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祝15万PV達成 『親ガチャ失敗・俺の親、泥棒ですが何か!』 怪盗紳士は『スチール』極めて成り上がる。  作者: 米糠


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第87話 こんなのあんの!

 

 道造さんの買い注文が入った途端、株価は反転し上に上にと板が食い破られていく。


 もちろん道造さんの注文は成約していた。


「しばらく……じりじり上がるじゃろう」


 道造さんの言う通り、上げの勢いは一瞬のうちに下げに転じ、すぐさままた上昇に転じた。

 その後、上げ下げが拮抗するようになったが、じりじりと上げ出しているようにも見えた。


『しばらく……じりじり上がるじゃろう』って当たってるみたい。


「読み通りですか?」


 俺は、道造さんに聞いてみた。


「ここまではのう」


 道造さんは、分足チャート、板、MACD、ボリンジャーバンドをチェックし続けながら答える。

 視線が、せわしなくそれらをなぞっていた。


「そろそろ、俺も買ってみたいなあ」


 思わず口に出てしまった。


「うむ。天心もだいぶ株価の動きが分かってきておるからのう――明日、買を入れてみるか?」


「今日は、やめておいた方が良いですかね?」


「もう少し早く言いだしていればのう。次は売りの局面じゃから」


 そうか、確かに今は売るタイミングを計っているんだった。


 入るタイミングは、もう過ぎているよね。


「天心。携帯とタブレットを使って、自分の口座で明日買う銘柄を探してみい」


 ――あ、そうか。

 俺まだ、何を買うかも探していない。


 道造さんと同じ銘柄でいいと思っていたが、それじゃあ取引がかぶって、いいことではないかもしれない。


 それに銘柄を見つけるノウハウ、どういう銘柄が良いのか判断する能力も大切だ。


「はい。そうですね。いくつか候補を探してみます」


 候補は、ランキングのページで出来高上位ランキングと売買代金上位ランキングをチェックした。


 出来高上位ランキング1位は、コン〇ピーサイエンス。


 そのページを開くと現在の株価その他の情報が表示された。


 出来高2億1672万2100株、株価28円で売買代金は57億1100万円だ。


 株価28円って安くね?


 安いから、出来高が多いのか?


 チャートを見た瞬間――固まった。


「……なんだこれ」


 今まで見たチャートと全然違う。


 細い線が、横にびっしり並んでいるだけ。


 まるで――バーコードだ。


 株価が、前場は26円と27円を往復し、後場は27円と28円を往復していた。


 たった、それだけの往復。


 つまり、値動きが極端に狭い――狭すぎだ。


 28円の売り板に295万株、27円の買い板に86万5千900株注文がある。


 ……壁だ。


 完全に、壁ができている。


 これじゃあ、27円で買って28円で売るしかない。


 それも、順番待ちが長すぎて、約定するまでそうとう待たされる。


 しかも……約定する保証なんて、どこにもない。


 これって、ボリンジャーバンドもMACDも役に立たない。


 こんな銘柄もあるのかよ!


「そりゃ、やめといた方がいいのう」


 道造さんが、くくっと笑う。


 その笑いで、肩の力が抜けた。


「ですよねー」


 俺は次の銘柄をチェックすることにした。


 売買代金上位ランキング1位――キオク〇アHD。


 板を見た瞬間その動きに驚愕した。


 速い! 速すぎる!!


 1分も経たないうちに31920円から32350円の間を乱高下しながら上昇した。


 10円刻みの板が、いったい何枚入れ替わったのだろうか?


 これじゃあ、注文を出している時間がない。


 1分間で430円も上がったのだ。


 これじゃあ、注文自体が置いていかれる。


 注文単価、注文株数、取引パスワードを入力し、その後に表示されるページに再度パスワードを入力しなければ注文は受け付けられない。


「こんなの無理ゲーじゃん!」


 俺の叫びに道造さんが大笑い。


「それが、デイトレーダーの最高難度の戦場じゃ! 天心にはまだ無理じゃろうな」


「こんなの、どうやったらできるんですか?」


「売り買い自体は、やりようじゃな」


 道造さんが得意げに説明する。


「わしがやっておったじゃろう。クリック一つで発注できる態勢で待つ。あとは多機能チャートの分析次第」


 ああ! ――あれか。


「ふーん!」


 俺は、大きく鼻息を吐き出した。


「初めはもう少しスピードの遅い物から始めた方が良いぞ。そいつには、注文入力に慣れてから、挑むべきじゃな」


 これは……やめろとは言わないんだな。


 むしろ最終目標のような言い方だ。


 つまり、こいつはデイトレードに向いている銘柄ってことだよね。


 ただ、難易度は最高レベル――強者たちの戦場ってこと。


 ひよっこの俺には、まだ早いが、勝てれば利益は大きそうだ。


 と思った瞬間急に下げ始めた。


 なんだこの動きは!


 あれよあれよと下がり続け220円下がったところでまた上げ始める。


 乱高下も乱高下。


 1分後にはまた下げ転換するのだろうか?


 株価の振れ幅がでかすぎる。


 一株32000円前後だから100万円で300株。


 売買単位は100株だから3口買ったとして1分のうちに13万弱上がったと思ったら6万強下がったということか――道造さんが1000万で勝負したら数分でその10倍。


 ……心臓が持たないな。


 予想に反して小さな下げをはさんで、株価は上がり続けた。


 次の1分で株価は250円上げていた。


 もうさっきの高値を超えたのか……。


 板の動きから目が離せない。


 次の数分の間に上げ幅は1000円を軽く超えていた。


 上げ相場か?


 買っておけば大きく儲けられたな…………と思った瞬間下げ始める。


 大きな乱高下を繰り返しながら株価は数分で300円は落下する。


 だが、また上げ転換し、さっきの高値を一気に超えてきた。


「うわー!」


 思わず声が出る。


 株価は大きく上がり始めた。


 激しい値動き。


 下げ始めたかと思ったら、また上げ始める。


 上げ始めたかと思えばまた下げる。


 これじゃあどうしたら良いか分からないな。


 …………でも、大きな波で考えれば上げてるんだな。


 株価が一瞬大きく上に飛んだ。


 !!


 次の瞬間、一気に下がる。


 大きい。


 下げが大きい。


 乱高下することなく一気に下げ続ける。


 奈落の底に突き落とされるような下げ。


 ものの1分で、見始めたころの値段、31920円を割り込みさらに下がり続けた。


 株価の乱高下が始まるが、今度は乱高下を繰り返しながら大きな波では下げ相場に見える。


 さっき株価が一瞬大きく上に飛んだ瞬間が、本当の転換点だったのだ。


「これじゃあ、どこで売り買いしたらいいのか全く分からないや……」


 困惑する俺を見て、道造さんがニヤリと笑った。


「ボリンジャーバンドとMACDを見てみい」


 道造さんの言う通りボリンジャーバンドとMACDに視線を移す。


 株価はボリンジャーバンドの1σで跳ね返され、2本目のローソク足で-1σ・31920円を割り込み、4本目で-2σに達していた。


 そして下降する-2σをなぞるように落ち続けている。


 MACDは、転換点で急角度のに下を向き-1σ・31920円あたりでシグナル線を抜けている。


 その後も株価は波打ちながら15分程度下げ続け、-2σ上30120円あたりで下げ止まり、MACD線が上向いた。


 7分ほど乱高下を繰り返し、上げ始めたのは-1σが30120円あたりで移動平均線とクロスしてからだった。


 バーコード銘柄よりちゃんと参考になるんだなあ――節目には見るべきポイントがある。


 俺は、リアルな経験を少し積んだ気がしていた。

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