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『親ガチャ失敗・俺の親、泥棒ですが何か!』 怪盗紳士は『スチール』極めて成り上がる。  作者: 米糠


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第57話 デイトレ計画?



「ところで、道造さん。もうすぐ夏休みじゃないですか」


 餃子を一つ食べ終わり、俺は水で口の中を流してから切り出した。


「おう、そうだな」


 道造さんは、最後の餃子を酢醤油にちょんとつけながら、気のない返事をした。


「デイトレードを教えてもらう件、本当にいいんですよね」


 忘れてないよね。


「わしがやっとるところを見せながら、教えてやる件じゃな?」


「はい。そうです」


 覚えてくれていたらしい。

 よかった。よかった。


「かまわんが、学校が終わったらすぐ始めたいのか?」


 道造さんは、コップのみの水をぐいっと飲み干し、俺をちらっと見た。


「はい。できたら」


「いつから夏休みじゃ?」


「そうですね。学校もあと1週間なので、7月19日の土曜日から休みです」

 

 確か、そのはず。


「となると、土日は市場がお休みじゃから、21日の月曜日からじゃな」


 うん。最短だとそうなる。


「用意するものとかありますか?」


 確かこの前、ネット環境が必要だと言っていたはず。

 ネット環境って、スマホでも良いのかな?


「わしのところで見るだけなら何もいらんが、自分でやってみたいなら、証券口座を開く必要がある。簡単なのはスマートフォンでの取引じゃのう。じゃが、スマートフォンの画面は小さいから分かりにくい。本気でやるならパソコンかタブレットは必要じゃな」


 証券口座とスマホかー。

 スマホがないと、ネットの取引口座は開けないんじゃないかな。

 まずはスマホが先かな。


「俺、携帯持っていないんですよね」


 クラスのほとんどは持っているのに、俺は持っていなかった。

 そのことで両親を恨んだことはない。

 貧乏だったので、仕方ないとあきらめていたのだ。

 ……でも、今の俺なら金はある。


「なら、携帯の契約をしておいた方が良かろう」


 道造さんは、俺の今の経済状況を理解している。

 その上で、スマホを持っても問題はないと判断したのだ。


「インターネットを見られる環境が必要なんでしたっけ」


「そうじゃ。だから、スマートフォンじゃな。ガラケーでは駄目じゃ」


「食べ終わったら、スマホを買いに行ってきます」


「なら、わしもついて行こう」


 駅近の某大手電機量販店なら、いろいろな携帯会社の窓口があったはずだ。

 そう。

 俺が学校をさぼって、よくマッサージチェアで寝ていた電機量販店。

 俺と道造さんが初めて出会った場所。


「あそこなら、スマホを買えましたよね」


「わしが、マッサージチェアを買った店じゃな?」


 俺の思い浮かべた店を、道造さんも思い浮かべていたらしい。


「あそこが一番近いですよね」


「だろうな」


「パチンコのほうはいいんですか?」


「そんなに時間はかからんじゃろう。それに天心には、保護者がおらん。中学生じゃと保護者が必要じゃと言われかねん。探索者という仕事についており、探索者口座も持っておるから、それで間に合うかもしれぬがのう」

 

 ……そういうことか。

 俺だけで買いに行っても、契約してもらえない可能性があるということらしい。

 確かに、同級生のほとんどは、親の名義で買った携帯を持たされているはずだ。

 もしもの時には、俺の保護者になってくれるつもりなのかな。


 俺は、道造さんの深い思いやりに感謝した。


「ありがとうございます」


「よいよい。大したことではないわい」


 俺は、最後の餃子を口に入れる。

 道造さんも、食べ終わって俺の食べ終わりを待って立ち上がった。

 そして、請求書を掴んでレジのところに進んだ。


 おごってもらっちゃっていいんだよね。

 無理に払うっていうのも、悪いような気がするし。



「ごちそうさまになりました」


 店から出たところで、道造さんに頭を下げた。


「よいよい。天心がいるとフィーバーするからのう」


 俺のせいではないかもしれないが、確かに俺がいる時は必ずフィーバーしていた。

 道造さんは、いつもフィーバーしているのだとばかり思っていたが、俺のいないときはフィーバーしなかったりするのだろうか。

 それとも、俺の心に負担がかからないように、こう言ってくれたのだろうか。


 たぶん、俺に負い目を感じさせないためにこんなことを言ったのだと思った。

 そのくらい道造さんは、俺にとってはカリスマ的に勝ち続けていた。


「んじゃ、行くぞー」


 量販店に向かって歩き始めた道造さんの後についていく。


 駅近の五階建ての大きなビルが、全て電機量販店で占められている。

 ガラス張りの外壁は、太陽を受けて白く光り、まるで巨大なスマートフォンの画面みたいに空を映していた。

 

 俺たちは、自動ドアをぬけて冷えた空気に包まれる。

 エレベーターに乗って、いろいろな携帯会社の窓口がある三階に昇った。


 エレベーターの扉が開くと、色とりどりのロゴとポスターで埋め尽くされていた。


 ここは同じフロアのなかで、いくつもの携帯キャリアが客を奪い合う戦場だ。


 道造さんは、ずらりと並ぶカウンターを見渡す。


「どこにするかのう」


「全部を見て比較しましょう」


「そうじゃな」


 ぐるりと一廻りして比較検討。


「え! 一円でスマホが買えるんですか?」


 俺の目を引いたのは激安の商品。

 最新型ではないが、たぶん一世代前のモデルだろう。


「こっちは、二万円キャッシュバックじゃと」


 道造さんも他のポスターを指さす。


 スマホを買って金がもらえるなんて、なんだか意味不明だ。


「どれがいいんですかね?」


「わしにも分からん」


 若い店員が近づいてきて、にこやかに頭を下げた。


「本日はどのようなご用件でしょうか?」


 一瞬、言葉が詰まる。

 この人は、どこの携帯キャリアの人だろう。


「あ、えっと……スマートフォンを、新規で契約したくて」


 声が少し裏返った。


「こちらのカウンターにどうぞ」


「あ、はい」


 訳が分からないうちに、椅子に座らされた。

 目の前の壁に携帯キャリアの大きなロゴ。


 ソーバンクか。

 そういえば、若い店員の制服にもよく見るとソーバンクのロゴが。


「お客さまは、とてもいいタイミングで来店されましたよ。今ならこのスマホが一円でお手元に」


 あ、俺が目をつけた携帯は激安一円スマホなのね。


 俺は、とりあえず話を聞くことにした。


「どれが良いのかよく分からなくて……よく説明してもらえると助かるんですけど」


「お任せください」


 それからこの店員の説明が始まった。


 利用料金。

 データ容量のプラン。

 オプションをつけると割引になって。

 月額いくら、端末代は分割で何回。

 一円じゃないの?

 あ、一円なんだ。


 うーん。

 なんだかよく分からないけど、本体は一円で買えるみたいだ。

 でも、通信料とかオプションサービスをつけなくてはいけないらしい。


 助けを求めて道造さんを見るが、道造さんは目を回している。

 こりゃ、助けを求めるのは無理みたいだね。


 一円ならこれでいいか?

 よく分からないけど、決めてしまえ。


「じゃあ、それでお願いします」


 さて、問題は中学生でも契約できるかだな。


 俺の額から、冷や汗が流れた。




 




 



 

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― 新着の感想 ―
おじさんかっこいい スマホは最近のはよく分かりませんよね笑
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