第33話 10匹
「スチール!!」
スライムバレット2をスチールしました。
速さ2をスチールしました。
4匹目のスライムが、その場で凍りついたように動きを止める。
だが、残りの6匹が一斉にこちらへ体を震わせ、次の瞬間、空気を裂くような音とともに、消化液の弾丸が矢の雨のように飛び出した。
レベル4のスライムにとっては、3メートルは射程範囲内らしい。
視界いっぱいに迫りくる、半透明の弾丸。
一発、二発じゃない。
同時ではないとはいえ、六匹分だ。
十二発、いや、それ以上。
隙間を埋めるように、間を詰めて連射される。
途切れる瞬間がない。
俺は反射的に地を蹴った。
横へ、斜めへ、後ろへ。
スピードを最大限に生かして、紙一重で弾丸をすり抜ける。
一歩でも判断を誤れば、直撃だ。
――速さがあって、助かった。
心臓が喉までせり上がるのを感じながら、俺はひたすら回避し後退する。
躱す。
躱す。
躱し続ける。
だが、逃げるだけでは敵の攻撃は、終わらない。
弾幕は、決して尽きない。
息を乱しながら、俺は叫ぶ。
躱しながら、スチールを唱える。
「スチール!!」
詠唱と同時に、意識を一点に集中させる。
狙うは――次の一匹。
スライムバレットと速さ。
弾丸が頬をかすめる。
冷たい感触に、背筋が凍る。
スライムバレット2をスチールしました。
速さ2をスチールしました。
5匹目のスライムが沈黙する。
だが、残り5匹の攻撃が、間髪入れずに続く。
次の瞬間、別方向から消化液の弾丸が飛び込んできた。
意識が1匹に集中しすぎた。
しまっ――
咄嗟に身をひねる。
直撃は免れたが、肩口をかすめた消化液が運動着を溶かし、じりっとした熱が走った。
「くっ……!」
回避が、ギリギリだ。
防御外皮が1削られました。
防御外皮が1削られた?
ダメージは、たったそれだけか?
確か俺の防御外皮は470位あったはずだ。
運動着に穴が開いたのは痛いが、命の危険はなさそうだ。
――なら、多少の飛弾は覚悟して反撃を厚くしよう。
「スチール!!」
スライムバレット2をスチールしました。
速さ2をスチールしました。
6匹目が止まる。
こっちも1発もらったが、代償は防御外皮が1減るにとどまった。
その代わり、敵の弾幕が目に見えて薄くなった。
残り4匹。
さっきまでの嵐が、嘘のようだ。
弾丸の間隔が広がり、回避に余裕が生まれる。
俺は、呼吸を整えながらスチールを重ねた。
その後は、1発ももらわず、10匹すべてのスライムの動きを封じる。
あとは、もらうものをもらうだけだな。
余裕を取り戻した俺は、動かなくなったスライムたちに、淡々とスチールを当て続けた。
10匹全てのスライムを倒し、魔石を回収する。
「フー」
大きく息を吐いて、座り込んだ。
くくくく……いやいやまいった。
消化液の弾丸を食らっても、ダメージは防御外皮が1減るだけか。
2発食らって合計で2減っただけ。
この戦いでスチールした防御外皮は1匹につき2だから20。
逆に18も増えてるじゃん。
しかも、たぶん失われた防御外皮も、時間で自然回復するんじゃないだろうか?
心配して損したような……でも運動着を買いなおすことを考えると七千円くらいは損害が出たのか?
