第54話 参考書購入
第52話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4
職業 怪盗紳士
HP 11(+6042)
MP 0 (+5811)
力 11
防御外皮 11(+1657)
知力 10(+5806)
速さ 11(+1650)
器用さ 15
スキル スチール(ユニーク)レベル5(8個)
スライムの胃袋(6724) レベル3
消化液(3225) レベル3
水魔法 スライムバレット(876) レベル2
火魔法 ファイアバレット(218)
装備 なし
アイテム リュックサック
金 十七万六千円
口座 千四十七万三千三百円
「数学は間に合ってると思うけど、英語は単語帳、長文読解、文法問題集……どれも必要だけど、やっぱり単語帳が基本かしら?」
先生は背表紙を指先でなぞりながら、小さく首をかしげた。
冷房の風に前髪が揺れる。
しばらく棚を見つめたあと、一冊を抜き取って俺に差し出した。
「これなんてどう?」
「『高校生の覚えるべき英単語2500』ですか?」
手のひらサイズのちょっとした辞典みたい。
ページをぱらぱらとめくると、太文字、赤文字の混じった文字たちが、覚えやすいような配列でびっしり並んでいる。
「大学受験も見据えて、このくらい覚えておいてもいいんじゃない? 天心君なら簡単だよ」
以前の俺なら絶対無理だが、今の俺って、知力五千以上だからねー。
簡単のような気がするわ。
「覚えやすそうで、いい感じですね」
先生が満足そうにうなずいた。
「あとは理科かー」
先生は本棚に沿ってすっと移動する。
「理科は何を選択する?」
「『科学と人間生活』とその他1科目か、あるいは物理、化学、生物、地学のうち3科目のどちらかでしたよね?」
俺はすでに、「物理基礎」と「化学基礎」の参考書を松本先生からもらっている。
少ない冊数で済ませるなら、「科学と人間生活」と「物理」、「化学」のどちらかということになるが……それだけでは決められない。
棚の参考書を見ると、「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」。
その隣に「物理」「化学」「生物」「地学」。
カラフルな背表紙の参考書が並んでいた。
保健室での教材として、全部何度か読み切っても時間が余る。
今の俺なら一度読めば記憶しちゃうけどね。
暇をしてるのも無駄な気がするし、知識があるのは良いことだ。
金はあるし、めんどくせーから全部買うか?
選ぶ方が難しいわ。
「全教科買ってこうかと思います。たぶん時間が余っちゃうし」
先生がぴたりと動きを止めた。
ゆっくりとこちらを振り向いて、一瞬呆ける。
「そ、そうよね。……時間が余るか。なら、「物理」「化学」「生物」「地学」の参考書を買っていきましょう。理科はそれで充分よ」
先生が、手際よく四冊を抜き出す。
「次は、社会ね」
そう言いながら、今抜き出した四冊を俺に渡し、先生はさっと歩き出す。
俺は慌てて後を追った。
社会科コーナーは理科よりもさらに広い。
分厚い参考書が何段にも積み重なり、色とりどりの帯が目に入る。
社会科の試験科目は、公共、歴史、地理の三教科だ。
地理、公共の参考書は色々あったが、歴史の参考書は、歴史総合以外にさらに細かく分けられた、日本史、世界史の参考書やその資料集まであった。
松本先生が、それぞれの参考書を一冊ずつ、全部で三冊選んだ。
俺の抱えた参考書の上に、「ぱん!」と軽く重ねる。
「とりあえず、これでいいわ」
松本先生は、満足そうにうなずいた。
そこそこ重いぜ。
俺って、力のステータスは、11なんだよねー。
早くスライムの胃袋に収納したい。
「全部で八冊ですね」
俺は腕の中の参考書を覗きながら言った。
「そうね。多くて重いでしょうけど、このくらいなら持てるでしょう?」
「それは余裕です」
笑って答えたが、実はそんなに余裕はない。
実際、家まで持って帰るには、苦痛を伴う重さだ。
途中で、スライムの胃袋に収納しちゃうからいいけどね。
その時、参考書コーナーの片隅に、高卒認定用の本がかたまってあるのを発見した。
……あれ?
こっちの方がいいんじゃね?
松本先生も気付いたのか、俺と目があった。
「大学受験も見据えて、選んだのよ。たぶん天心君には、その方が役に立つと思うの。時間的にも能力的にも余裕があるからね。そうでなかったら、『高認理科学習室』と『高認社会学習室』の二冊でいいのだけれど」
大学受験も見据えてって、俺は絶対大学には行かないと思うけど。
「過去門集も売ってるけど、それは今度ね」
また買いに来る予定?
