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祝35万PV達成 『親ガチャ失敗・俺の親、泥棒ですが何か!』 怪盗紳士は『スチール』極めて成り上がる。  作者: 米糠


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30/225

第30話 かーちゃん

 


 俺はその後、国語を教わって学校を出た。

 もちろん去年のテスト問題で満点を取っている。

 松本先生も、柔らかな笑顔で俺を送り出してくれた。

 校庭には部活の掛け声が響いていた。


 明日は土曜日で、お休みだ。

 月曜から二学期の分の勉強をすることになるのだろうか。


 家に着くと、かーちゃんはまたいなかった。

 玄関を開けた瞬間、生活の気配が薄いことに気づく。

 てっきり仕事から帰ってきて、寝ているかと思っていたが、予想は外れていたようだ。


 これで三日は会っていない。


 家の中を見回して、かーちゃんの痕跡を探す。

 今朝と何か変わったところがあれば、かーちゃんが帰ってきて、また出かけた証拠になるが、どこも変わっていない気がする。


 部屋の照明も朝から変わっていない。

 炊飯ジャーのご飯も減ってはいない。

 流し台の食器も、俺が朝に見たまま動いていない。


 ……まさか、かーちゃん、三日間帰ってきていないのかな?


 そんなことありえないよね。


 なんとなく胸騒ぎがした。


 大きくゆっくり息を吐き出す。


 きっと今に帰ってくるさ。

 たぶん仕事に行ってるだけだ。

 そうだ、そうに決まってる。


 このまま池袋西探索者ビルに行って、今日の仕事をするべきか。

 それとも家で、かーちゃんの帰りを待つべきか。


 俺は、結論を出せずに暫くそのまま立ち尽くしていた。

 結果的に俺は家でかーちゃんを待っていた。


 気を取り直して台所に立つ。

 味噌おにぎりを作って晩飯にする。

 その後は風呂に入ってテレビを見る。

 バラエティ番組の笑い声が部屋に響くが、どこか空虚だ。


 夜八時になってもかーちゃんは帰ってこない。


 お水系の仕事で、今晩も帰って来ないという可能性だってないわけじゃない。

 男と一緒に、俺を捨ててどこかに逃げたなんて……ないよね。

 事故にあって、病院に入院してるとか?


 考えたくない想像が、勝手に頭に浮かぶ。


 今に……突然帰ってくるかも。

 ドアが開く音がして、「ただいま」って声がするかも。


 テレビの中身が、まったく頭に入ってこない。

 時間が止まったように流れていく。


 気が付くと、もう時計は十一時を過ぎている。


 俺は、布団をひいて横になる。

 天井の木目が、俺を見つめる目のように感じられた。


 クソ! 

 ……眠れねーじゃん。


 俺は、ガバッと体を起こす。

 首を左右に振って、嫌な考えを振り払う。


 俺は、布団から出て体操着に着替えると、顔を軽く掌でたたいてから家を出た。


 こういう時は、走って全てを忘れよう。

 俺は暗い夜道を駅前に向かって走り出した。


 電柱の明かり、閉店した店の看板灯を頼りに走り抜ける。

 全力で走ると速すぎるので、適度な速さに加減するが、それでも早い。


 あっという間に駅に着いた。 

 シャッターの下りた改札と、静まり返ったロータリー。

 もう終電も終わっていた。


 俺はその場で踵を返し、再び自宅を目指す。


 くそったれ!


 今晩かーちゃんは帰ってこないこと確定じゃん。


 ほんとにかーちゃんは、どこに行ったんだよ。


 無我夢中で走り続け、気が付いたらもう自分の家の前だ。

 玄関の前で立ち止まる。


 ドアノブに手を伸ばしかけて、やめた。

 中に入ったところで、何かが変わるわけじゃない。


 寝るか?

 寝れるか?


