第89話 サッカーの練習をしてみた
第89話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル5
職業 怪盗紳士
HP 12(+18257)
MP 0 (+17831)
力 12(+300)
防御外皮 12(+4078)
知力 10(+17881)
速さ 12(+4034)
器用さ 16(+15)
スキル スチール(ユニーク)レベル6(16個)
気配察知(30)
スライムの胃袋(29704) レベル4
消化液(9235) レベル3
メタル化1(体を金属に変える。消費MP2)
水魔法 スライムバレット(1088) レベル3
火魔法 ファイアバレット(2410) レベル3
装備 なし
アイテム リュックサック 腕時計
金 五十八万7千円
口座 二百五十万円
証券口座 五百万円
端まで来たところで、俺はボールを足裏で止めた。
軽く息を吐く。
――よし。
つま先でコツンと前に押し出し、そのまま元いた方へドリブルで引き返す。
ボールが足から離れないように、丁寧に。
何度も往復をしていれば、ドリブルは上手くなるだろう。
徐々にスピードを上げる。
歩きから早歩き、小走りへ。
ボールは足元に吸いついてくる。
さらに加速。
地面を蹴る力を強めると同時に、ボールへのタッチも細かく刻む。
高速ドリブル。
それでもボールは、まるで足の一部みたいに、ぴたりとついてくる。
足の内側、外側、甲。
無意識に使い分けながら、細かく触っている。
さすがは速さ4046、器用さ31だぜ。
身体が、勝手に最適解を選んでいる。
もっと速く走れるが、全速力でのドリブル練習をするわけにはいかないのが、嘆かわしいところだ。
プロでも、ここまでのスピードでボールをコントロールできるやつはそういないはずだと自己満足。
これはセレクションで大きなアピールポイントになりそうだぞ!
ドリブル練習に続いてリフティングの練習。
右足でボールをバック回転させ足の甲の上に引き寄せる――そして下からすくい上げるように蹴り上げる。
そこからは、何回続けて蹴り上げられるかだ。
1回、2回、3回でボールがぶれ、地面に落ちた。
……まあ、始めはこんなもんか。
再度チャレンジ。
1回、2回、3回!
ボールが右に大きくそれて遠くに飛んでいってしまった。
急いで拾いに行く。
大きく上に蹴った方が、回り込む余裕があるのかな?
さっきより、ボールを高めに上げるようにして再挑戦。
1回、2回、3回!
3回目でそらせてしまった。
甲の当たる角度が悪いから右に飛ばしてしまうのかな?
足の甲が真上を向くように足首に意識を向ける……足の甲で、ラケットの平面を作るように。
ボールが少し真上に上がりだしたような気がした。
1回、2回、3回、4回、5回…………少しボールがそれたが、とっさに1歩踏み出す。
とたんに、甲で作った平面が傾いた。
蹴ったボールは右前に弾かれる。
すかさず2歩前進して追いつき、少し大きめに蹴り上げる。
落ちてくるまでに余裕ができた――きっちり平面を作って蹴り上げる。
ボールは真上に上がり、俺は体勢を立て直す。
8! 9回、10回、11、12、13――
呼吸が整い視線が安定する。
ボールの軌道が、はっきりと見える。
落下位置が、予測できる。
コツは……つかんだか?
