第70話 夏休みの探索は長いね
第69話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4
職業 怪盗紳士
HP 11(+11767)
MP 0 (+11531)
力 11(+30)
防御外皮 11(+2816)
知力 10(+11581)
速さ 11(+2808)
器用さ 15(+15)
スキル スチール(ユニーク)レベル6(16個)
気配察知(6)
スライムの胃袋(17104) レベル4
消化液(6085) レベル3
メタル化1(体を金属に変える。消費MP2)
水魔法 スライムバレット(1088) レベル3
火魔法 ファイアバレット(1150) レベル3
装備 なし
アイテム リュックサック 腕時計
金 三十六万六千円
口座 五百四十七万八千四百円
証券口座五百万円
池袋西探索者ビル。
俺は気を取り直して、スライム狩りに来ている。
第一階層の奥深く、いつもの狩場にはオレンジ色のスライムがぽにょぽにょと揺れていた。
天井の蛍光石の淡い光を受けて、ぬめりが鈍く光っている。
「スチール!」
スチールをかけ続ければ、やがてHPがゼロになり、スライムはどろりと形を失う。
張力を失った体が水たまりのように床に広がり、やがて黒い煙に変わって魔石を残す。
三匹目を倒した時、突然脳内にメッセージが鳴り響いた。
レベルが5に上がりました。
そろそろ来ると思っていたが、だいぶ待たされたぜ。
俺は、早速ギルドカードを取り出し、心のなかでステータスと唱えると、目の前に光でできたステータスボードが現れる。
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル5
職業 怪盗紳士
HP 12(+11767)
MP 0 (+11531)
力 12(+30)
防御外皮 12(+2816)
知力 11(+11581)
速さ 12(+2808)
器用さ 16(+15)
スキル スチール(ユニーク)レベル6(16個)
気配察知(6)
スライムの胃袋(17104) レベル4
消化液(6085) レベル3
水魔法 スライムバレット(1088) レベル3
火魔法 ファイアバレット(1150) レベル3
装備 なし
アイテム リュックサック 腕時計
いつも通り、1ずつ上がってるな。
……たまには2とか3とか多めに上がってもいいのにな。
レベルアップで新しいスキルを覚えたりしないのかな?
レベルアップが嬉しくないわけではないけど、スチールでのステータスアップのほうが断然大きいんだよね。
そんなことを考えながら、俺は次の狩りに取り掛かる。
今度は、岩にへばりついているスライムをターゲットにスチールをかける。
動いていようがなかろうが、スチールをするのに影響はない。
スチール(ユニーク)のレベルが6になって、一度に16個を奪っているので、レベル5のオレンジスライムなら4回で奪いつくせる。
スチールレベルが5の時より、かなり短時間で倒せるので、今日は相当に稼げるはずだ。
それに、今日は時間も長い。
ブランチを食べて、11時からスタートしたので、いつも通り夜8時までやれば9時間狩れる。
さすがに9時間ぶっ続けは厳しいか?
――小休憩をはさみ、夜九時まで倒し続けた。
270匹――スライムって、倒しても倒してもリポップするんだね。
……エンドレスだ。
軽く息を吐き、額をぬぐう。
汗はほとんどかいていないが、さすがに集中力は削られている。
今日の稼ぎは十六万二千円。
さすがに一日働くと稼ぎも多い。
手持ちの金が十六万二千円増えて五十二万六千円。
明日、借金を返すには七十五万円が必要だ。
――ちょっと足りない。
探索者口座には五百四十七万八千四百円ある。
端数の四十七万八千四百円引き出して、五百万円にする。
これで手持ちは百万四千四百円。
七十五万円返済しても二十五万円は残る。
よし! これで明日午前中に、借金を返しに行ける。
消費者金融に借金が残っているなんて、どうにも落ち着かない。
いつまでも金利が増え続けそうで、なんだか怖い。
朝方だって、金さえ足りればその場で返済したかった。
だから今、探索者口座から金を下ろしておいたというわけだ。
俺は百万円の札束をスライムの胃袋に収納した。
その方が、安心なんだもん。
三階のパーラーで晩飯を済ませ、そのまま直帰して明日に備えた。
日曜日。
石神駅前の消費者金融を訪れる。
駅前の雑居ビルの一階。
ガラス張りの入口の奥に、同じような看板を掲げた店舗が二つ並んでいた。
……こういうの、並んでるもんなんだな。
昨日来たのは、右の店。
ちらりと左の店を見る。
――あっちの消費者金融にも借金があるなんてことない……よねえ?
