第5章:星降る夜の告白、あるいは海賊王の涙 第1節:インカの夜明けと、英雄たち
本日は2本投稿いたします。まずは1本目です。
インカの都に、静かな朝が訪れた。
圧政を敷いていた総督バルデスは、助さんの手によって幾重にも縛り上げられ、さらに格さんによって頑丈なオーク材の樽に詰め込まれていた。
彼は大罪人として『黒き聖母号』の船底に転がされ、スペイン本国で裁きを受けることになる。
「本当に、何と御礼を申し上げればよいか……」
原住民の長老が、深く頭を下げる。
「気にすんな。俺は俺の気に食わねぇ奴をぶっ飛ばしただけだ。……これからは、自分たちでこの国を立て直すんだな」
光圀はニカっと笑い、長老の手を固く握り返した。
出航の準備は整っていた。
光圀たちの『神龍丸』は無事だったが、さすがに自力で太平洋を横断して帰るわけにはいかない。
そのため、『黒き聖母号』に曳航される形で、扶桑国近海まで送り届けてもらう手はずとなっていた。
「助、準備はどうだ」
「万端です、若殿」
助さんの手には、何やら怪しげな植物の束と、小瓶がいくつも握られていた。
「インカの呪術医から、未知の薬草と毒の調合を教わりました。……これで、私の暗器もさらに『面白く』なります」
涼しい顔で恐ろしいことを言う従者に、光圀は苦笑する。
「格はどうした?」
「あちらです」
光圀が視線を向けると、格さんは甲板の隅で、羊皮紙の束を抱えて老航海長ペドロと何やら熱心に語り合っていた。
「ペドロ殿! このインカの星読みの図……西洋の天文学と組み合わせれば、さらに正確な暦が作れますぞ!」
「フッ……お前サン、船乗りより学者に向いてるゼ」
言葉の壁を越え、二人の間には堅い絆が結ばれていた。
「……たく。どいつもこいつもしっかり土産話を仕入れやがって」
光圀は肩をすくめたが、その顔は満足げだった。
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