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石蕗学園物語  作者: 透華
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密談2

長らくお待たせいたしました!

多忙ゆえ、続きは今暫くお待ちください。

『しかし、“女主人公”の関係者に色持ちが居ないからって油断していたよ』


「ああ、やっぱり、名前に色が入ってるって何か意味があったんですね……」


 やっと、ここら辺の話が聞けるな。別に知らなくても困らないだろうけどゲームの知識は知っておくにこしたことはないだろう。


『うん。って、そういえば、“色持ち”について、ちゃんと説明してなかったね。“色持ち”は主にメインキャラクターないし、それに近い人物の共通点を意味するんだ。雪城ゆきしろさんはある意味隠しキャラ的な子だったから、烏羽からすば先生ルートか“男主人公”ルート以外ではフルネームが出てこなかったんだよね』


「えっ。でも、“雪城瑠璃ゆきしろ るり”は“悪役令嬢”の取り巻きとして登場はしてたんですよね? 会長達なら兎も角“悪役令嬢”への見方が変わるっていう“水瀬颯みずせ そう”ルートでもフルネームが出てこないんですか?」


 隠しキャラとは知ってはいたが、そんなに、徹底して隠しキャラ扱いされていたとは、知らなかったな。水瀬のルートですら、名前が出てこないとは、ちょっと隠しすぎじゃないか?


『そうなんだよ。さっきの2人以外のルートは名字だけの登場なんだよね。まぁ。此処もゲームと違う点になるんだけど、“悪役令嬢”も“男主人公”も取り巻きを名前で呼ばないんだよ』


「じゃあ、名字で呼んでるんですか?」


 なんか、なぎちゃんに名字で呼ばれてるとか、想像できない。というより、何か距離をおかれてる気がして寂しいだろうな。ただ、それ以上に蒼依あおいに他人行儀な態度をとられるとか、違和感ありすぎて気味が悪い。


『あー。凄く言いにくいんだけど、そもそも“悪役令嬢”と“雪城瑠璃”の会話すらゲーム内には存在しないんだ。だから、ゲーム内での2人の関係は実際のところ、よく分からないんだよね。ただ言えることは“雪城瑠璃”が登場するときは殆ど“悪役令嬢”の傍に居たし、“悪役令嬢”はそれを受け入れていたということだけだね。あと、“男主人公”は“雪城瑠璃”をゲーム内では、あの人と呼んでいて、誰について話してるのか分からないように描写しているんだ。流石に“雪城瑠璃”と会話しているときは、名前を呼んでいるけどね』


 なるほど、本当に徹底して、隠しているな。だが、ここまで隠されるということは、おそらく“雪城瑠璃”の大元の設定は、私とそんなに変わらないと考えるべきだろうな。かなめさんは別として凪ちゃんと蒼依に対しては“私”が動いた結果として今の関係が成り立っているが、恐らく変えようと動かなければ微妙な関係になってただろうし。


「はあ。それは、どちらとも、仲は悪くも良くもないって感じなんですかね」


『どうなんだろうね。ゲームは基本的に一人称で進むから、そういう事情はよく分からないんだよね。こんなことになるなら、“男主人公”で、プレイしておけばよかったな。そうすれば、少なくとも柊関連については、悩みが少なくなってただろうに……』


「それは、どうでしょうね。木賊とくさ先輩のおっしゃるとおりなら、蒼依は確かに“男主人公”という役割の存在なんでしょうけど、既に“男主人公”とは違う人生を生きているみたいですし、“男主人公”の思考と蒼依の思考はイコールで結びつくことはないんじゃないですか? 寧ろさっきの木賊先輩の言葉を聞く限り先入観無しに見られるということは利点になると思いますよ」


『さっきの、私の言葉って?』


「『“女主人公”の関係者に“色持ち”が居なかったから油断した』って、おっしゃっていたじゃないですか。それって、つまり、先入観を持って決めつけていたから、違う可能性まで考えが及ばなかったということでしょう?」


 本当は面倒だから、こんなお節介はしたくなかったが、今後より有力な情報を得るためには先入観に囚われた状態でクソ女を見られると困るんだよな。


『……はぁ。雪城さんは、なかなか手厳しいね。でも、確かに君の言う通りだ。私はゲームの知識に頼りすぎているのかもしれないね。これじゃ、桃園さんのことをどうこう言えないな』


「いえ。桃園さんは別枠でしょう。彼女は異常だと思いますよ。兎も角、木賊先輩は先入観なしに蒼依を見てください。あっ、でも、何かゲームとやらの基本情報と違う点があったら教えてくださるとありがたいですね」


『分かったよ。……そういえば、ゲームと違う点と言われて思ったんだけど、水瀬みずせさんとの関係はゲームとは違う気がするね』


「どういうことですか?」


 私達の関係同様、凪ちゃんと蒼依の関係は私を通して成り立っている部分がある。私がいなければあの2人はそこまで悪い関係になることはなかったはずだ。ということは、状況の悪化に一役かってしまったのかもしれないな。


『ゲーム上での2人は冷戦状態って感じだったんだよね。今と違って会話らしい会話をしないっていうか、お互いにピリピリしてたっぽいんだ』


「冷戦状態って、もしかして一年の事件が理由としてあるんですかね? 凪ちゃんの立ち位置がゲームでも同じなら蒼依は事件の原因の一つにもなりますし」


 一つというより、考えようによっては大元だ。一年前の事件は蒼依が生徒会役員を辞退したことがキッカケみたいなところがあったし。そのおかげで、私の時は蒼依は積極的に手を貸してくれたわけだが。


『恐らくね。どのルートでも“男主人公”は生徒会役員として存在していないから』


「そうでしょうね。蒼依が生徒会役員になったらゲームでも学園のパワーバランス的にややこしいことこの上ないですし。まぁ。ハーレム作ってなければ話は変わりますけど」


『確かにね。あと、柊について違いがあるとすれば、君との関係かな。ゲーム内ではあんなに親しげに会話してなかったし』


「なるほど」


 まぁ。そりゃそうだろうな。私と蒼依の関係は色々と面倒だし。


「そういえば、蒼依が“男主人公”なら今は、えーとルート? としては何になるんですか? やっぱりハーレム?」


『……いや。私もつい最近まではハーレムルートだと思っていたんだが、その可能性はかなり低くなったよ』


「そうなんですか?」


 はて? 何かあっただろうか?


