第2節:帰路の航海、深まる絆
本日2本目です。
帰路の航海は、行きとは打って変わって穏やかなものだった。
西へ向かう風を背に受け、『黒き聖母号』は滑るように波を切って進む。
船内の空気も、どこか柔らかく、和やかだった。
特に変化が顕著だったのは、船長であるマリアだ。
「……ミツ。お茶を淹れたぞ」
船長室を訪れた光圀に、マリアがカップを差し出す。
これまでは軍服の第一ボタンまでしっかり留めていた彼女だが、今は少し胸元を緩め、燃えるような赤髪も編み込まずにふわりと下ろしている。
その仕草には、海賊王としての威圧感よりも、年相応の女性らしい恥じらいが混ざっていた。
「おう、サンキューな。……お、今日は甘いな」
「……お前が、砂糖を入れた方が好きだと言ったからだ」
マリアはそっぽを向きながら、少し頬を赤らめる。
そんな二人を、船員たちもニヤニヤと見守っていた。
「おいおい、船長があんな顔するなんてな」
「東洋の若旦那に完全に骨抜きじゃねぇか。こりゃあ、俺たちも扶桑国の言葉を覚えなきゃなんねぇな」
からかい半分、本気半分の船員たちを、助さんが「まあまあ」と酒を注いで黙らせるのが日課になっていた。
だが、穏やかな日々が続くほど、確実に「その時」は近づいていた。
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