第52話 駅前の書店で参考書を
第49話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4
職業 怪盗紳士
HP 11(+5402)
MP 0 (+5171)
力 11
防御外皮 11(+1529)
知力 10(+5166)
速さ 11(+1522)
器用さ 15
スキル スチール(ユニーク)レベル5(8個)
スライムの胃袋(5564) レベル3
消化液(2905) レベル3
メタル化1(体を金属に変える。消費MP2)
水魔法 スライムバレット(852) レベル2
火魔法 ファイアバレット(114)
装備 なし
アイテム リュックサック
金 十三万八千円
口座 千四十七万三千三百円
午後は、英語を勉強し、定時で学校を出る。
その後は、いつものように池袋西探索者ビルに向かった。
松本先生は仕事があるので、参考書を買いに行く件は、今ある参考書を終わらせるまでに行けばいいということで、先生の都合に合わせることにした。
俺は、いつでも大丈夫だからね。
池袋西探索者ビルに着くと、ロッカールームで運動着に着替える。
今日もオレンジ色のスライムをメインに狩りをするつもりだ。
ゲートの守衛さんも、クロークのお姉さんも、俺を呼び止めたりしなかったので、マッチョの指導員さんが俺に用があるということはないのかもしれない。
帰りに呼ばれる可能性は残っているけど。
オレンジ色のスライムゾーンに走って向かい、そこで狩りを始める。
変わったスライムとの出会いを期待するが、そんなことはなかなか無い。
時間までオレンジ色のスライムを狩り、腕時計で時間を見て引き返した。
クロークで買い取りしてもらう。
ダンジョン内で手に入れたものは、もれなくここで買い取ってもらわなくてはならない。
持ち出しは禁止なのだ。
三階で売っている武器や防具もここで預けてビルから外には持ち出してはいけない。
外で銃刀法が適用される銃や刀も売っているからね。
今日は64匹狩ったので、三万八千四百円になった。
昨日よりいい稼ぎだ。
クロークのお姉さんは、ここでもマッチョの指導員さんを呼びにいかないから、『特別な探索者』の件はなしかもしれない。
良かったぜ。
二階のパーラーで夕食を食べて帰る。
自宅に帰ると風呂に入って寝るだけだ。
そんな感じで木、金と過ごし、週末を迎えた。
土曜日。
水、木、金の三日間で、国語、数学Ⅰ、数学Ⅱ、英語、物理基礎、化学基礎の参考書は、ひととおり目を通した。
今ある参考書が終わりそうになるまでに、そのほかの教科の参考書を買いに行く約束だった。
そういうわけで、今日は駅前の書店で参考書を買う予定だ。
俺としては、平日でも構わないし、しばらく後でもかまわなかった。
今ある参考書を繰り返し目を通していればいいのだから。
先生が、仕事の関係もあり、個人的にも本屋に行きたいというので、時間を作れる土曜に決定。
先生って、平日は学校が終わった後も忙しいんだね。
十時に松本先生と現地で待ち合わせ。
落ち合う場所は、駅前の大型書店、その二階にある参考書コーナー。
土曜の朝の駅前は、平日よりも人の流れがゆるい。
焼きたてパンの匂いがどこからか漂ってきて、駅ビルのガラス窓に朝の光が反射していた。
俺は腕時計を確認する。九時五十分。
待たせないように、10分前に来た。
自動ドアが静かに開き、書店の中に入る。
空調の効いたひんやりした空気が、外の陽気と少しだけ違う。
店内は思ったより広かった。
一階は文芸書や雑誌が並び、平台には新刊が山のように積まれている。
エスカレーターで二階へ上がる。
上がった先の奥、壁一面にずらりと並ぶのが参考書コーナーだ。
科目ごとに棚が分かれ、赤や青、黄色の背表紙が規則正しく並んでいる。
「大学受験」「共通テスト対策」「基礎問題集」――
帯の文字がやけに主張してくる。
俺は数学の棚の前に立ち、適当に一冊抜き取った。
ページを開くと、真新しい紙の白さが目に刺さる。
例題と解説がびっしり並び、問題番号が整然と続いている。
ぱらぱらとページをめくる。
解法の流れを目で追い、頭の中で一瞬で整理する。
……なるほど。
数学Ⅰはだいたいわかるじゃん。
参考書を棚に戻し、今度は英語の棚へ移動する。