「過去門をやるのって、必須ですかね?」
「絶対、やっておいた方がいいわ」
「そうですか。じゃあこの際、買ってっちゃいましょう」
「高卒認定スーパー実践過去門集」シリーズ十冊と「高卒認定4年過去問(主要3科)」、「高卒認定3年過去問(社会系)」、「高卒認定3年過去問(理科系)」の3冊組み。
「高卒認定スーパー実践過去門集」シリーズ十冊は、6回分の過去問が教科ごとに一冊になっているものだ。
過去3年分で十分じゃね?
「この三冊でいいと思うわ」
やっぱり、松本先生もそう思ったんだな。
「十冊シリーズは、持ち帰れない重さになりそうですからね。俺もそれでいいと思います」
松本先生が、その三冊を俺の抱えた参考書の上にのせる。
すごい量になってしまった。
周りの視線が痛いわ。
「五万円はかからないわね。会計を済ませましょう」
先生はレジの方へ視線を向けた。
土曜の午前中。
レジ前には数組の客が並んでいた。
前には、小学生にドリルを選んでいる母親。
その後ろには、就活本を抱えた大学生らしき男性。
レジの電子音が、一定のリズムで鳴っている。
バーコードを通す「ピッ」という音と、レシートを切る機械音。
俺たちの番が来る。
十一冊の参考書が、カウンターにドンと置かれる。
店員が慣れた手つきでスキャンしていく。
ピッ、ピッ、ピッ――
「一万九千六百円になります」
参考書って割と高いんだね。
先生がさっき渡した五万のうちから二万を出すと、店員が丁寧にお釣りを数える。
そのお釣りを、先生が受け取り、三万と合わせて俺に差し出した。
「はい」
「ありがとうございます」
紙袋に入れられた参考書を受け取ると、持ち手が指に食い込む。
「先生、今日はありがとうございました」
店の出口近くで足を止め、俺は頭を下げる。
「別にいいのよ、天心君。それじゃあ、また月曜日に会いましょう」
柔らかい笑顔。
「はい。よろしくお願いします。それではこれで」
俺は大きく腰を曲げて、きっちり礼をした。
自動ドアが開く。
外の熱気が、一気に流れ込んできた。
さっきまでの冷房の空気とはまるで違う。
アスファルトの熱と、車の排気と、夏の匂い。
駅前のロータリーではバスが発車し、ブレーキの空気音が鳴る。
信号待ちの人の列。
蝉の鳴き声が、ビルの隙間から聞こえてくる。
書店を出ると、それぞれの方向へ自然に分かれた。
先生は駅の改札へ向かう。
白いスカートが人混みの中で揺れ、やがて見えなくなる。
フー! やっと終わったぜ。
先生と一緒なんて、これほど疲れることはないぜ。
俺は自宅方面へ歩き出す。
さて――どこかで本を収納しよう。
紙袋に包まれた参考書を睨む。
誰にも見られないところじゃないと、まずいよね。
紙袋の中には、分厚い参考書がぎっしり詰まっている。
これを突然消したら、完全に怪しい。
駅前は人が多すぎる。
コンビニ前には学生の集団。
ベンチには高齢者。
横断歩道には絶え間なく人が流れている。
俺は歩きながら、さりげなく周囲を観察する。
ビルとビルの間の細い路地。
裏手の駐輪場。
立体駐車場の陰。
どこがいいかな?
いろいろ考えたあげく、裏手の駐輪場に向かう。
途中、周りから見られていないのを確かめて、さっと参考書をスライムの胃袋に収納した。
何食わぬ顔で引き返す。
誰にも怪しまれてはいなかった。
よしよし。
手ぶらになった俺は、道造さんが通っているパチンコ店が近いことを思い出した。
というより、駅前に来た時から横目でちらりと見ながら通り過ぎていたのだ。
道造さんとは、しばらく会っていない。
一週間くらいで「しばらく会ってない」と感じてしまうのは、少し依存気味なのかもしれない。
確かに、一番親しいのは道造さんだと思う。
道造さん、……いるかなあ。
俺は、道造さんに会うために、駅前通りのパチンコ店に向かった。
第54話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4
職業 怪盗紳士
HP 11(+6042)
MP 0 (+5811)
力 11
防御外皮 11(+1657)
知力 10(+5806)
速さ 11(+1650)
器用さ 15
スキル スチール(ユニーク)レベル5(8個)
スライムの胃袋(6724) レベル3
消化液(3225) レベル3
水魔法 スライムバレット(876) レベル2
火魔法 ファイアバレット(218)
装備 なし
アイテム リュックサック
金 十五万六千円
口座 千四十七万三千三百円