器用さのステータスがものをいったのか、そこからは簡単だった。
コンスタントに20回以上続くようになる。
よし、今度は左足で。
1回、2回、3……
左足のほうが難しいな。
練習を続けるうちに、左足でもコンスタントに20回は続くようになった。
よし――リフティングも初日としては、こんなもんか。
いずれ100回でも200回でも続くように練習しよう。
ふっと、笑みがこぼれた。
いけそうじゃん。
次はヘディングだ。
ボールを上に放り投げ、落ちてきたそれを、体をそらせタイミングを合わせ、額で真上に打ち上げる。
目をつぶらず、よく見て額の中心をしっかり当てるのがコツだ。
頭頂部で突き上げたのでは、ボールもよく見えず、コントロールするための平面ができないため、ボールがどこに飛ぶか分からない。
平らな面を使ってボールをコントロールする。
それはリフティングでも同じだ。
ポンポンと額の上のボールを見つめながら突き上げる。
初めから、10回は続いた。
その後すぐ、コンスタントに30回はできるようになった。
ヘディングのほうが、俺には簡単みたいだ。
「……すげえ」
かわいい声。
ボールを大きく突きあげ、横を見ると、子供たちが立ち止まって見ていた。
ベンチに座っていたおっさんも、新聞を下ろしてこっちを見ている。
なんだか恥ずかしいな。
軽くボールをキャッチして、俺は練習をやめた。
もうすぐ日が沈み出す。
沈みだしたら暗くなるのはあっという間だ。
ボールを抱えて広場を離れる。
サッカーの基礎技術ってこれだけでいいのかな…………やっぱりシュートができないとね。
俺の場合、強く蹴りすぎてボールを破裂させてしまう恐れがある。
遠くに蹴り飛ばす時も同様だ。
ここで練習するにしても人目がある時にはやりにくい。
けっこう夜遅くなっても、公園内にはカップルとかがいたりするんだよね。
明け方か…………人に見られず練習するのは明け方しかないな。
あとは――パスを受けたり、相手からボールを奪ったり、相手を抜き去ったり?
そういう練習って、相手がいないとできないじゃん?
うーん。
とりあえず、できないことは後回しだな。
一人で練習できるか、ネットで調べてみよう。
基礎練習だからね。
一人でやれることは、やっておこう。
ユーチューブで調べれば、たぶん動画で解説されてるよね。
言葉で説明されたってよく分からないけど、動画で見れればきっとよくわかるはずだ。
セレクションで合格するには、基礎くらいは人並みに、いや、小さいころから練習してきた人たちと、同じくらいにはできないといけないと思う。
けっこうサッカーって、いろいろやることがあるかもしれない。
今晩サッカーの試合がテレビ中継されてればいいんだけどな。
フィールド内で、どう動けばいいのかだって、今の俺って全然わかってないんだよね。
ルールもちゃんとは知らないし。
あれれ、なんか不安になってきたぞ。
公園を出て石神中学校の前を通って、自宅に向かう。
駅前のパチンコ店に行けば、道造さんはまだ打っているかもしれない。
でも今日は、家に帰ってタブレットでサッカーの練習法や基礎的技術を調べなくちゃね。
もしサッカーの試合がテレビ中継されていたら、それも見たい。
やっぱりサッカーって、ポジション取りが難しいよね。
プロの選手が試合で見せるテクニックって、独特のものがあるみたいだし、そういうものも見て盗むしかない。
途中のコンビニの前を通ったので、おかかおにぎりとシーチキンマヨを買う。
家に着くと風呂を沸かして入った。
湯船にぐったりと浸かり、しばらく温まりながらリラックスする。
ふーと息を吐き、両腕を高く上げて体を伸ばす。
立ち上がり、湯船から出て、ボディソープで体を洗った。
風呂から出ると、タブレットを起動してユーチューブでサッカーの練習法や基礎的技術を検索した。
たくさんの動画が見つかった。
ドリブルの基本を解説した動画では、様々な解説付き実践映像を見ることができた。
インサイド、アウトサイドの両方でドリブルをできるようにする練習。
方向を変えるカットドリブル。
ブロックターンと言って自分の体でボールを隠しながらターンする方法。
止まったり後ろに下がったりするための足裏でボールを引く方法。
細かいタッチで小さなスペースでも素早く方向転換したり、相手が近くにいても小回りが利いて上手くドリブルができるようになるための練習法。
基礎的なフェイント――ボディフェイント、シザース、ステップオーバー、キックフェイントなど。
動画を見て俺は思わず呟いていた。
「自己流じゃ、全然ダメじゃん。サッカーの技術って、こんなに色々あるんじゃんか……」
動画を見る前の満足感が、一気に覚めていた。




