第218話 少しハイ?
「次いこー!」
「次は、あっちでござるー」
「どんどん行くのねん」
「了解!」
「「............」」
「赤嶺君、綾華ちゃん、次いくわよー!」
二千華さんが、俺たちに声を掛けた。
はいはい、分かりましたよ。
俺は先頭に立って歩き出した。
隣に綾華が付き添っている。
『ドラゴンの牙』と『お宝見つけ隊』の6人は、少しハイになっているな。
別に悪いことではないけどね。
そろそろ、次の敵が見える距離かな?
遠視のスキルを持つ綾華には、もう見えているかもしれない。
「綾華、レッドオーガ見えてるかい?」
「うん。あそこ」
綾華が指さす方向を見てみると、小さな点――よく見るとレッドオーガだ。
「ありがとう。俺にも見えたよ」
俺はまた、心のなかでサンダーストームを唱えた。
上空に暗雲が立ち込め、渦を巻く。
ビシャー!
そしてオーガに稲妻が落ちた。
『ドラゴンの牙』と『お宝見つけ隊』の6人がオーガめがけて撃ち始めた。
ズガガガガガガ!
「オーガは倒れたけど、魔石になっていないわよ」
綾華が見たままを伝える。
「伏せてるー?」
「弾が当たらないようにしているでござるか?」
「困ったのねん。無駄弾が増えるのねん」
「一旦、銃撃をやめましょう!」
「............」
「撃ち方やめー! 様子を見ましょう」
オーガとの距離は1000メートルくらいはありそうだ。
もう少し近づいてから雷撃したほうがよかったかも。
「俺がいって、とどめを刺してきましょうか?」
一応、責任は俺にある気がする。
「全員で、ゆっくり近付いていきましょう」
二千華さんが指示を出した。
このレイドのリーダーは、最上位・Sランクパーティ『ブラックキャット』のリーダー・二千華さんだ。
全員が二千華さんの指示に従った。
「立ち上がったら、撃ってね!」
「リョ―!」
「任されよ!」
「撃つのねん」
「了解!」
「............」
1歩1歩近付いていく。
「ファイアボールを撃ってくるつもりなのねんか?」
「なんか、火の玉が大きくなっていくでござるな」
「赤嶺氏ー。魔法ヨロ―!」
「分かりました。スライムバレット!」
ズバババババババ!
大きくなった火の玉ごとオーガにも消化液の弾丸が降り注いだ。
黒い煙が立ち上る。
「さすがは赤嶺氏!」
「倒したようでござるな」
「魔石が落ちているのねん」
『ドラゴンの牙』のリーダー・西田 健人が俺に向かってサムズアップした。
八重歯がキラリと光る。
俺が魔法でとどめを刺したことに満足してくれたらしい。
よかった、よかった。
俺たちはゆっくり歩いていき、魔石を拾った。
「赤嶺殿。次は右のオーガか左のオーガか、どちらのオーガがいいと思うでござるか?」
気配察知を持つ高橋圭吾が俺に意見を求めるのは、俺と彼しかオーガの位置関係を察知していないと思っているからだろう。
俺はパッシブスキルの気配察知で2体のレッドオーガを察知しているが、さらにその周りのレッドオーガの状況を把握するために見識眼を使って確認した。
そして俺は、左のレッドオーガと合流できそうな位置に、2匹のレッドオーガを見つけた。
つまり、左のレッドオーガを倒しに行くと、3匹を相手にする可能性があるわけだ。
右のレッドオーガにはその心配はない。
「右の方が安全ですね。左は3体を相手にする可能性がありそうなので」
「そこまで分かっているのでござるか。
赤嶺殿に確認して良かったでござる。
赤嶺殿の方が、拙者より察知範囲が広いのでござるな」
あ、それ言わないで――てか、たぶんもう全員にバレバレだから関係ないか。
「そうみたいですかね」
とりあえず、認めておく。
逆に、高橋圭吾の気配察知の察知範囲は、俺の常時発動状態と変わらないってことだろう。
俺の気配察知は828でレベル2だぜ!
俺は奪って能力を伸ばしたけど、高橋圭吾は5年の経験でこの域に達したのだろう。
すごい人だな..........気合いを入れて広範囲を察知しようとすれば、俺の方が全然広いだろうけど。
「それでは右のレッドオーガを狙うでござる。二千華殿、それでいいでござるな?」
「そうしましょう。赤嶺君案内をお願い」
「あ、こっちです」
俺はまた先頭に立って歩き始めた。
「天心君、あそこに見えるのがレッドオーガよ」
綾華は遠視のスキルを持っているので俺より早くレッドオーガを見つけた。
しばらく歩くと、俺も右のレッドオーガを目視で確認できた。
米粒大にしか見えないけどね。
「雷撃します!」
「ヨロ―!」
『お宝見つけ隊』と『ドラゴンの牙』の6人がマシンガンを構えた。
「サンダーストーム!」
レッドオーガの頭上に黒い雲が渦を巻き、雷雲が形成される。
ピシャー!
稲妻がレッドオーガを直撃した。
「撃つのねん!」
ズガガガガガガ!
雷撃で痺れて動けなくなったレッドオーガに弾丸の雨が降り注いだ。
レッドオーガは黒い煙を上げて魔石に変わった。
今度はあっさり終わったな。
『お宝見つけ隊』と『ドラゴンの牙』の6人が撃つのをやめた。
「ラクショー!」
「上手くいったのねん」
「この調子でどんどん行くでござる」
「その前に、そろそろお昼にしませんか?」
二千華さんが、時計を見て言った。
「たしかに、お腹が空いたかもー」
「もうそんな時間でござるか」
「忘れていたのねん」
俺たちはその場で食事の用意を始めた。
「綾華。今日は何を食べようか?」
「私は支給されたカロリーブロックでいいわ」
「味は?」
「そこが悩みどころよね。いろんな味があるし――アーモンド&チョコレートにしようかな。これならなんとなく味の想像がつくから」
「アーモンド&チョコレートね。はいどうぞ」
スライムの胃袋からカロリーブロック・アーモンド&チョコレート味を2つ取り出し、一つを綾華に渡した。
「これだけじゃあ、足りなくない?」
「ううん。これでエネルギー量は足りてるんでしょう?」
「足りないんじゃないかな? ......オーク肉ならたくさんあるから、1串焼こうか?」
「それは、夜で良いかな。今はこれだけで十分な気がする」
綾華は、あまりお腹が空いていないのかな?
「じゃあ、晩御飯はたくさん食べよう」
「そうね」
少し横では『お宝見つけ隊』と『ドラゴンの牙』が一緒に肉を焼いていた。
『ブラックキャット』の3人も、インスタント食品を食べている。
配給のカロリーブロックを食べているのは俺たちだけだ。
「赤嶺氏ー! 肉焼いたけど、食べないー!」
「二千華殿たちにも、おすそ分けでござる」
「たくさん焼きすぎたのねん。食べるの手伝ってなのねん」
『お宝見つけ隊』が、焼いた肉を配って回った。
「ありがとうございます」
「ご馳走様」
綾華がもらった肉を見せながら、感謝を伝えた。
「お返しするものがなくて、すみません」
「たくさん持ってきちゃったから、食べてくれると嬉しいのねん」
「お返しなんて気にしないでくだされ」
「そうなのー! たべてねー」
『お宝見つけ隊』って、いい人だわー。
その後も『お宝見つけ隊』は、みんなに食べ物を配って回っていた。




