第219話 進むか、引くか。
昼食を済ませると、また探索を始める。
「赤嶺君。君の察知能力が一番広範囲だから、先導をお願い。この辺は地図データを取れるかもしれないから、ゆっくり進みましょう」
「赤嶺氏ー。雷撃ヨロ―!」
俺は、『お宝見つけ隊』の石川祐希にサムズアップで応える。
二千華が言う先導は、より安全な相手に向かっていくってことでいいのだろう。
つまりは、単独で行動しているレッドオーガ・レベル5のところに案内しろってことね。
単独で行動しているレッドオーガ・レベル5を見つけて近づいていき、800メートルくらいで稲妻を落とす。
それを合図に『お宝見つけ隊』と『ドラゴンの牙』がマシンガンを連射した。
4度このパターンを繰り返すと、気配察知に強力な魔物の気配を感じ取った。
ここより奥にいくと、レベル6あるいはレッドオーガの進化系のテリトリーになるみたい。
要警戒だが、こっちに向かってくる様子がないのでひとまずは安心だ。
「ここより奥は、レッドオーガ・レベル5より強い魔物のテリトリーみたいですよ。引き返しますか? 進みますか?」
「レッドオーガ・レベル5より強い魔物って、レベル6ってこと?」
「かもしれませんし、レッドオーガの上位種かもしれません」
「『お宝見つけ隊』の皆さんは、どう思いますか?」
「二千華氏に任せるしー」
「『ドラゴンの牙』の皆さんは?」
「『お宝見つけ隊』様の言う通りで!」
「『白銀の双翼』は?」
「天心君はどう思う?」
綾華が俺の顔を下から覗いた。
「かなり強そうなので、引き返したほうがいいかもしれませんね」
「真季はどう思う?」
「私は、ここのところ出番がなかったから、体がうずうずしてるけど――」
「満菜美は?」
「......も、うず......し....る」
「そう。......2対1か」
下顎を手で支えて悩む二千華さんに高橋圭吾が助け船を出した。
「二千華殿。とりあえず、奥に進んでみてはどうでござるか?
まだ、拙者の気配察知には、その強い魔物とやらの気配が感じ取れておらんでござる。
もう少し進んでみれば、拙者もその魔物の強さを感じられると思うでござるよ。
そうすれば、拙者が的確な判断を下せるかと思うのでござる」
「そうね。じゃあ、その時の判断に従いましょう」
「それで、ヨロ―!」
「『お宝見つけ隊』様の言う通りで!」
皆さん、口には出さねど奥に進んでいきたいみたいだね。
でも奥に進むと、サンダーストームサイクロプスの時のように、あっという間に近づかれて、戦闘状態に突入することになるかもしれない。
警戒だけは怠れないな。
「では、地図データも増えるので、行けるところまで進んでみましょう。赤嶺君、先導して」
反対しても仕方がないか。
「はい。では進みます」
俺はまた、奥に向かって歩き出した。
高橋圭吾が突然口を開いた。
「こいつでござるか!」
「強いのねんか?」
「判断ヨロ―」
「強いでござるな......」
高橋圭吾の額に汗がにじむ。
見識眼で見てみたけど、強いのよねー。
レッドオーガの上位種で、『オーガライジーン』っていうやつらしい。
オーガライジーンのステータスは、
HP 1200
MP 1200
力 1000
防御外皮 1000
知力 300
速さ 1000
器用さ 800
スキル
風雷魔法サンダーストーム(1) レベル1(雷を伴う嵐で切り刻み雷撃する。消費MP50)
火魔法ファイアボール(100) レベル2(MP100を消費して炎の玉を撃つ魔法)
棒術適性(800) レベル2
ドロップ品 ミスリルの金棒
だった。
額から汗を流すはずだわ。
速さ1000だから、俺たち2人は逃げられるけど、Aランクの人たちは逃げても追いつかれてしまうだろうな。
戦って、勝てればいいんだけれど、風雷魔法サンダーストームを食らったら動けなくなる。
嫌な魔法を持っているぜ――俺も持っているけれど。
11人が1度に全員雷撃を受けなければ、状態異常回復薬で回復させることはできるかもしれないが、回復させる間に雷撃を受けてしまう可能性の方が高そうだ。
うーん。
ここは逃げておいた方が無難じゃないかな。
俺がスチールと圧倒的なスピードを隠さずに戦えば余裕で勝てるけど、隠しておきたいよね。
全員が高橋圭吾を見つめながら答えを待つ。
「…………赤嶺殿の雷撃が決まれば勝てるでござろうが、そうでなければ厳しいでござる」
高橋圭吾を見つめていた全員の視線が、がばっと俺に移った。
え! ......俺に何か言えってか?
「――俺は、こいつとは戦うのは避けて引き返したほうがいいと思います」
「そうなの? 雷撃が決まれば勝てるそうだけど......」
真季さんが、俺の顔を覗き込んだ。
......ちょっと顔が近いんですけど。
「レッドオーガって鬼じゃないですか!」
「そうね」
「鬼と言えば、風神雷神じゃないですか!」
「そうなの?」
「そうですよ。雷様って鬼でしょう!」
「あ、そうね。鬼だわね」
「だから、こいつには雷撃が効かないような気がするんですよね」
「そういう可能性がないわけではござらんな」
「気配的には、レベル6というより上位種って感じで強さにかなり開きがあるし、もしかしたらこっちが雷を落とされるかもしれないし」
こいつ、サンダーストーム使えるのよ。
「考え過ぎじゃない?」
考え過ぎじゃねーわ。
分かるって言えないのが辛いけど。
「......真季、言い過ぎだって。赤嶺君は『気配察知』で相手の強さを感じ取っているんだから、彼の意見は重要よ」
「そうだねー」
「その通りでござる」
「ここは、引いたほうがいいかもなのねん」
「『お宝見つけ隊』様の言う通りで!」
「「............」」
「ごめんなさい。言い過ぎたわ」
真季が引いたので、撤退することが決まった。
「それでは、レッドオーガ・レベル5を探して回りましょう」
第5階層の草原フィールドはただただ広い。
平面的には、まだ探索していない場所はたくさんある。
俺は、レッドオーガ・レベル5の所に皆を案内した。
いつものパターンで討伐を続け、4匹倒して野営の準備にかかった。
晩飯は、オーク肉の串焼き。
それと、俺は白いご飯で、綾華は大好物のラーメン味の『ぶっこみ飯』だ。
『ドラゴンの牙』と『お宝見つけ隊』は、大きな肉を焼いて盛り上がっていた。
石川祐希が、焼いた肉やゆで卵、ブドウやリンゴを配って回った。
この人、食べ物を配って回るのが好きなのね。
どうやら、山田大貴が次元収納のスキルホルダーで、大量の食べ物を持ってきているらしい。
『ドラゴンの牙』の3人が大喜びで大量の食べ物をもらっていた。
『ブラックキャット』の3人も、女性にしてはたくさん食べるのね。
俺たちも、『お宝見つけ隊』がいてくれたおかげで充実した晩飯が食べられたぜ。
俺も食べ物を腐るほど収納しておこーっと。




