第66話 初めての第二階層
坂を下りると見慣れた第一階層。
蛍光石の淡い光に照らされた岩場のあちこちで、スライムがぷよぷよと跳ねている。
「スライムは無視して第二階層に向かいましょう」
マッチョの指導員さんが振り向いて提案した。
綾華が軽く頷く。
時短のために、みんなそうしてるみたい。
スライムを狩ってるのって、俺くらいだもんな……。
三人は第二階層へ続く通路へと走り出した。
足音が岩壁に反響し、ダンジョンの静かな空気を揺らす。
今日、いったい何時まで探索するつもりなんだろう。
九時から始まったのだから、十一時までには帰りたいな。
スライムの群れを横目に、一気に第一階層を駆け抜ける。
やがて、第二階層へと降りる穴にたどり着いた。
人一人が通れるくらいの下り坂が続き、少しして広い場所に出た。
第一階層とは明らかに雰囲気が違う。
天井は同じように蛍光石が光っているが、地面は岩ではなく土と泥岩のような質感だ。
ところどころ岩のくぼみに水が溜まり、小さな水たまりができている。
土はぬかるんではいないが、完全に乾いているわけでもない。
もし太陽光が差し込めば、植物だって生えるだろう。
「ここが第二階層ですか?」
俺は周囲を見回しながら聞いた。
「ああ、ここが第二階層だ。奥に行けば、川もあるぞ」
マッチョの指導員さんが答える。
「地下に川ですか?」
不思議な感じがする。
「地下水の流れだな」
「深いんですか?」
「場所によりけりだ。大体は浅いが、場所によっては体が沈むほど深いところもある。きちんと調べたわけじゃあないんだがな」
……なるほどね。
「水の中に魔物はいますか?」
「第二階層の魔物は、スケルトンだ。水の中にはあまりいないな」
「スケルトン! あの、骨のやつですか?」
うわー! 俺の嫌いな奴だ。
「ああ。人骨タイプの魔獣だな。動きもさほど早くないし、防御力もたいしたことはない。多数に囲まれなければ、怖い魔物ではないな」
マッチョの指導員さんが淡々と説明する。
「群れで現れたりするんですか?」
「ああ、たまにはそういうこともある」
「うへー。そういう時は、逃げればいいんですか?」
「そうだな」
その言葉を、綾華が横からあっさり否定した。
「大丈夫ですよ、天心君。スケルトンくらいなら、何匹でも私がやっつけてあげます」
くるりとこちらを振り向き、にっこり笑う。
この笑顔――自信だけは本物のようだ。
綾華の抱えているライフルを見る。
……あのライフル、いったい何発連射できるんだ?
見た感じは、ボルト・アクションタイプのライフルだ。
ボルト・アクションタイプのライフルは、普通は三~五発。
最大でも十発くらいだったと思ったけど……。
三階の銃ショップで見た記憶と照合するが、同じものはなかった。
カタログでも見たことがない銃だから、たぶん特注品か、あるいはダンジョン産の銃だろう。
どんな性能なのか、皆目見当がつかない。
銃をくるくる回して遊んでいるところを見ても、扱いには慣れていそうだから、射撃の腕も期待できる。
だが、連射時間には限界っていうものがあるだろう。
近寄られる前に、十匹くらい撃ち殺せるのか?
そんなに早撃ちなのか?
お嬢様、すげーな。
ちょっとだけ、心の隅の疑いが晴れない。
「あそこを見て!」
綾華が指さした先に、白い魔物が立っていた。
人の形をした、真っ白な骨。
「あれが、スケルトンだよ。天心君」
マッチョの指導員さんが教えてくれる。
よく見ると、その後方にも数匹のスケルトンが見える。
だが、スケルトン同士は五メートル以上離れている。
連携して動いているわけではなさそうだ。
「天心君、天心君のスライムバレット見せてよー」
綾華が甘えるように視線を向ける。
……なるほど。
あのスケルトンを俺に倒せってことね。
気持ちは分かる。
そもそも俺の実力が見たくて、ダンジョンに入ろうと言ってきたわけだし。
俺は一人、スケルトンに近づく。
五メートルまで近づき、試しにまずスチールを使った。
二人に気づかれないように発声はしない。
心のなかで「スチール」と唱える。
何も狙いを定めていないのでランダムに奪っている。
力10をスチールしました。
防御外皮5をスチールしました。
毒薬(麻痺毒レベル1)1をスチールしました。
二回目。
知力5をスチールしました。
速さ6をスチールしました。
器用さ5をスチールしました。
いい具合にHPを避けている。
三回目。
気配察知2をスチールしました。
HP5をスチールしました。
その瞬間、スケルトンの体が崩れ始めた。
俺は、そろそろこうなることを予想していた。
想定通りだぜ!
すかさずスライムバレットを放ち偽装工作。
消化液の弾丸が、崩れかけたスケルトンに命中した。
間髪入れず、スケルトンは黒い煙とともに魔石へと変わる。
……危ない危ない。
うまくごまかせただろうか?
俺は近づいて魔石を拾った。
その時、五メートル先にいた別のスケルトンが、こちらを向いた。
どうやら、俺に気づいたらしく、ぎこちない足取りで、ゆっくりと近づき始める。
マッチョの指導員さんと綾華も、こちらへ歩いてきていたが、二人とも俺の心配はしていないようだ。
……まあ、相手がスケルトン一体だからね。
今度は、自分のステータスを考えて、力と器用さを狙ってスチールを使う。
さっきのスチールで、スケルトンのステータスは判明している。
スケルトン・レベル1のステータスは――
HP 5
MP 0
力 10
防御外皮 5
知力 5
速さ 6
器用さ 5
スキル
気配察知 2(目がないため気配で周りの様子を知る)
ドロップアイテム
毒薬(麻痺毒レベル1) 1
――のはずだ。
力10をスチールしました。
器用さ5をスチールしました。
毒薬(麻痺毒レベル1)1をスチールしました。
グッジョブ!
もう一回スチールして、その後スライムバレットで止めを刺そう。
でも、スキルの気配察知は欲しいかな――集めれば気配察知も強力になるかもしれないし。
もう一度スチール。
気配察知2をスチールしました。
防御外皮5をスチールしました。
知力5をスチールしました。
速さ4をスチールしました。
上手い具合にHPを後回しにできた。
今までの経験で、無意識のうちにHPを最後に回せるようになっているのか?
右腕をかざし、スライムバレットを連射。
だが、一発目の直撃でスケルトンは黒い煙と魔石に変わった。
二発目は空を切り、後方に飛んで行く。
俺のスライムバレットって、けっこう強力みたいだね。
レベル4のスライムバレットだからかな。
それともスケルトンが弱すぎなのか?
俺は、さっきと同じようにスケルトンの魔石を拾った。
「すごーい!」
綾華が嬉しそうに駆け寄ってきた。
スケルトン・レベル1のステータス
HP 5
MP 0
力 10
防御外皮 5
知力 5
速さ 6
器用さ 5
スキル
気配察知 2(目がないため気配で周りの様子を知る)
ドロップアイテム
毒薬(麻痺毒レベル1) 1
綾華のステータス
綾華 十五歳 六月生まれ
HP 8 (200)
MP 0 (200)
力 7 (200)
防御外皮 8 (200)
知力 10 (200)
速さ 8 (200)
器用さ 10 (200)
スキル
気まぐれな天使の加護(時々ラッキー 命拾いとか) ウルトラレア
装備 バルキリアの首飾り(全てのステータスを200アップ)
アルテミスのロングブーツ(?)
ニケ―のライフル(?)