単語帳、長文読解、文法問題集。
どれも似たようで、微妙に構成が違う。
うーん。
立ち読みするだけでも、かなり勉強になるな。
店内のスピーカーから、控えめなBGMが流れている。
遠くで子どもが小さくはしゃぐ声。
誰かが脚立を動かす金属音。
俺は再び腕時計を見る。
九時五十七分。
「天心君!」
背後ろから、少し弾んだ声がかかる。
振り向いた瞬間――言葉が、喉の奥で止まった。
いつもの白衣姿とはまるで違う松本先生がそこにいた。
私服の松本先生は初めて見たぜ。
薄い水色のブラウスは、夏の空みたいに淡くて、光をやわらかく弾いている。
鎖骨のラインがさりげなくのぞいていて、そこに落ちる影が妙に目を引いた。
白いロングスカートは、足首近くまで流れるように伸びている。
歩くたびに裾が揺れ、その動きが軽やかで、まるで夏の風そのものみたいだ。
無駄のない立ち姿が、そのシルエットをいっそう際立たせている。
袖は七分丈。
細く整った手首がすっと伸びていて、指先まできれいだ。
爪は控えめな色で整えられていて、派手さはないのに目が離れない。
髪は下ろされ、肩のあたりでやわらかく波打っている。
光を受けて、黒に近いその色がほのかに茶を帯びる。
保健室ではまとめられていることが多いから、こんなふうに流れる髪を見るのは新鮮だった。
顔立ちは、改めて見ると整いすぎている。
すっと通った鼻筋。
長いまつ毛の影が頬に落ちる。
笑う前の、わずかに持ち上がる口元の線まで、やけに繊細だ。
肌は夏の光の中でも白く、けれど不自然な白さじゃない。
ほんのりと血色を帯びていて、健康的で、それでいて透明感がある。
――え、誰?
一瞬、そう思ったくらいだ。
まるで別人じゃん。
先生がこちらへ歩いてくる。
背筋がまっすぐで、歩幅は小さめなのに、不思議と目を引く。
首元にかかる細いネックレスが、小さく光った。
保健室で「竜田揚げをあげようか?」って言ってた人と同一人物か?
「待たせちゃったかしら?」
額にうっすら汗がにじんでいる。
夏の空気のせいか、少しだけ頬が赤い。
「い、いえ……今来たところです」
ヤベー、声が裏返りそうになっちゃったぜ。
普段は「先生」という肩書きが先に来るのに、今日は違う。
大人の女性。
しかも――めっちゃ綺麗。
白衣で隠れていたラインとか、姿勢の良さとか、全部が露わになっている。
……落ち着け、俺。
相手は先生だ。
あんまりじろじろ見ちゃいけない。
俺はとりあえず、手に持っていた英語の参考書に視線を落とす。
開いたページには長文読解。
びっしりと並んだ英文と、その下に続く設問。
さっきまでなら、ざっと目を通せば構造はすぐ掴めたはずだ。
主語、動詞、関係代名詞――頭の中で自然に分解できていた。
なのに今は、アルファベットの羅列がただの模様にしか見えない。
俺、どうしちゃったんだ?
「あら、英語の参考書ね。確かにあの本だけじゃ足りないわね。単語帳、長文読解、文法問題集。いろいろ買っていきましょう」
「そ、そ、そうですね」
松本先生の私服姿に動揺する俺の答えは、たどたどしかった。
先生は、ハッと気づいたように口を押さえた。
「ごめんなさい。予算のことを忘れていたわ」
俺の家が、貧乏なことを思い出したのだろう。
勘違いですよ先生。
俺、今じゃ高給取りだと思うんですけど。
財布には十七万以上入っている。
俺はとりあえず、財布を出して五枚ほど万札を渡した。
松本先生の目が驚きに見開かれる。
そして、俺を疑うような視線を向けた。
第52話終了時
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4
職業 怪盗紳士
HP 11(+6042)
MP 0 (+5811)
力 11
防御外皮 11(+1657)
知力 10(+5806)
速さ 11(+1650)
器用さ 15
スキル スチール(ユニーク)レベル5(8個)
スライムの胃袋(6724) レベル3
消化液(3225) レベル3
メタル化1(体を金属に変える。消費MP2)
水魔法 スライムバレット(876) レベル2
火魔法 ファイアバレット(218)
装備 なし
アイテム リュックサック
金 十七万六千円
口座 千四十七万三千三百円