……かあちゃんならありそう……かな?
軽くため息をつき、俺は右側の昨日来た消費者金融の店舗に入る。
店内は明るいが、どこか空気が重い。
消毒液と古いカーペットの匂いが混ざったような、妙に落ち着かない空間だった。
「すみませーん。あの……」
「あ、赤嶺さんところのお坊ちゃん! 昨日はどうも」
昨日の男が、胡散臭い笑みを浮かべて近づいてくる。
……お坊ちゃんって何だよ。
昨日、五万円払ったから上機嫌なのか?
俺は手招きされて男が指示したカウンターの椅子に座った。
隣の席とはボードで仕切られていて、会話は外に漏れないようになっている。
椅子に腰を下ろすと、男がもみ手をしながら向かいに座った。
一見、愛想のいい笑顔。
だが、目の奥はまったく笑っていない。
「今日はどのようなご用件でしょうか? 中学生の借金はちょっと難しいかと思いますが」
「いえ。お金を返しに来たんですけど」
「へ?」
男の目が一瞬だけ細くなる。
「お金を下ろして、返しに来たんです」
「お母さんの借金をかい? お母さんはどうしたの?」
「かーちゃんは、ちょっと」
「まあいいか。お金を返しに来たって、ぼく? 七十五万円だよ」
男は肩をすくめて笑う。
「はい。用意してきました」
「ほ――」
男の顔に真剣さが宿る。
「借金をなくしたいんですけど、返済お願いします」
男は少しだけ不快そうな表情を浮かべる。
「……じゃあ、金利の計算をするから待っていてください」
男が書類を取り出し電卓を弾き始める。
カチカチと乾いた音が、妙に大きく聞こえる。
俺はその様子を黙って見つめた。
「あれから一日経ってるから……金利が加算されて、七十六万円だね」
……?
一万円も増えてんじゃん!
たった一日で?
心の中で舌打ちする。
とても合法的な金利だとは思えない――けど、文句を言っても聞き入れてもらえるはずはない。
早く返しに来てよかったな。
ここで揉めても時間がかかるだけならば、さっさと金を払って終わらせた方がいい。
俺は百万円を取り出して、七十六万円を数えて机の上に置いた。
男の視線が、ぴたりとそれに吸い付く。
「これで、あると思います」
「確認させてもらいますね」
札束を手に取り数えだす。
「ちゅう、ちゅう、たこ、かい、な……」
札束を扇のように広げ数枚ずつ数えていく。
ぺら、ぺら、と紙の擦れる音だけが小さく響く。
「――七十六万円。確かに」
男はうなずき、書類の束から一枚を抜き取った。
「借用書をお返ししますね」
差し出された借用書を受け取り視線を落とす。
そこには、かーちゃんの名前と金額がはっきりと記されていた。
「これで、借金がなくなったんですよね?」
男はにこりと営業用の笑顔を浮かべた。
「当店での借り入れはなくなりました。完済、おめでとうございます。またのご利用をお待ちしております」
――絶対いやだ。
もう借金なんてしたくないわ!
それにしても、この高金利――ありえねーだろ!
やれやれ……借金も消えて、これでやっと一安心だぜ。
肩の力が、すっと抜ける。
俺は借用書を折りたたみ、ポケットにしまった。
「あ、そうそう」
俺が踵を返し立ち去ろうとすると声をかけられる。
「赤嶺さん、隣のお店にも出入りしていたようですけど――そちらもご返済にいらっしゃるんですか?」
マジか! やっぱりかーちゃんだよ。
隣の店を見て、嫌な予感はあったんだよね。
「隣にも寄って、少しずつ返していくつもりです」
俺は、愛想笑いを返しながら返事を返し、そのまま店を出た。
第70話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル5
職業 怪盗紳士
HP 12(+14467)
MP 0 (+14231)
力 12(+30)
防御外皮 12(+3356)
知力 10(+14281)
速さ 12(+3348)
器用さ 16(+15)
スキル スチール(ユニーク)レベル6(16個)
気配察知(6)
スライムの胃袋(22504) レベル4
消化液(7435) レベル3
メタル化1(体を金属に変える。消費MP2)
水魔法 スライムバレット(1088) レベル3
火魔法 ファイアバレット(1690) レベル3
装備 なし
アイテム リュックサック 腕時計
金 百万四千四百円
口座 五百四十七万八千四百円
証券口座五百万円




