第211話 新宿C級ダンジョン第2階層
コカトリス対策のため、全員が石化中和薬を服用する。
そして『ドラゴンの牙』が先頭に立って進んでいく。
俺には気配察知でもうすぐ第一コカトリスと遭遇することが分かっていたが、『ドラゴンの牙』の3人は分かっていないようだ。
どの時点で気付くのか、興味深く観察させてもらう。
先制攻撃を受けてしまうようなら忠告するつもりだが、Aランクパーティなのだから、まさか脅威度Bのコカトリスレベル1ごときに遅れは取らないはずだからね。
『ドラゴンの牙』の3人が、コカトリスの方向に銃を向けた。
ほー! このタイミングでコカトリスが近づいてきているのに気付いたのか。
でも、コカトリスはそれより先に、こちらに気付いて奇襲を仕掛けようと近づいてきたわけだから、索敵能力では負けていたということか。
まあ、射程範囲の関係で、返り討ちにするのは容易いだろうけど。
マシンガンが火を噴いて、コカトリスがハチの巣にされた。
第一コカトリス討伐完了。
大口径の弾丸の威力は、相当なものだなあ。
防御外皮100とHP100を、3人の連射であっという間に削り切ってしまったんだからね。
すげーな――とは思う。
でも、不安がないわけではない。
コカトリスの速さは300。
視認してから接触するまで10秒とかからなかっただろう。
数秒発砲が遅れれば、コカトリスの攻撃をその身に受けることになっていたかもしれない。
……油断は禁物だな。
第3階層の入り口まで、2時間程度の道のりで、何体のコカトリスと遭遇するかは分からないけど、広い平原フィールドでは、前後左右どの方向から襲い掛かってくるか分からないから進行方向だけ注意しているわけにはいかないよね。
パッシブスキルの気配察知で近くにいるコカトリスの動きに気をつける。
俺たちめがけて、走ってくる個体があったら対応しなければならないからね。
『お宝見つけ隊』の高橋圭吾さんは索敵スキルを持っているようだけど、俺も索敵を手伝った方がいいのかな?
それとも出しゃばらない方がいいのかな?
う――ん。
黙っていよう。
危ない時は、参戦すればいいんだからね。
「左右から、コカトリスが迫っているでござる。右は拙者たちに任せるでござるぞ!」
「了解です!」
西田 健人が返事をし、『ドラゴンの牙』の3人がマシンガンを構える。
『お宝見つけ隊』が右に移動した。
俺たちと『ブラックキャット』の3人は、『ドラゴンの牙』と『お宝見つけ隊』の背に隠れた。
左右からコカトリスが迫ってくる。
ズガガガガガガ!
銃声が鳴り響く。
左右のコカトリスが煙を上げて魔石に変わった。
魔石を拾って先に進む。
2時間弱で第3階層への入り口にたどり着き、洞窟に入った。
やはり洞窟の壁は蛍光石で照らされていた。
魔物の気配もない。
「いよいよ第3階層でござるなあ」
「ドラ牙ちゃん、ご苦労さーん」
「先頭は誰がするのねん?」
「『ブラックキャット』が務めましょう。まだやっていませんでしたからね」
小島二千華が名乗り出た。
「猫ちゃんたち。よろー」
島村真季がサムズアップで石川祐希に応える。
「『ブラックキャット』先頭、『白銀の双翼』はサブお願い。後方は『ドラゴンの牙』と『お宝見つけ隊』でお願いします」
「「了解!」」
第3階層の入り口付近は、第1、第2階層と同じく光輝石に照らされた広い草原フィールドだった。
「まずここで昼食を取りましょう。
昼食後、ドローンを飛ばしてDゾーンを目指します
Dゾーンから先は、全員戦闘参加でお願いします」
「「了解!」」
俺は、渡された地図でDゾーンを確認した。
そして配給された弁当を食べる。
次からは保存食を食べることになるようだが、1食だけは弁当が配給されていた。
保存の関係かな?
次回こういう依頼を受ける時は、食料は持参しようと思った。
「次からはこの保存食を食べるみたいだよ。初めて見るね」
綾華に配給された保存食を見せる。
保存食はカロリーブロックのような形状だが何種類かあって、ホワイトチョコ&レモン 、フルーツ&ベイクドチーズ 、イチジク&レーズン 、サツマイモ 、抹茶&マカダミア 、アーモンド&チョコレート 、ブルーベリー 、黒ゴマ 、2種のアップル 3種のレーズン 、ストロベリー 、プラントベースバナナ など12種類もあり味は多彩だ。
「お菓子みたいだね」
「うん。でも栄養価は高いみたい」
包装にそんな能書きが書いてある。
「お腹いっぱいにならなさそう。次から食べ物持参で参加しようね」
そんなことを言いながら、弁当を食べる。
コンビニによくあるデミグラハンバーグ弁当だ。
まあ、味は悪くない。
「じゃあ、また一緒に買い出しに行きましょうね」
「そうだね」
「今度の日曜日はサッカーでしょう。
買い出しは、土曜日かな?」
サッカーの練習は2時間くらいで終わるみたいなことを言っていたので、午後は空いているはずだ。
「サッカーの後、一緒に食事を食べて、その後買い出ししてもいいんじゃない?」
「そうね……それでもいいわ。
じゃあ、どこかのレストランでも予約しておこうかしら?」
「ファミリーレストランみたいなところでいいんじゃない?
サッカーした後だし、高級そうなお店は苦手だし」
高級レストランには行ったことがないし、なんとなく気が引けるんだよね。
「そうね。門松にどこか手配をさせておくわ」
門松さん、そういうことも仕事のうちなのね。
仕事を増やしてすみません。
ハンバーグを口にいてると、パッシブスキル『気配察知』に感じるものがあった。
レッドオーガが1匹こっちに向かっている。
気配察知を持っている高橋圭吾に視線を向ける。
俺の方が索敵範囲が広いのか高橋圭吾は、俺の視線に気付いて笑って手を振った。
こりゃ、レッドオーガに気付いておらんわ。
「ちょっと行ってくるよ」
俺は綾華にそう言うと駆け出した。
レッドオーガに接敵し、20連スチール一発。
脳内にメッセージが響き渡る。
MP400をスチールしました。
力を400をスチールしました。
防御外皮300をスチールしました。
知力100をスチールしました。
速さ200をスチールしました。
器用さ200をスチールしました。
スキル・火魔法ファイアボール(10)をスチールしました。
スキル・棒術適性(100)をスチールしました。
鋼鉄の金棒をスチールしました。
HP400をスチールしました。
魔石を拾う。
一人で動けば、スチールで倒したのを見られないで済むから助かるぜ。
俺は急いでみんなの元に駆け戻った。
「大きい方でござるか?」
さっき視線を交わした高橋圭吾が声を掛けてきた。
……うん?
なんか大きな勘違いをされている気がするんですけど。




