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祝10万PV達成 『親ガチャ失敗・俺の親、泥棒ですが何か!』 怪盗紳士は『スチール』極めて成り上がる。  作者: 米糠


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第51話 田淵先生

第49話終了時


 赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル4

 職業    怪盗紳士

 HP    11(+5402)

 MP    0 (+5171)

 力     11

 防御外皮  11(+1529)

 知力    10(+5166)

 速さ    11(+1522)

 器用さ   15

 スキル   スチール(ユニーク)レベル5(8個)

 スライムの胃袋(5564)   レベル3

 消化液(2905)   レベル3 

 メタル化1(体を金属に変える。消費MP2) 

 水魔法    スライムバレット(852)  レベル2

 火魔法    ファイアバレット(114)

 装備    なし


 アイテム  リュックサック 

 金 十三万八千円

 口座 千四十七万三千三百円



 

 トイレから出ると、職員室に入っていく委員長の平田が見えた。


 ……フーン。


 委員長も、いろいろあるんだろうな。


 呼び出しか、それとも何かの報告か。

 真面目なやつだから、頼まれごとも多いに違いない。


 けれど、それ以上考えることもなく、俺は視線を外した。

 他人の事情を詮索する趣味はないからね。


 別に気にせず保健室に戻る。

 その時は分からなかったが、これが後の事件に関係していたのかもしれない。


「おかえり」


 松本先生が、もう机を整え、給食を用意してくれていた。


 机の上には、ビニールに包まれた丸いパン。

 ひんやりとした牛乳パック。

 銀色の食器の中には、こんがり揚がった鶏肉の竜田揚げが三つ。

 脇には、千切りキャベツと人参の入った野菜サラダ。


 揚げ油の香ばしい匂いが、ふわりと鼻をくすぐる。


「今日は竜田揚げよ」


「いいですね」


 俺は椅子を引き、がた、と小さな音を立てて腰を下ろす。

 別に嫌いなメニューはない。

 食べられれば何でもいい。

 俺に、苦手な食材はない。

 そもそもそんな贅沢は、かーちゃんに許されなかった……ていうか出されたものを食べないと腹が減る。


 俺は、手を合わせるなりパンを割り、竜田揚げにかぶりついた。

 衣がさくりと音を立てる。

 中の鶏肉は熱をまだ残していて、噛むとじわりと肉汁が広がった。

 牛乳を一気に半分ほど流し込み、サラダもまとめて口に入れる。

 バクバク、という言葉が似合う食べ方だと思う。

 松本先生の前だからと言って、お上品に食べる必要はないからね。


 そんな俺を松本先生は、面白そうに見つめながら給食をお上品に食べている。


「竜田揚げを一つあげようか?」


 箸でつまんで、にこりと笑った。


「いえ。結構です」


「遠慮しなくてもいいのよ」


「遠慮なんてしてないです。俺、そんなに大食いじゃないですよ」


 先生は少しだけ目を丸くした。


「そうなの? このくらいの時は、男の子はいくらでも食べるのに」


 それは、そういう奴もいるかもな……運動部のやつとか。


 でも俺は、どちらかと言えば少食だと思う。

 家は貧しかったから、日頃、そんなに食うものがなかった。

 飯だけは、あったけど。


 俺は最後の竜田揚げを口に放り込み、両手を合わせる。


「ごちそうさまでした」


「早いわね……」


 先生の皿には、まだ半分以上残っている。

 先生が少し驚いた顔をした。


 俺は牛乳パックをぺたんと畳みながら、なんとなく視線を窓の外に向けた。


 昼の校庭では、もう食べ終えた連中がボールを追いかけている。

 歓声が、かすかにガラス越しに届く。


「失礼するよ」


 ガラリ、と保健室の引き戸が突然開かれた。

 入ってきたのは、俺のクラス担任――田淵だった。


 黒ぶちメガネの奥の目は鋭く、きっちり剃っているはずなのに青く残る濃い髭あと。シャツの袖の上からでも分かる太い腕。

 柔道三段という噂も、あながち嘘じゃないと思わせる体格だ。

 動くたびに、制汗スプレーでごまかしきれない男臭い匂いがふわりと漂った。


 ……なんか、いやな予感。


「おう。赤嶺、いたな」


 低く響く声が、白いカーテンに囲まれた保健室に重く落ちる。


 そりゃいるよ。ここで授業を受けろって言ったの、あんたじゃん。


「えーと……俺に何か用ですか?」


 田淵は腕を組み、わずかに眉をひそめた。


「あのな。おまえにカンニング疑惑が出ててな。 同級生から『おかしい』って訴えが上がってる」


 ……昼に平田が職員室に入っていったのはこれだったのか!

