつ怪我を負わせて精神的に追い詰めるはずだったのに。何故アリス・ヴォルグが無能なんかと行動しているんだ‥‥弱みを握られているのか?くっ、学園に戻るか」


 そう言い、クルトは学園へと向かった。自分が学園長に監視されていたと気づかずに。


 その頃、ノットは自分の部屋である魔道具を弄っていた。


「ふむ、これでクルトに関しての証拠は問題ないな。しかし、この記録保存機と言ったか‥‥便利な魔道具が開発されたのぅ‥‥私の空間魔法と相性が良すぎるな。今度学園に、何個か設置するか」


 記録保存機とは、光魔法によりその場の光景を記録し、紙や鉄などの物に記録したものを印刷する魔道具だ。魔力を流せば誰でも使えるが、売値が高いため、今は貴族など上級国民にしか出回っていない。


「くっくっく。エンシェントドラゴンとの戦いで魔法陣を動かせるようになったから、空間内操作(スペースアクセス)で色々な物を撮り放題だな!次は何を撮ろうかな」


 ノットはクルトの証拠を掴むために最近購入したのだが、思っていたよりも記録を保存するのが楽しくて普通に私情で使っていた。

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