↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝35万PV達成 『親ガチャ失敗・俺の親、泥棒ですが何か!』 怪盗紳士は『スチール』極めて成り上がる。  作者: 米糠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/225

第82話 デイトレードするしかないよね


 コンビニでおにぎりを買って家に着くと、もう日付が変わっていた。


 玄関のドアを閉めた瞬間、どっと疲れが押し寄せてくる。


 はー。…………もう探索者もできないのか。


 胸の奥に、じわじわと重たいものが広がっていく。


 そのまま靴を脱ぎ、部屋に上がると、おにぎりを食べて風呂に入る。


 ふー。


 湯気の中で目を閉じると、今日の出来事が何度も頭に浮かんでは消えた。


 ……明日に備えて寝なくちゃな。


 俺は、布団をひいて潜り込んだ。


 くそ! なかなか眠れねーや。


 大人なら、こんな時はお酒を飲んで無理やり眠るのかな?


 天井を見つめたまま、時間だけが過ぎていく。


 俺は羊の数を数えだした。


 1万4868、1万4869、…………


 あーん!!


 やっぱり寝れねーわ。


 俺は、むくりと起き出して、キッチンに水を飲みに行った。


 はー、どうするかな。


 …………


 しばらくぼんやりと立ち尽していたが、また布団に戻って目をつぶる。


 寝れなくても、体を休めておくのが大事――布団でじっとしていよう。


 明け方近くになってやっと眠っていたようだ。


 耳元で、8時にセットした目覚まし時計が俺を起こす。


 クッソ、……今度はメッチャ眠いぜ。


 道造さんの家に、8時半到着予定だ。

 もう起きなけりゃいけないよな。


 俺は、眠い目をこすって起き上がった。


 くはー。


 大きなあくび。


 新鮮な空気が脳内に流れ込む。


 灰色の脳細胞が活性化する。


 よーっし、今日も頑張るぞー!


 ……って、何を?


 自分でツッコミを入れながら立ち上がり、服を着替える。


 スウェットからTシャツとジーンズにね。


 顔を洗って歯を磨き、家を出る。


 歯磨きは大事だよ。


 自慢じゃないが、朝の歯磨きと、トイレの後の手洗いはちゃんとやってるんだぜ。


 はいはい。本当は一日三回、食後にやるべきだったよね……すみません。


 コンビニに寄っておにぎりとお茶を買う――道造さんの分も買って行ってあげよう。

 たぶん、朝飯を食べないことの方が多いのだろうけど。


 8時20分。

 約束の時間の10分前に道造さんの家に着く。

 手には、おにぎり4個と緑茶のペットボトル2本。


「おはようございます」


 玄関前で声を掛ける。


「あまり大きな声を掛けるなよ。隣の部屋から苦情が来る」


 道造さんの声も十分デカいんだが?


 確かに、毎日毎日この時間に大声を掛けられたら、苦情が来ても仕方がないか。

 昨日も大声で呼んじゃっていたかもしれないしな。

 今度からは気をつけて、もう少し小さな声を掛けるとしよう。


 俺はドアを開けて中に入る。

 道造さんは、水道の前で歯を磨いていた。

 そうそう、歯磨きは大事。


「おにぎり買ってきたんですけど、一緒に食べませんか?」


 買ってきたコンビニ袋を軽く掲げて見せる。


「悪いのう。せっかくだからいただくか」


「鮭に昆布にシーチキンマヨとおかかです。何がいいですか? 二つずつに分けましょう」


 部屋に上がり込んで、畳の上にお茶とおにぎりを並べる。

 机の上はパソコンで埋まっているし、椅子は一人がけで食べづらいからね。


「鮭と昆布をいただこうかのう」


 やっぱり道造さん世代は、シーチキンマヨより鮭と昆布か。

 俺たち世代には、シーチキンマヨとおかかのほうが好まれると思うけどな。


 畳に腰を下ろした道造さんが、お茶と、鮭と昆布のおにぎりを自分の前に持っていった。


「朝飯を食べるのは、いつぶりかのう?」

 道造さんが、少し肩の力を抜いたような声でつぶやく。


「やっぱり、朝飯は食わない派ですか。俺も実はそうなんですよ」


「うむ。面倒じゃからのう」


「今日だけ付き合って、食べてください」


「いやいや。これなら、面倒じゃないからのう。とってもありがたいぞ」

 そう言いながら、道造さんはかすかに笑みを浮かべ、おにぎりの包装を剥がしている。


 俺もビニールを破り、おかかにぎりにかぶりつく。

 コンビニの味だ。

 なぜかコンビニの味って、美味しいんだよね。

 企業努力ってやつかな?


