第215話 3匹のレッドオーガ
本日2匹目のレッドオーガと遭遇した。
ファイアボール(40)が向かってくる
「切りますよ!」
「分かってる!」
「了解!」
少しダッシュして二人より前に出る。
前に出たぶん2人が、火の玉の破片を処理する時間が取れるはずだ。
俺は火の玉を真っ二つに切り分け、その後数十回の斬撃を加えた。
俺の速さは13万を超える――目に見えないほどの剣捌きかな?
俺の両サイドを細かく切り分けられた火の玉の破片が飛んで行った。
綾華と真季さんがその火の玉の破片(火の粉?)を回避した。
気合を入れて細かく切り刻んだので、ほとんど炎は消えてたと思うけどね。
次の瞬間、俺はレッドオーガを大剣の間合いに納めると、無言でスチールを唱えながら大剣を大上段から振り下ろした。
レッドオーガは俺の大剣を金棒で受け止める。
ファイアボール40をスチールしました。
棒術適性400をスチールしました。
MP72をスチールしました。
脳内にメッセージが響く。
俺は続けざまに、横薙ぎ一閃。
レッドオーガの両腕が金棒ごと空を舞う。
その後は、一方的な3人の攻撃によってレッドオーガ・レベル4は魔石に変わった。
フフフ……レベル4でもこのパターンでなんとかなったぜ。
ちょっと速さの片鱗を見せちゃったけど、大丈夫だろう。
「剣神ー?」
「拙者、赤嶺殿の剣が見えなかったでござる」
「すごいのねん。速いのねん」
「まったく見えん」
「「……」」
「赤嶺君。剣聖の真季より剣速が速かったわよ!」
「……信じられない速さ」
「私、自信がなくなっちゃったわ!」
やばいぜ。
きっちりチェックされてるし。
何か言ってごまかしたいけど、上手い言葉が見つからないな……。
「天心君はすごいのよ!」
綾華は我がことのように胸を張って自慢する。
俺はそそくさと、魔石を拾いに行った。
「ねえねえ! 赤嶺君。
あなた、本当に剣神のスキルホルダー?」
「いえ。持ってませんよ」
「マジで?」
真季さんが、呆気にとられて口をポカンと開けた。
「はい。剣適性に関したスキルは持ってないですよ」
澄ました顔で答える。
嘘は言っていないよね。
関係ありそうなのは『渾身の一撃』だけど、破壊力倍増の『渾身の一撃』は攻撃一般に効果が及ぶので、剣適性に関したスキルではないはず。
使ったことはないしね。
「あとで立ち合いをしてくれない?」
「真季さんにはとてもかないませんよ。すみませんけどお断りします」
「真季! 失礼よ」
二千華さんが真季さんをたしなめた。
真季さんが気まずそうにうつむく。
「他人のスキルを知ろうとしちゃダメ……」
満菜美さんがぼそりと釘をさす。
その釘は、真季さんの胸にぐさりと突き刺さったようだ。
「さ、先に進みましょう」
二千華さんの明るい声に従って、俺たちはまた歩き始めた。
俺たちの頭上でドローンが撮影を続けている。
後で、俺の戦闘の映像は確実に消してもらわなければいけないぞ。
映像を分析されたら、俺の速さのステータスが人外なことがばれちゃうからね。
気配察知で次のレッドオーガの方向は分かっていた。
ただ問題なのは、両サイドから目指す個体に近づいてくるレッドオーガがいることだ。
目指す個体を倒すのに手間取ると、戦闘中に左右から挟撃されるかもしれない。
「二千華さん。このまま進むと危ないです」
俺は一旦立ち止まって振り返る。
「どうしたの? 赤嶺君」
「やはり赤嶺殿には分かるでござるか。二千華殿、このまま進むとレッドオーガ3匹との戦いになるでござるぞ!」
「この先にレッドオーガが3匹いるってことですか?」
「正面に1匹。ほどなく左右から1匹ずつ合流するでござる。戦闘開始のタイミングによっては、左右から挟撃されるでござる」
高橋圭吾は『気配察知』を持っているのだろう。
そのことを二千華さんも気付いている。
俺が『気配察知』を持っていることも、みんなに気付かれただろうな。
一緒に戦う以上、ある程度スキルを知られても仕方がない。
「どうします? 二千華さん」
「一旦、後退したほうが良さそうね」
さすがに3匹を同時に相手にするのは厳しいか。
20連スチールを使えば簡単に倒せるけど、みんなの前ではやりたくない。
ここは二千華さんの判断に乗るとしよう。
「急いで逃げないと、3匹のレッドオーガが追いかけてきたら追い付かれるのねん」
レッドオーガ・レベル4の速さは500だ。
Sランク綾華の速さは1200だから追い付かれるということはないけれど、Aランクの6人は、そこまでのバフ装備を身につけていないのかもしれない。
1000くらいのバフ装備を身につけているならSランクになっているはずだもんな。
追いつかれるくらいなら、逃げる意味がないような気がする。
背中から攻撃されるくらいなら、正面を向いて戦った方がよほど良い。
3匹が相手なら、Sランクの前衛は俺と綾華と真季さんの3人いるのだから、1対1で足止めくらいは出来るはず。
残りの8人が遠距離攻撃して援護してくれれば、3匹相手でも勝てるんじゃないか?
俺は、その考えを提案した。
「1対1なら、俺は勝てますよ。綾華だって勝てるよな」
「やったことないけど、たぶん勝てると思うわよ」
「真季はどう?」
二千華さんが真季さんに聞く。
「たぶん大丈夫だと思うわよ。少なくとも足止めくらいは出来るわね」
「じゃあ、ここで3匹のレッドオーガを待ちましょう。
3人に足止めしてもらい、8人で援護射撃して倒しましょう」
「3班に分かれてー、1匹ずつ受け持つのー?」
「その方がいいでござろうな」
「そうね。なら赤嶺君と『ドラゴンの牙』。綾華ちゃんと『お宝見つけ隊』で組んでちょうだい。私たち『ブラックキャット』が1匹受け持つわ」
「了解なのねん」
「ラジャー」
俺は、『ドラゴンの牙』と合流した。
顔が怖い。
綾華は『お宝見つけ隊』に囲まれている。
「任せてよー!」
「ちゃんとバックアップするでござる」
「安心するのねん。綾華ちゃんを撃ったりしないのねん」
遠くに駆け寄ってくるレッドオーガが3匹見えた。
1人が1匹ずつ相手をしなければいけないので、一人で突っ込むわけにはいかない。
3人は、タイミングを合わせてレッドオーガに向かっていった。