朽葉くちはさんと刈安かりやすさんへの対応が、ね。 ハーレムルートは隠しキャラを除く攻略対象からの一定以上の好感度を維持し続けなきゃいけないんだよ。だけど、柊の態度は彼女達からの好感度をマイナスにしたはずだ。それなら、もうハーレムルートを進むことはない。これは、どちらの主人公でも同じだから、今後、柊がハーレムを桃園さんが逆ハーレムを作るのはゲームシステム上では有り得ない。それこそ、転生物に有りがちな補正やらがない限りはね。現状では、これまた、有りがちな修正力が働いたとしてもゲームシステムからみたら有り得ないことではないから問題ないだろうね。まぁ。ゲームシステム云々言うなら、元々“女主人公”には逆ハーレムルートは存在しないから、もし修正力やらが働いても生徒会総崩れみたいなことにはならないから安心してかまわないよ』


 安心か。出来るような出来ないような理由だな。木賊先輩の話はゲームシステム上はあり得ないということな訳だが、既に私や木賊先輩、クソ女などの転生者という名の異分子が存在している以上、他の異分子が存在しないとは言いきれない。それこそ、木賊先輩の記憶が突然戻ったように前ぶれなく人間関係がゲーム設定通りになる可能性だってあるのだ。

 私からしてみたら、ここがゲームと似て非なる世界--いわゆるパラレルワールドだという証明でもないと安心には程遠い。


「なんか、変わってますね。片方にはハーレムルートがあって片方にはないとか」


『妙なところで現実的なんだろうね。“男主人公”は元々、生徒会に入るのが正しいってレベルの家柄で“女主人公”は蓬生ほうしょう家の血縁関係者であるとほのめかされてても、あくまで庶民だから。それに、ほのめかすのもトゥルーエンドでだしね』


 かつての友人の言葉と似ている。皆、似たり寄ったりな感想を抱くものなんだろうか。まぁ。今は別にいいか。


「しかし、話を聞くと、ますます不思議ですね。どうして“女主人公”は学園に入学できたんでしょうか? 普通、絶縁している実家が上流階級として権力を持っている学園に子供を入学させようとします? 蓬生家としても目障りでしょうし、何かしら理由つけて入学できなくするとかしそうですけど」


『うーん。それはもうゲームだからとしか言えないね。でも、雪城さんの疑問は最もではある。兎に角、桃園さんの近くに転生者がいる可能性は高いから、なにがなんでも突き止めるよ』


「その人が何を考えて行動したかによって対応が変わってきますしね。私達にとって有益な方だったらありがたいです」


 その転生者がゲームの世界と認識した上で行動したのか、ゲームの認識はなく自分や周囲を幸福にするために行動した結果、今に至るのかではかなり違う。前者ならクソ女をどうしたいのかにもよるが協力関係を築きやすいだろう。秘密の共有というのは結構効果があるからな。クソ女を利用して生徒会役員の家との結び付きを強めたいと思っていたとしても、今のクソ女を見て玉の輿を目指すなんて馬鹿はいないだろうし。クソ女ではなく桃園姫花の幸福を願うなら仲間に引き入れやすい。後者でも協力関係は築けるだろうが、説明が面倒だし、連帯が取りにくいから、出来ればゲームの知識がある前者を望みたい。


「そういえば、桃園さんの身近にいる方って、そんなにゲームに登場するんですか? ゲームに登場していない方が転生者だった場合、分からなくなりませんか?」


 木賊先輩のやる気に水をさす気はないが、一応聞いておかないとな。もし、登場キャラが多いなら、それだけ警戒しなきゃならないわけだし。


『いや、ちゃんと登場するのは母親と父親くらいだね。ゲームに登場していなくても、ゲームと今の桃園家の違いや蓬生家の人間の価値観を変えられる人間を探せばいいから大丈夫だよ』


「そうなんですか……。 それなら、ゲームと重ね合わせて現状を考えると、母親が転生者である確率が高いわけですね。 蓬生家の人間である父親なら内側からの意識改革が可能なわけですが、桃園姓を名乗っている点に謎が残りますし、母親なら嫁としての行動で蓬生家に影響を与えたと考えると筋が通る気がします」


『なるほどね。 それなら、母親から探ってみるよ。 長話に付き合わせて悪かった。 進展があったら報告するよ。

それじゃ、また、学校で』


「お気になさらず。 はい、学校でお会いしましょう」


 ブツリと電話が切れる音と共にボイスレコーダーもとめる。ハンズフリーにしていたのだから録音は出来ているだろう。クソ女の母親が転生者だとしても、恐らくゲームの知識はないだろうな。あると仮定すると、普通の親ならば娘を別の学校に入れただろうし。玉の輿狙いをする必要なんて現状ないわけだしな。




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