 訴えたのはあいつじゃん!

 俺は昨日、平田が俺に不正を働いただろうと言いがかりをつけてきたのを思い出した。


「カンニングって言っても……満点の人は他にいないんだし、俺はここで一人でテストを受けたんですから、他の人の答案なんて見れませんよ」


 俺が言うと、田淵は「それはそうだが」と顎に手をやった。


「だが、やり方は色々ある。どこかに答えを書いておいたとか、携帯を使って調べたり、誰かに聞いたりしたとか」


 酷い言いがかりだ。


「俺、貧乏なんで携帯は、持ってないんですけど」


 思わず不敵な笑いが漏れちまったぜ。

 貧乏万歳。

 携帯説、完全論破!


「それに、どこかに答えを書いておくって……五百点満点分ですよ? 体じゅうに書いても無理じゃないっすか」


 少し皮肉を込めて言ってやる。

 田淵! お前、俺にまた冤罪をかぶせる気か?


「……うーむ」


 田淵が唸り、太い指が腕をとんとんと叩く。


 そのとき、静かだった松本先生が一歩前に出た。

 その表情はいくぶん不快の色を帯びている。


「田淵先生。私が監督していましたから、赤嶺君が、カンニングをしていないのは間違いないです」


 やわらかい声なのに、不思議と芯が通っている。


 田淵は視線を松本先生に移した。


「そうは言っても、500点満点だからね。今までの点数から考えると、ありえないんじゃないかって……生徒たちから声が上がってて」


「赤嶺君、今までほんとに勉強したことなかったみたいで――、私が教えたらすごくできるようになって。……ほんとに頭が良かったんですよ。正直、信じられないくらいに」


 田淵先生はしばらく黙り込んだあと、ゆっくりと息を吐いた。


「松本先生。それが本当なら……もう一度、別の問題で確認しても大丈夫ってことですか?」


「はい。何度やっても90点以上は取れると思いますよ」


 おいおい――それじゃあ、追試じゃねーかよ。


 俺は疑われていたっていいんだけど――、追試を受けるより。


「赤嶺! そういうわけだから、もう一回テストを受けてもらうぞ」


 マジかよ……めんどくせー。


「疑われたから、再テストってひどくないですか? そんなら、疑ったやつにも受けさせてくださいよ。時間だって、けっこう潰されるわけなんだし」


 この際、平田にも受けてもらおうぜ。

 『他人を呪わば穴二つ』ってやつだ。


 俺は、道づれ案を主張した。

 田淵が、少し嫌そうに顔を歪める。


「田淵先生。赤嶺君が、今、解いてた数学の例題です。彼は、今数学Ⅰの参考書で高校生の勉強を始めました。中学のカリキュラムは数日で終わらせてしまったんです。見てください」


 松本先生が、今俺が使っていたノートを田淵に渡す。


 田淵が受け取り、ペラペラと俺のノートを精査して眉根を寄せた。


「これ、本当に赤嶺がやったんですか?」


「はい。今日ここに来てからの分がそれです。私も信じられないものを見ているようです」


 田淵の問いに松本先生が答えた。


 まあね――知力が常人の517倍だからねー。


「うーん。その数学Ⅰの参考書の問題を試しに解いて見せてくれ」


 田淵が松本先生から渡された数学Ⅰの参考書を受け取り、適当にめくって設問を指さし俺に渡す。


「この問題ですね」


 俺は、田淵が指示した問題の答えをノートにすらすらと書く。

 一問ぐらいなら、再テストより、よっぽどいい。


「うーん。途中経過もちゃんと書けてるな。信じられないが目の前で見せられてはなあ」


 表情は硬いが、田淵もこれで納得したのだろう。


「分かった。今回は俺が何とかしておく」


 何とかするって、平田をか?

 別にあいつが、何と言おうが、どう思おうが、俺は気にしないけどね。


 田淵が保健室を出て行った。


 松本先生が、窓を全開にする。

 やっぱり松本先生も臭いと思っていたらしい。


 田淵の匂い、早く消えろ。







 

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