第210話 新宿C級ダンジョン第1階層
「よゆー!」
「見事でござる」
「すごいのねん!」
『お宝見つけ隊』の3人から称賛の声が上がった。
「第1階層は、2人に任せて大丈夫そうね」
『ブラックキャット』のリーダー小島二千華さんに信頼されるのは嬉しいぜ。
「このくらいなら、天心君一人でも大丈夫だと思うけど、私も一緒だから安心してください」
「弾丸の節約になるから、助かる。
『ドラゴンの牙』と『お宝見つけ隊』の戦力が温存できるのは大きいわ。
疲れたら、真季に代わらせるわよ」
「二千華、勝手なこと言わないで」
「だって、MPだって節約したいもの」
「体力だって節約したいわよ!」
島村真季さんが小島二千華さんに抗議する。
山口満菜美さんは、二人の口論を生暖かい目で見つめるだけだ。
「大丈夫ですよ。俺、体力バカなんで、一人でも余裕です」
俺は、二人の仲裁のために割って入った。
「そうですよ。天心君はすごいんだから!」
小島二千華さんと島村真季さんが口論をやめ、恥ずかしそうに見つめ合って笑った。
「頼りになる新人さんだこと」
「さすが、Sランクスタートの中学生!」
「助かるわー!」
「第2階層は、毒を貰わないように拙者たちが受け持つでござるよ」
「適材適所なのねん」
「第2階層は、俺たち『ドラゴンの牙』に任せてください!」
『ドラゴンの牙』のリーダー・西田 健人が1歩前に出る。
やる気があるな――。
信奉する『お宝見つけ隊』にいいところを見せたいんだね。
宮浦 有志と西山 太志がその後ろで渋い顔を決めていた。
「じゃあ、第2階層はドラ牙ちゃんに任せるねー」
「コカトリスは侮れない故、複数出た時は拙者たちも参戦するでござるよ」
「レイドなのねん。6人で撃ちまくるのねん」
『お宝見つけ隊』は相変わらず軽い感じだ。
緊張感が抜けちゃうぜ。
次のミノタウロスが駆けよってくる。
俺も走って行って迎え撃った。
俺の大剣がキラリと輝き、ミノタウロスの腕が飛んで体が両断される。
瞬殺だぜ。
「剣で腕ごと鋼の手斧を切り落とせるから、必ずドロップさせられるんだね。
私も、鋼の手斧を叩き落してからとどめをさせば、必ずドロップさせられるかな?」
「たぶん、できると思うよ」
魔石と鋼の手斧を拾いながら答えた。
「そんな確定ドロップのさせ方があるなんて知らなかったわ。
今度から私もやろう!」
島村真季さんが笑顔を振りまきながら近寄ってきた。
「スピードに差があるからそんなことが可能なのね。本当に余裕で瞬殺だわ」
小島二千華さんが感心していた。
「分かっていても、できないわー!」
「拙者たちのスピードでは、できない技でござるな」
「そもそもマシンガンでは無理なのねん。弾が当たって死んじゃうのねん」
銃撃で手斧を弾き飛ばしてから、とどめをさすってことだろうか?
