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祝10万PV達成 『親ガチャ失敗・俺の親、泥棒ですが何か!』 怪盗紳士は『スチール』極めて成り上がる。  作者: 米糠


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第71話 二軒目の消費者金融


 一軒目の消費者金融の店舗から出た俺は、そのまま足を止めず、隣の店舗に視線を向けた。


 ガラス越しに見える店内は、さっきの店とよく似ている。

 明るい照明、整然と並んだカウンター、作り物みたいな安心感。


 この店舗にも、かーちゃんの借金があるのかを確認しなければ。


 俺は小さく息を吐いてから、自動ドアをくぐった。


「すみませーん。あの……」


 俺の声に、カウンターの奥にいた女性が顔を上げ、柔らかい笑顔を向ける。


「こちらにどうぞー」


 軽く手招きされ、俺は窓口の前へ進む。


 立ったまま、カウンター越しに向き合う形。


「どのような御用件でしょうか?」


 穏やかな声だが、その視線にはわずかな困惑が混じっている。


 中学生が一人で消費者金融に来るなんて、普通じゃない。


 不審に思われても仕方がないのだ。


「えっと……」


 俺は、かーちゃんの名前を口にする。


「こちらに借り入れがあるか、確認したくて……」


 カウンターの女性は、かーちゃんの名を覚えていたらしく話はすぐに通じた。


「少々お待ちください」


 営業スマイルのまま、端末に視線を落とす。


 カタカタと音を立ててキーボードを叩く。


「こちらが借入金額になりますね」


 やはり借金はあった。


 ――二百万円以上も。


 視界がぐらりと揺れる。


 マジかよ……。


 そりゃあ――かーちゃん、逃げるわけだわ。


 どういうわけか、笑いそうになる。


「本日、返済はされますか?」


 事務的な声が降ってきて、現実に引き戻された。


「……とりあえず、二十万円だけ」


 俺の思考は停止していたが、条件反射のように口が動く。


 そして手は、金を取り出しカウンターに置いていた。


 カウンターの女性は俺の返事に一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに元に戻った。


「こちら、二十万円お預かりします」


 機械みたいに淡々と処理されていく。


「残りは、後日ご返済という形でよろしいでしょうか?」


「……はい」


 短く答える。


 処理が終わり、伝票を受け取る。


 紙一枚の伝票だが、それだけで「借金がまだ残っている」という現実を突きつけてくる。


 少しずつ頭が動き出したのか、現実が押し寄せてくる。


 返済できるだけの預金を持っていなかったら、こんなに早く正気を取り戻すことはできなかっただろう。


 探索者を始めていてよかった。


 道造さんに会っていなかったら……俺は探索者になっておらず、借金に直面して、ただただ途方に暮れていただろう。


 俺は伝票を折りたたみ、ポケットに押し込んだ。


 ――外に出る。


 ドアが閉まる音が、やけに重く耳に残った。


 昼間のはずなのに、空がどこかくすんで見える。

 さっきまで普通だった景色が、少しだけ色あせたように感じた。


「……はぁ」


 思わず、ため息がこぼれる。


 いや待て。


 借金は返せるんだ。


 俺はそれだけの金を持っている。

 探索者協会にまだ五百万円預けてある。

 証券口座にだって五百万円あるんだ。


 焦ることはない、落ち着け。

 よく考えろ。


 あ!


 俺は、大切なことに気が付いた。


 金利! ――金利が付くんだ。


 一日でも金利が付く。


 十一。


 十日で一割。


 つまり一日で10パーセント。


 俺はポケットに押し込んだ伝票を取り出し、震える指で残高を確認した。


 二十万円返済したのに、まだ二百十三万円と記載されている。


 額に冷たい汗がにじんだ。


 ……今日中に全額返済したほうがいいな。


 一日遅れるごとに二万円以上の金利が追加される。

 残高は、遅れれば遅れるほど雪だるま式に増えていく。


 俺は頬を軽く叩き、目を瞬いた。


「急いで往復しよう」


 俺は地面を蹴り、池袋西探索者協会に向かって走り出した。


――午前十時半。


 息ひとつ乱さず協会に飛び込み、二百五十万円を引き出す。

 そして再び走る。


 石神駅前に戻った時には、時計は十一時を指していた。


 自動ドアをくぐり、カウンターへ直行する。


「あの、さっき来た赤嶺です」


「はい。どのような御用件でしょうか?」


 さっきの女性が応じてくれた。


「お金、下ろしてきました。借金の返済をしたいんですけど」


 カウンターの女性は、表情を変えずに頭を下げる。


「かしこまりました」


 俺は、持ってきた二百五十万円をカウンターの上に置いた。


「二百五十万円あります。これで全額返済できますよね」


 カウンターの女性の目が一瞬細められる。


 借金の残高を確認すると札束を手にして数え始める。


「残高が二百十三万円になりますので、三十七万円はお返ししますね……」


 まるで、このやり取り自体が日常の一部であるかのような淡々とした声で告げられる。


 俺はお釣りを受け取り財布に戻した。


 カウンターの女性はてきぱきと作業を続け、やがて一枚の書類を差し出した。


「こちら、借用書になります。こちらをお返ししたことで、借財はなくなったことになります。お受け取りください」

 

 俺は、差し出された借用書を受け取り視線を落とす。

 そこには、かーちゃんの名前と金額がはっきりと記されている。


 始めに借り入れた金額は、三十万円。


 返せないまま金利が膨らんで、一年くらいで二百万を超える借金になってしまったらしい。


 どんだけ増えるんだよ!!


 決して合法な金利ではないだろうが、とやかく言っても取り合ってくれるはずはない。


 奥から怖いお兄さんが出てこないとも限らない。


 でもこれで、借金が増え続けることはなくなったのだ。


 かーちゃんも、どうせ借りるなら、ちゃんとした消費者金融から借りればいいのに。


 だがしかし、俺が一番ありそうだと思っていた「かーちゃんは男と駆け落ちした」って仮説は、かなり後退した。


 借金に追われて、俺を残して逃げたんだ。


 なんで俺を残して逃げたんだ?


 一緒に逃げれば良いんじゃないか?


 やっぱり……男がいたから、俺は邪魔だった?


 俺が探索者を始めたから、一人で生きられると思ったのか?


 そこは考えても答えは出ない。


 でも、借金が一番大きな原因だったことだけは、間違いないだろう。


 ……どうでもいいや。


 俺はぽつんと呟いた。


 言葉にした途端、心の奥にあった何かが、ふっと切れた気がした。


 俺は借用書をポケットにしまい、店を出る。


 そして、あてもなく歩き始めた。






第70話終了時

 赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル5

 職業    怪盗紳士

 HP    12(+14467)

 MP    0 (+14231)

 力     12(+30)

 防御外皮  12(+3356)

 知力    10(+14281)

 速さ    12(+3348)

 器用さ   16(+15)

 スキル   スチール(ユニーク)レベル6(16個)

 気配察知(6)

 スライムの胃袋(22504)   レベル4

 消化液(7435)   レベル3   

 水魔法    スライムバレット(1088)  レベル3

 火魔法    ファイアバレット(1690)  レベル3


 装備    なし

 アイテム  リュックサック 腕時計


 金  三十七万四千四百円

 口座 二百五十万円

 証券口座 五百万円

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