第67話 スケルトンとの戦い
「はい。これ」
俺は綾華に魔石二つと毒薬一つを渡す。
「スチールを何回か繰り返せば、ドロップ品を確実に盗めると思うぜ」
俺のスキルは普通のスチールだと資料には書いてあるはず。
ここでスチール持ちだと知られても、問題ない。
いや、もうとっくに知っている可能性のほうが高い。
本当はユニークなスチールなんだけどね。
ユニークスキルだということさえ知られなければ、問題はないはずだ。
むしろ、ここはただのスチールを繰り返しているように思われた方がやりやすい。
「天心君の好きにしていいよ。私、お金いらないし、全部天心君にあげるから」
……え! マジですか? お嬢様は言うことが違うわ!
でもでも、そういうわけにはいかんでしょう。
やっぱり、けじめはちゃんとつけないと。
「それはダメだよ。稼ぎは半々にしよう。どっちが活躍したとか、しないとか、いちいちとやかく言いたくないから、何があっても、きっちり半々。全部俺にくれるなんてのは、かこわれているみたいで俺のプライドが許さないからさ」
「分かったわ。天心君のすきでいい。私、天心君に任せるから」
綾華は俺に渡された魔石と毒薬をマッチョな指導員さんに渡す。
指導員さんは、それを受け取り言った。
「はい。ちゃんと三倍の価格で買い取らせていただきます」
そうこうしているうちに、つぎのスケルトンが迫っていた。
俺は、二人を背にするようにスケルトンに近づき、今度は大きな声で唱える。
「スチール!」
力10をスチールしました。
器用さ5をスチールしました。
毒薬(麻痺毒レベル1)1をスチールしました。
スチールした毒薬の瓶は、瞬時にスライムの胃袋にしまう。
これを見られたら、二回目のスチールをなぜやったのかと疑われる。
「スチール!」
気配察知2をスチールしました。
防御外皮5をスチールしました。
知力5をスチールしました。
速さ4をスチールしました。
もう一回スチールしたら、スケルトンは死んでしまうので、スチールはせずにスライムバレットを撃つ。
スケルトンが黒い煙に変わり、魔石が落ちた。
その向こうから奥にいたスケルトンが迫ってきている。
……え!
数が増えてないか?
次から次へと、奥からスケルトンが向かってくる。
八、九……十匹。
一気に十匹のスケルトンを相手にしなけりゃならないのか!
スチールで、奪っている場合じゃな――スライムバレットの連射で一気に倒すか……。
「天心君。今度は私にやらせてくださーい」
言うが早いか綾華が飛び出す。
おいおい――ライフルで遠距離射撃をしないのかよ!
抱えていたライフルをくるりと回す。
新体操のバトンのように、銃が手の中、肩、腰、首の周りで滑らかに回転する。
走る綾華を中心に、銃は円心運動を繰り返していた。
なんじゃこりゃ?
新手の曲芸か?
銃を回転させる意味は分からないが、あんな重そうな銃をよくもまあ、自在に操れるものだわ!
「天心君、ちゃんと見ててくださいねー」
綾華は地面を蹴ってスケルトンの前に飛び出した。
「危ない!!」
俺は思わず叫んでしまった。
スケルトンが腕を振り上げる。
その腕が振り下ろされるより早く――
ブンッ!!
ライフルの銃床が、横薙ぎに振り抜かれた。
ドゴッ!!
スケルトンの頭蓋骨が粉々に砕ける。
骨が崩れ、黒い煙とともに魔石へ変わった。
……え?
マジで銃で殴った?
銃の使い方、……間違ってないか?
綾華の動きは止まらなかった。
そのままライフルをくるりと回し、ハイジャンプして空中回転しながら今度は上段から振り下ろす。
ゴンッ!!
二体目のスケルトンの頭蓋骨から胸骨が一気に砕けてはじけ飛んた。
残った下半身を蹴り飛ばし、さらに一歩踏み込む。
突き。
ガッ!!
銃口が襲い掛かったスケルトンの肋骨を突き抜く。
骨がばらばらに崩れ落ちる。
……強い。
強いけど――戦い方がおかしい。
「近接戦は得意なんです」
綾華は楽しそうに笑う。
ライフルをくるりと回しながら、次のスケルトンへ駆け寄る。
スケルトンが三体、同時に近づく。
普通なら囲まれる距離。
だが綾華は――
ブオッ!!
ライフルを体を軸に回転させる。
横薙ぎの一撃。
ドガッ!!
ドゴッ!!
二体のスケルトンが同時に砕け散った。
残り一体。
綾華はライフルを肩に担ぎ――
そのまま振り下ろす。
ドンッ!!
骨が粉々になる。
あっという間に六体が消えていた。
俺はぽかんと口を開ける。
……すげえ。
綾華がこちらを振り返ってサムズアップ。
その隙をついて襲い掛かったスケルトンにハイジャンプからの前方回転かかと落とし。
骨が崩れ、魔石が転がった。
骨を蹴り砕いても何ともないとは――あのロングブーツも実は武器か?
背後から襲い掛かるスケルトンの振り下ろしを、銃を頭上にかかげて防ぐと、後ろ廻し蹴りで足元をすくう。
倒れたスケルトンの頭蓋骨に銃を突き付けて発砲した。
スガーン!
初めて銃声が響き渡った。
頭蓋骨が砕け散る。
ライフルって、そうやって撃つものなの?
まさかの0距離射撃?
残った二匹が左右から襲い掛かったが、綾華は銃をぐるりと振り回して一気に粉砕した。
――戦闘終了。
綾華がにこりと笑う。
俺は呆気に取られて、思わずつぶやいた。
「……ライフルって殴る武器だったっけ」
「銃は重いですからね」
綾華はくるくるとライフルを回し答えた。
「殴ると強いんですよ!」
確かに綾華の銃は普通と違い、太くて重い。
金棒のように使うために設計された武器だと言われれば、納得できないこともない。
でも銃だぞ――普通、遠距離射撃から入らないか?
「なんで遠距離射撃から入らなかったの?」
「えー。普通はそうするものですか? みんなは私のように戦わないの?」
当たり前じゃん。
ライフルで殴るやつがどこにいるの?
ライフルの先に銃剣をつけて突激する戦い方があるにはあるけど、それだって、遠距離射撃をしてからだ。
「こんな戦い方は、正直初めて見たわ」
「でも、こっちの方が気持ちいいのよ?」
綾華はくるりとライフルを回す。
「銃ってね、殴ると楽しいの」
……そういう問題じゃないと思うんですけど。
金棒使えよ。
「それに、私……遠くの的に当てるのって、ちょっとだけ苦手なのよねー」
あ! そっち?
俺は、なんとなくこの子の戦い方を理解した。
……この子、前衛近距離戦闘型だわ。
後衛として遠距離射撃を期待するのは、やめておこう。
マッチョの指導員さんが魔石を集めて回っていた。
第67話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4
職業 怪盗紳士
HP 11(+11767)
MP 0 (+11531)
力 11(+30)
防御外皮 11(+2816)
知力 10(+11581)
速さ 11(+2808)
器用さ 15(+15)
スキル スチール(ユニーク)レベル6(16個)
気配察知(6)
スライムの胃袋(17104) レベル4
消化液(6085) レベル3
メタル化1(体を金属に変える。消費MP2)
水魔法 スライムバレット(1088) レベル3
火魔法 ファイアバレット(1150) レベル3
装備 なし
アイテム リュックサック
金 四十一万六千円
口座 千四十七万三千三百円