マシンガンみたいに連射する武器だと、手斧を弾き飛ばした時には倒しちゃっていそうだもんな。
そういった意味でも、ここは俺たち『白銀の双翼』に任せてもらうのが適切なのかもね。
「あ! また来たから、行ってきます」
俺は、近づいてくるミノタウロスを感知して、応戦に向かった。
綾華も付いてきたが、俺が出会い頭に瞬殺した。
魔石と手斧を拾って、3パーティが追いついてくるのを待つ。
3パーティはゆっくり歩いて合流した。
別に急ぐつもりはないらしい。
沙織さんと探索していた池袋西F級ダンジョンでは第5階層まで走り抜けていたけど、今回のレイドメンバーたちは、第3階層での時間を作るために、途中の階層を急いで走り抜けるという気持ちはないんだね。
4泊5日の長丁場だから急いで時間を作るより、弾薬やMPや体力の無駄な消耗を嫌っているのかな。
俺達は、無理せず地図に従って第2階層への連絡口に向かって歩いていく。
奥に行くほど魔物は強くなるのはここでも同じだ。
7匹目に出会ったミノタウロスはレベル2だった。
ミノタウロスレベル2のステータスは、レベル1より少し高く、見識眼で見てみると、
HP 40
MP 0
力 35
防御外皮 40
知力 10
速さ 25
器用さ 25
スキル ブーメランスロウ
ドロップアイテム 鋼の手斧
だった。
俺の対応に変わりはない。
瞬殺。瞬殺。
綾華は出番がなくても、俺のバックアップに付いてきている。
手を抜かない、まじめな性格がうかがい知れる。
13匹目のミノタウロスを倒した先に、第2階層に通じる洞窟が見えてきた。
「赤嶺君、ご苦労様。あそこからは、『ドラゴンの牙』さんに先頭を交代してください」
「分かりました」
俺と綾華は、洞窟の前で後ろに下がった。
『ドラゴンの牙』の3人がマシンガンの安全装置を外して前に出る。
パーティの並ぶ順番は『ドラゴンの牙』、『お宝見つけ隊』、『白銀の双翼』、『ブラックキャット』に変わった。
しんがりを『ブラックキャット』、『ドラゴンの牙』のサポートを『お宝見つけ隊』が務めるってことね。
俺たち二人は少し気を抜くことができそうだ。
洞窟に足を踏み込むと、周囲の明るさが変わった。
洞窟の岩壁は蛍光石らしく淡い光で周囲を照らしていて、光輝石の第1階層が昼間のようだったのに比べると、夕暮れ程度の明るさだ。
決して暗くはない。
洞窟の幅は、3メートル程度。
緩い下り坂を『ドラゴンの牙』の3人が横並びで下っていく。
下り坂の先には明るい光が見えていて、そこが第2階層なのだとわかった。
池袋西F級ダンジョンでは、各階層をつなぐ洞窟では魔物が出現しなかったが、新宿C級ダンジョンでもそうなのだろうか?
俺の気配察知では、魔物の気配は感じられない。
だが、『ドラゴンの牙』の3人は警戒を怠らずに進んでいった。
Aランクパーティって、こういうところも手を抜かないんだな。
見習わなくっちゃいけないのかな?
俺には、パッシブスキルの気配察知があるから、思いっきり手を抜いちゃうけどね。
『ドラゴンの牙』の3人が、突然立ち止まりマシンガンを構えた。
マジか?
俺には感じられなかったが、魔物がいるのか?
俺と綾華に緊張が走る。
「大丈夫でござる。魔物はいないでござるぞ」
「高橋氏が言うなら、気のせいよー」
「安心するのねん」
『ドラゴンの牙』の3人が構えを解いた。
「脅かして、申し訳ない」
『ドラゴンの牙』のリーダー西田 健人が申し訳なさそうに頭を垂れた。
「だいじょぶよー」
「慎重なのは、大切なことでござるよ」
「気にする必要はないのねん。安全確認は大切なのねん」
「「あざっす!!」」
『お宝見つけ隊』って優しいな。
俺なんて、脅かすなって言いそうになったわ。
怖いから言わんけど。
『ドラゴンの牙』が再び前に進みだした。
やれやれだぜ。
でもスキル『気配察知』を持っていなければ、このくらい慎重に進む必要があるのかもしれない。
第2階層に近づいたので、俺はコカトリスを見つけるために見識眼を使った。
見識眼なら気配察知より遠くまで敵を探せるからね。
コカトリスがいたのはかなり遠くだった。
2階層に踏み込んだとたんに、奇襲を受けるということはなさそうだ。
俺たちは、無事第2階層に到達した。
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