穴の開いた運動着を見ながら、継ぎ当てして探索用にはこれを着ようと決めた。
スライムを相手に焦った自分が、さすがに恥ずかしい。
くくく、はははは。
あーあ……どうするかな。
こうなったら、スライム相手に無双と決め込むか。
スライムバレットを10発や20発受けたとしても、たいしたダメージにならないことが分かったぜ。
いや、金銭的には大きなダメージがあったけど。
俺はすくっと立ち上がると、またスライムを狩るために、ダンジョンの奥へと向かった。
その後は現れるスライムに、ビビることなく討伐を続けた。
どんどん進んでいくと、レベル5のスライムにも遭遇する。
レベル5のスライムのステータスは、
HP 10
MP 10
力 0
防御外皮 2
知力 10
速さ 2
器用さ 0
スキル
スライムの胃袋 10
消化液 5
水魔法・スライムバレット 2(消化液を同時に2発、弾丸として飛ばす。消費MP1)
スライムゼリー 1個
だった。
スチール13回ですべてを盗み、倒すことができた。
1匹倒すのに、けっこう手間がかかるが、しっかりすべてを奪って倒す。
どんどん進んでいき、ダンジョンの一つの道の最深部に到達した時には、現れるすべてのスライムがレベル5だった。
そしてここでもスライムが多量にたむろしている。
ここで行き止まりだな。
買った地図でもそうなっている。
さて、この多量のスライム相手に、無双といくか。
でもできるだけ、弾には当たらないように気をつけよう。
負けることは考えられないが、運動着が穴だらけになって継ぎ当てできないようになるのは困るからね。
それにしても多いな。
遠目から数を数える。
21匹もいるぞ。
うーん。
運動着が溶かされまくって、裸にされそう。
戦わずに逃げようかな。
そんなことを考えていると、スライムたちがおかしな動きを始めた。
すべてのスライムが寄り添い、重なり合い、一つの塊のようになっていく。
最終的には1匹の大きなスライムになった。
え! これスライムキングみたいじゃん。
王冠は被っていないけど、ド〇クエに出てくるスライムがスライムキングに変身するのと同じ動き。
すげーでけー!
やっぱり、こいつ(スライムキング?)は強いのかな?
スライムキングはプルプルと揺れながら、俺を睨んでいるように感じる。
目がないから、睨めないんだけどね。
少なくとも、俺を意識して集合、合体してキングに変身したんだよね。
ボヨンと一跳び、2メートルは近づいたいたかな?
俺は、2メートル後ずさる。
どうしようか?
戦うか?
逃げるか?
逃げられないということはないだろうと思うけど。
俺の速さのほうが、圧倒的に速いはずだし。
仮に21匹分のステータスを合算したのがこいつのステータスだとすると、こいつのステータスは、
HP 210
MP 210
力 0
防御外皮 42
知力 210
速さ 42
器用さ 0
スキル
スライムの胃袋 210
消化液 105
水魔法・スライムバレット 42(消化液を同時に42発、弾丸として飛ばす。消費MP1)
スライムゼリー 21個
となるのだが、合体したことによるプラスαがないとは言えない。
他に変な魔法を使ってくるかもしれないし、それがなくてもスライムバレット42発を避け続けるのは至難の業だ。
厳しいな。
42発の弾幕はさすがに厳しいぞ。
合体しているだけに、一気に42発が飛んできそうだし、そうすると本当に避けるところがなくて、一回の攻撃で、10発くらいは食らいそうだ。
俺の防御外皮はこの前470位あったから、今日スチールしたぶんで相当増えてはいるはずだ。
ここは一度、ステータスのチェックはしておいた方が良いだろう。
「ステータス・オープン!」
赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル3
職業 怪盗紳士
HP 10(+2505)
MP 0 (+2287)
力 10
防御外皮 10(+862)
知力 9 (+2282)
速さ 10(+855)
器用さ 14
スキル スチール(ユニーク)レベル4
スライムの胃袋(2110) レベル3
消化液(1365) レベル3
魔法 スライムバレット(355) レベル2
装備 なし
スライムゼリー244個
スライムの魔石244個
なるほど、防御外皮は872あるのか。
スライムキングは、またボヨンと一跳び俺に近づいてきた。
レベル5のスライムのステータス
HP 7→10
MP 7→10
力 0
防御外皮 2
知力 7→10
速さ 2
器用さ 0
スキル
スライムの胃袋 7→10
消化液 5→5
水魔法・スライムバレット 2(消化液を同時に2発、弾丸として飛ばす。消費MP1)
スライムゼリー 1個