 寝れそうにない。

 目を閉じたら、余計なことばかり考えそう。


 もう1周するか……それとも――スライムを狩るか。


 八つ当たりじゃないけど……スライム狩りに集中すれば、かーちゃんのことは考えなくて済むかもしれない。


 俺は、また走り出した。

 今度は加減せず、人の目も気にせず全力だ。


 今はもう、一時過ぎ。

 この時間、裏道になら人も車もいないはずだ。


 一気に池袋西探索者ビルまで駆け抜ける。

 異常なスピードで駆け抜けても、目撃者には出会わなかった。


 池袋西探索者ビルに入ると受付窓口は一つだけ空いていた。

 つまりゲートは開いているということ。

 この前徹夜をした時の状況で、開いていることは分かっていたけどね。


 息を切らせてゲートを通り、ロッカールームをスルーして第一階層に突き進む。


 いたいた! スライム!


「スチール!」


 声を出すと、少しだけ楽になる。

 考える前に体が動き、同じ動作を繰り返す。


 俺はスライムを狩り続けた。


 何匹倒したか、途中から分からなくなった。

 百匹ほど狩った頃、ようやく強い眠気が押し寄せてくる。

 たぶん明け方近くになったのだろう。


 ロッカールームで、リュックに魔石とスライムゼリーを詰め、クロークで買い取ってもらう。


「スライムの魔石とスライムゼリーを103個ずつですね。六万千八百円です」


 金を受け取り外に出ると、東の空がうっすら明るくなりかけていた。

 夏とはいえ、明け方の空気はひんやりしている。

 夜が終わってしまったことだけが、少し怖かった。


 眠いけど、家に帰ってから眠ろう。

 かーちゃんが帰ってくるかもしれないし。


 俺は眠いのを我慢して、自宅に向かって人並みのスピードで走り出した。

 まだバスは動いていないから仕方ない。


 家に着いた時にはもう東に朝日が昇っていた。


 玄関を開ける瞬間、ほんの一瞬だけ期待したが、家の中は静まり返っていた。


 予想通りかーちゃんは帰っていない。

 そのまま布団に潜り込む。

 眠りはすぐにやってきた。


 目が覚めると昼だった。

 あたりを見回すが、やはりかーちゃんはいなかった。


 起きだして、炊飯ジャーで塩おにぎりを作る。

 ご飯が余っているので、残さぬように夜用のおにぎりも作っておく。

 もうご飯が硬くなってきていて、今おにぎりにするのも限界だから。


 ……ご飯、炊いておかなくてもいいよね。


 こりゃあ、本当にかーちゃん帰ってきそうにないわ。


 家出?

 駆け落ち?

 事故で入院?


 事故で入院してたら、何かしら連絡があってもよさそうだよね。


 やっぱ、俺……捨てられたのかな。


 はっきり言って、俺より男を取るのは分かるよ。

 俺って何の役にも立ってないしね。

 単なるお荷物じゃん。


 せっかく金を稼げるようになったんだから、最初の金で、かーちゃんになにか買ってあげればよかったのかな。


 ちょっと、そこまで気が回らなかったわ。

 バス代とか、飯代とか、手元に金を残しておきたかったってのもあったしね。


 今なら、10万以上手元にあるから、何かしら買ってあげる余裕もあるのになあ。


 帰ってきたら、何か買ってあげよう。

 うん、そうしよう。


 さて、またスライムを狩りに行こう。

 うん、そうしよう。


 俺は、塩おにぎりをほおばり、夜用の塩おにぎりはスライムの胃袋に収納して家を出た。





 

第30話時


 赤嶺天心 ヒューマン 14歳 レベル3

 職業    怪盗紳士

 HP    9→10(+1146)

 MP    0   (+968)

 力     9→10

 防御外皮  9→10(+464)

 知力    8→9 (+963)

 速さ    9→10(+457)

 器用さ   13→14

 スキル   スチール(ユニーク)レベル3

       スライムの胃袋(791)レベル2

       消化液(557)レベル2      

 魔法    スライムバレット(111)レベル2

 装備    なし


 アイテム  リュックサック 

 金 約21万



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― 新着の感想 ―
結構主人公的にはシリアスな回だと思うし、母親が帰ってこないのは、心配になる、疑心暗鬼になるのも理解できる。 だが、ソワソワするあまりにスライム狩りに行くか、になるのは普通に笑った。 スライム中毒になっ…
秀逸な回です 子供の母親に対する感情が見事に表現され胸を締め付けられます
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