 俺と道造さんは、証券市場が開く前に、コンビニおにぎりを食べ終えようと急ぐ。


「早めに食べて、気配を感じ取らねばなあ」


「板の動きを見るってことですか」


「まあ、そんなところじゃが、それだけではない」


 視線はすでにパソコンのモニターへ向いていて、食事をしているのに意識はもう相場に入っているみたいだった。


 他にも何かあるのかな?


「アメリカでの動きがどうなったのか。ADRというのを調べれば、日本の中心的な銘柄の動きが分かる。終値近辺から初値がついて、そこから動き始めることだってよくあるのう」


「アメリカでの、日本株の動きですか?」


「そうじゃ。日本でもアメリカの株が買えるように、アメリカでも日本の有名な銘柄が買えるんじゃ」


「それがADR?」


 道造さんは、教えてやるぞと言わんばかりに軽く指を振る。


「そうじゃ。米国預託証券というやつじゃ。難しいことは考えんでもいい。要は、それが実質的に、その株の値段を示しとるってことじゃ」


「はー」


 なんとなく分かったような、分からないような?


「インターネットで調べれば、ADR銘柄を扱ったサイトがある。それを見れば分かるんじゃ」


 道造さんがマウスを動かし、パソコン画面でADR銘柄を扱ったサイトを開いて見せる。


 表示されたページには、確かに日本株の銘柄名と値段が並んでいた。

 クリックすると、別ウィンドウでチャートが立ち上がった。


「ADRの値段にとらわれるべきではないが、参考にできるときもある」


「ということは、全然当てにならないこともあるってことですか?」


 俺が聞くと、道造さんは口の端をわずかに上げた。


「その通り。あくまで参考じゃ。頼りすぎると、足をすくわれる」


 そう言って、ペットボトルを持ち上げる。


 ――その仕草は、まるでこれから始まる戦いの前に、一息ついているようにも見えた。


「ほほう。やはり、さげていたか。寄り付きは下げて始まりそうじゃのう」


 パソコン画面を変えて板を開く。

 多機能チャートも別ウィンドウで横に開く。

 多機能チャートの設定を操作し、1分速のボリンジャーバンドとMACDを表示して臨戦態勢を整える。


「今日は、売りから入ろうかのう……」


 道造さんは、苦しそうに眉間に皺を寄せている。


 ……売りから入る?


「売りから入るって、持ってる株を初めに売るってことですか?」


「そういうこともあるが、信用売りがほとんどじゃな」


 ……信用売り?


 また知らない言葉が出たぞ。


「信用売り――信用取引ロいうのがあってな。信用取引をできる設定というものがあるんじゃが、簡単に言えば借金をしてというか、株を一時的に借りて売ってしまうやり方じゃ。あとで買って返して相殺する」


「そんなやり方があるんですね」


 よく見ると『現物売・現物買』という表示の横に『信用売・信用買』の表示がある。

 ここをクリックすると信用取引の注文画面に飛ぶのだろう。


「そうじゃ。わしも極力避けたいくらい危険なもんじゃ」


「今日は、それをやるんですか?」


「いや、できれば現物の取引で済ませたいんじゃ。よほどの確信が持てんと怖くてできん。ただ、天心に何も見せられなんだというのでは申し訳ないからのう」


 道造さんが怖い顔で俺を睨む。


「天心は、わしが良しというまでは絶対やるな。一つ間違うと大変なことになる」


 え! まさかの禁止宣言? 

 大変なことになる?

 ……どういうこと?


「追証が発生したり、強制売買をされてしまうことがあるんじゃ。全財産をなくして路頭に迷うことになるのはこのパターンじゃ」


 追証?

 強制売買?

 …………何だか分からないけど、路頭に迷うってそんなこともあるのか!


 危ないことはやらないことにしよう。


 俺は、淡々とデイトレイドを続ける道造さんの行動を観察し続けた。

 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても面白い 続きが気になりますね
ないわぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。