第212話 新宿C級ダンジョン第3階層
食事を終えるとドローンを飛ばし、第3階層の奥地Dゾーンに向かった。
現在位置はAゾーンでレベル1のレッドオーガが現れる区域ということだ。
Bがレベル2、Cがレベル3、Dはレベル4のレッドオーガの出現域。
Dゾーンに向かうということは、Dゾーン以降はまだ探索が済んでいないということだろう。
Sランクパーティ『ブラックキャット』が先頭を進む。
Aゾーンでは剣聖・島村真季が一人でレッドオーガ・レベル1を倒していった。
さすがはSランク探索者だ。
だが、レッドオーガ・レベル1を6匹倒したあと7匹目に出会ったレッドオーガには手を焼いた。
Bゾーンに入ったらしい。
レベル2のレッドオーガは、レベル1よりかなり強い。
見識眼で見極めたレッドオーガ・レベル2のステータスは、――
HP 500
MP 500
力 500
防御外皮 400
知力 100
速さ 250
器用さ 250
スキル
火魔法ファイアボール(20) レベル1(MP20を消費して炎の玉を撃つ魔法)
棒術適性(200) レベル2
ドロップ品 鋼鉄の金棒
――である。
さすがに島村一人では、一方的な戦いにはならない。
小島二千華と山口満菜美も戦闘に加わった。
Sランクパーティ『ブラックキャット』の本来の戦い方だ。
前衛の島村が剣を振り、魔術師山口が後方から氷魔法で援護。小島が回復魔法で島村の怪我を治した。
二人の参戦で、戦いは一方的なものになった。
レッドオーガ・レベル2が、煙を上げて魔石に変わった。
「あの――魔力節約のために、俺達が加わって、『白銀の双翼』と島村さんの前衛3人で先頭に立つのはどうでしょう?」
俺の提案に、魔術師の山口満菜美さんが小島二千華さんの服を引いて視線を送った。
俺の提案に乗ろうという意思表示かな。
直接的に魔力節約の恩恵を1番大きく受けるのは魔術師の山口満菜美さんだからね。
二千華さんが満菜美さんに頷いて俺の方を向く。
「ありがとう。あなた達が先頭に立ってくれると助かるわ。真季もそれでいいわよね?」
「いいわよ。じゃあ、私が正面でヘイトを取るから、あなた達は左右から攻撃してちょうだい」
「あの、俺が正面でヘイトを取りますよ。
俺、防御外皮もHPもでかいし、回復力も強いんで」
俺には、スキル『再生741』があるからね。
真季さんが、二千華さんに意見を求めるように視線を送ると、彼女は頷く。
「じゃあ、正面は赤嶺君に任せるわ。私は左、綾華ちゃんは右ね」
「分かりましたわ。お姉さま!」
綾華が、嬉しそうに返事をした。
3人を先頭に、俺たち11人は歩き出す。
しんがりは『ドラゴンの牙』だ。
正面やや右からレッドオーガ・レベル2が向かって来るのをパッシブスキルの気配察知で感じ取った。
「行くよ!」
俺はそう言うと、歩みを速める。
「見えたわ!」
スキル『遠視』で確認したのね。
「行こうか!」
「了解!」
「はい! お姉さま」
3人が走り出し、あっという間に接敵する。
レッドオーガが火魔法ファイアボール(20)を放ってくるが、俺はその炎の玉を大剣で正面から切り落とした。
そしてすかさず大上段から剣撃を加える。
レッドオーガは鋼鉄の金棒で受け止めた。
棒術適性(200)はさすがというところだ。
未熟な奴なら金棒ごと一刀両断にできたかも――でも、目的は果たしている。
ヘイトは俺に向かっているからね。
俺は剣を振り続け、オーガがバックステップで間合いを取ろうとするのも許さなかった。
綾華と真季さんが、俺にかかりっきりのオーガの左右の背後を容易くとり、攻撃を開始した。
そしてその瞬間の隙を見逃さず、俺はオーガの鋼鉄の金棒を持つ右腕を切り飛ばした。
狙い通り、これでドロップ確定だ。
そして誰にも気づかれないように無言でスチールを使う。
スチール。
棒術適性200をスチールしました。
火魔法ファイアボール20をスチールしました。
MP292をスチールしました。
左右から、綾華と真季さんの剣撃が降り注ぐ。
俺も正面から切り続けた。
3方からの連撃。
そして瞬く間に防御外皮400とHP500を削り切ると煙を上げて魔石に変わった。
切り落とした腕の所に鋼鉄の金棒が落ちている。
魔石と金棒を拾って移動を再開する。
BゾーンからCゾーンを目指し、次々にレッドオーガ・レベル2を倒していく。
その都度、腕を斬り飛ばして鋼鉄の金棒をドロップさせた。
「赤嶺氏ー。ドロップ確定が多くて助かる―!」
「効率良いでござるな!」
「稼ぎいいのねん! 嬉しいのねん!」
『お宝見つけ隊』の面々が喜んだ。
『ドラゴンの牙』の3人も強面の顔が緩んでいる。
報酬は、活躍にかかわらず均等に分けるんだったよね。――沙織さんに教わった。
「そろそろCゾーンに入るわよ。どうする?」
「たぶん余裕よ! まだ3人で行けるし、何なら私、今までダメージ0なんだけど」
真季さんが自慢顔だ。
「赤嶺君はどうなの?」
「ノーダメージです」
「分かった。このままDゾーンを目指しましょう」
二千華の指示に従って、俺たちはCゾーンを進み始めた。
「ああ、来た来た。レベル3だ!」
本当はとっくの昔に察知してたんだけど、今気づいたように申告する。
オーガがこっちに向かって動き出したのは今だけどね。
オーガの索敵感知距離はだいたいあのくらいか……奇襲を受ける可能性はまずないな。
「行くよ!」
俺は綾華に視線を送った。
「分かったわ!」
綾華がライフルをグルグル回した。
「フフフ……」
真季さんも剣を抜く。
3人はまた、歩みを速めた。
そうして次々とオーガレベル3を倒していく。
5匹、6匹、7匹。
「そろそろ目標のDゾーンだわ」
真季さんが俺に注意を促す。
つまり、そろそろレッドオーガ・レベル4と遭遇するということだ。
確かに俺は、パッシブスキルの気配察知でレッドオーガ・レベル4の強力なパワーを感じていた。
「ここからは、全員参加で戦うわよ。
進めるところまで進みましょう」
二千華さんが、全員に声を掛ける。
『お宝見つけ隊』、『ドラゴンの牙』も引き締まった表情になる。
「さーて。拙者たちの出番でござるな」
「腕が鳴るのねん」
「どら牙ちゃん。よろー!」
「やるぞ! 野郎ども!」
「「おー!」」
「『お宝見つけ隊』、『ドラゴンの牙』は敵が射程圏内に入ったら攻撃開始。近づくまでにできるだけ敵を削ってちょうだい。
『白銀の双翼』と『ブラックキャット』は近接できたレッドオーガのとどめを刺す。行くわよ!」
全員が、黙って頷きレッドオーガ・レベル4の気配の方向に歩き出した。




