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石蕗学園物語  作者: 透華
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夏休みまで 1

仕事が忙しくなるので更新が遅くなりますm(_ _)m


 結局、クソ女は2日自宅謹慎という軽すぎる処罰を受け学園に戻ってきた。相変わらず裏で蓬生ほうしょう家が動いているのか、はたまた監視をしていたにも関わらず逃げられたという風紀委員にとっての汚点を周囲に隠し易くするためなのかのどちらかだとは思うのだが。

 その代わりと言ってはなんだが監視役に四六時中――それこそ登下校まで監視されることになったらしい。監視役は予想通り倍に増え、今までは女生徒だけだったメンバーはいざという時に実力行使に出られるように男子生徒も混ざり男女混成チームとなったようだ。

 周りはそんな風紀委員の過度とも言える対応に対してクソ女がまた何かやらかして風紀委員の逆鱗にふれただけだと思っているらしく風紀委員がぽかをして、それを隠す――または、二度と同じ轍を踏まないようにしているとは考えていないらしい。

 ちなみに、監視役を倍に増やせた理由はこの学園の委員会の特殊性にある。クラス委員は委員長と副委員長と男女2名と決まっているが、他の委員会(風紀委員や文化委員など)についてはクラスから最低2人は出すということくらいしか決まりがない。つまり、風紀委員がクラスに4、5人いてもおかしくないのだ。

 委員会は部活と関係ないから内申点を上げる為に部活と委員会に入る人間が割と多い。まぁ。そんな上限がない決め方のせいで体育祭の時は苦労したわけだが。今となっては懐かしい思い出だ。

 そうそう。クソ女と言えば「この世界は自分を主役にしたゲームの世界」だと柚木ゆずき先輩に言い切ったらしい。その話を聞いたときは木賊とくさ先輩と呆れに呆れたものだ。まさかバカ正直に言うとは思わなかった。

 案の定柚木先輩には「頭のおかしい夢見過ぎ自己中女」と認識されたようだ。転生者だと隠してて本当によかったと思う。ただ、柚木先輩はクソ女の発言に違和感を覚えたのは確からしく今まで以上にクソ女の周辺を探っているらしい。

 まぁ。私や木賊先輩はクソ女が攻略キャラの情報を知っていることをサラリと流せてしまえたが、事情を知らない人間にしてみれば、それは気味の悪い話だろう。

 なんせ、この学園に通っている人間の中でもトップクラスの家柄を持つ人間の情報がどこからか流れているのだから。女たらし先輩にも話を聞いたらしいが彼は「何故、姫花ひめかが彼らについて詳しいのか知らない」と言い続けているらしい。

 恐らく、それは本当だ。以前の桃園ももぞの姫花なら他校の生徒会役員について知る必要もなかったから聞かなかっただろうし、女たらし先輩もわざわざ話したりしなかっただろう。クソ女に関しては聞かずとも知っているのだから、やっぱり女たらし先輩も聞かなかっただろう。

 何というか詰めが甘い。いや、クソ女は端から転生者だと隠すつもりがなかっただけかもしれないな。クソ女にしてみれば知られて困ることじゃなかったんだろう。だから私のように裏工作というか「知っていることをわざわざ聞いて疑惑を遠ざける」なんて面倒なマネをしなかったのだ。

 柚木先輩の話を聞いて 改めて分かったがクソ女は此処を現実だと本当に認識していないのだろう。今までの軽率すぎる行動や発言や問題行為はやはりそこからか。何故クソ女が此処を現実だと認識出来ないのかは全く理解出来ないが。

 だって、何も食べなければお腹が減るし、眠らなければ眠くなる。匂いもかげるし何かに触れたら感触もある。それだけで夢ではないと簡単に理解出来るはずだ。実際、私はそれらを感じたから、この世界は夢でも何でもなく現実だと理解したわけだしな。

 そうそう。クソ女に関する実験の結果はまだよく分からない。というのも謹慎が開けてから一度もクソ女と遭遇していないからだ。だが、成果として期待していたものについては今回は失敗だと分かった。

 私が期待していたのは「攻略キャラからの拒絶という精神的なショックによってクソ女が引っ込み桃園姫花が出て来る」という結果だ。水瀬みずせたちばな龍崎りゅうざきの言葉はクソ女に怒りを植え付けたらしいが、凄まじいショックを受けるほどではなかったようだ。

 少しだけ残念ではあるが、攻略キャラの中ではあの3人はわりかし優しい人間に入るだろう。橘はゲーム設定から離れているのか微妙な気もしないでもないが。確かゲーム設定なら橘は甘えたな後輩だったはずだ。そこらへんはクソ女と“女主人公”の性格の差による対応の違いといえるだろう。冷たいというか、キツいのはゲーム設定上では蒼依あおい烏羽からすば先生、生徒会長かな。

 ただ、実際に関わってみると生徒会長は優しい部類に入るような気がする。もしかしたら蒼依や烏羽先生のように身内には甘いだけかもしれないが。まぁ。キツいとは言ったが蒼依と烏羽先生は罵詈雑言を叩きつけるというより正論を語り現実を突きつけるタイプというだけだ。

 身内以外に対しては冷めてる部分があるのは事実だが。あの2人は身内以外には結構無関心だからな。正しく言うなら無関心ではないか。ただ蒼依は友人や知人としてより、まず人は被写体として見るし、烏羽先生は生徒は生徒と線を引いて入れ込まないのだ。

 クソ女があの2人の逆鱗にふれてくれたら精神的ショックを与えるのは手っ取り早いかもしれないが、あの2人は滅多にキレないからなぁ。よっぽどのことをやらかしてくれないと無理かもしれない。

 いや。待てよ。確か柚木先輩から聞いた話によるとクソ女は「まともな対応をするのは若竹わかたけ先生くらい」だと言っていたんだよな。ということは、その若竹先生にクソ女を裏切ってもらった方が効果的かもしれないな。

 これは、若竹先生を中心に計画を練った方がいいか。だが、若竹先生を使うとなると少し面倒くさいことになるな。蒼依やかなめさんを動かした方が私にしてみれば楽か。若竹先生とはあんまり親しくないし。ぶっちゃけ、積極的には関わらないようにして来たから性格ももう一歩分からないからな。

 でも、何をするにしても一応木賊先輩には話を通しておいた方がいいか。如何にも今思いつきました的な? 本当は木賊先輩に対して私が転生者だと隠す必要なんてないのかもしれないが、やっぱりなぎちゃんに言っていないことを木賊先輩にあかしたくないんだよなぁ。

 話したほうが動きやすいかもしれないけど、1人に秘密をあかせば何処からバレるか分からないし。リスクは少ない方がいい。別に木賊先輩が口が軽い人間ってわけではないけど、誰にだって1人くらいはついつい口が軽くなってしまう相手が居てもおかしくはない。

 木賊先輩の場合、それは篠原しのはら先輩であるはずだ。篠原先輩が計算高いタイプってことくらい知っているから、篠原先輩に知られるのは避けたい。あの人にバレたら蒼依や生徒会役員、下手したら特別委員会役員にまで話がいきかねないし。

 上手く手駒を動かして1人で行動した方が労力はかかるが、精神的な負担は少なくてすむかもしれないな。なんて、自嘲めいた笑みを浮かべながら私は食事の用意をはじめた。

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