第209話 出発ー!
とりあえず、挨拶をしなくちゃな。
「初めまして。Sランクパーティの『白銀の双翼』と言います。俺は赤嶺天心、こっちが九条綾華、2人とも中3です。よろしくお願いします」
「ああ! 君たちが『白銀の双翼』のお2人さんだねー。
今回初めて新宿に潜るんだってー?
僕、石川祐希。
よろー」
「高橋圭吾でござる。よろしくでござる」
「山田大貴なのねん。よろしくなのねん」
なんか、全然強くなさそうなんだけど、Aランクパーティなんだから強いはずだよね。
「二千華氏ー! 今日は何階層を撮影するん?」
「はい。まだ決めてないので、皆さんが揃ったら話し合おうかと」
「そうでござるか? それがしとしては石化中和薬のような不味いものはあまり飲みたくはないでござるな」
「大貴も、あれは嫌いなのねん。不味いのねん」
「第3階層よろー」
「『ドラゴンの牙』さんは、第3階層を探索する案でよろしいですか?」
「もちろんです!」
「それでは今回は、第3階層を探索するということで、4泊5日分の物資を用意して、1時間後にダンジョン入り口前に集合してください。
ドローンと受付への報告は、私がやっておきますね」
「じゃ、まーたねー!」
「し、失礼いたします!」
……てことは、第2階層を往復する時間分の石化中和薬を用意しておけばいいってことだ。
それって何個だろう。
俺は助けを求める視線を二千華さんに送った。
「赤嶺君。第2階層の通過に要する時間は2時間くらいだから、使うのは往復で一人2個、予備を含めて3個ずつあれば大丈夫だと思うわよ」
「ありがとうございます」
教えてもらえて助かったぜ。
俺たちは、さっそく3階に移動して石化中和薬6個を買い、1階の受付で弁当や保存食などを受け取る。
クロークで武器や装備を受け取り、着替えてダンジョン入り口前で綾華と待ち合わせた。
「へー。赤嶺氏はー、大剣で戦うんだねー」
「近接戦闘型でござるか! カッコいいでござるな!」
「スピード重視の装備なのねん。憧れるのねん」
『お宝見つけ隊』の3人が綾華より先に来て話しかけてくる。
山田さんがスピード重視の装備と言ったのは、俺が、胸当ても肩当ても盾もブーツも手袋も、何一つ防御用の装備を身につけていないからだろう。
俺の場合、防御外皮が膨大だから、そういった装備や防具を必要としないだけ……というか、考えもしなかったんだよね。
服こそ探索者用の物だけれど、他に何も防具をつけておらず、2本の大剣を背負っていなければ、町を歩いている人たちと少しも変わらない格好だ。
まだ着替えていないと言っても、誰もが納得してしまうだろう。
確かに考えてみれば、駆け出しで装備を買い揃えられていないようなこの格好は、Dランク以上の探索者として不自然なのかもしれない。
やっちまったぜ。
『ドラゴンの牙』の3人が少し離れたところで俺を睨んでいた。
『お宝見つけ隊』の3人と話をしたことに、やきもちでも焼いているのかな?
変な格好で、『お宝見つけ隊』の気を引いた……みたいな?
決してそんなんじゃないんだけどね。
「皆さんは、マシンガンで戦うんですね」
「だねー」
「拙者に、近接戦闘は無理でござる」
「大貴も離れて戦いたい人なのねん。防御外皮には限りがあるのねん」
確かに、バフをかけても普通の人間の防御外皮には限りがあるな。
1000とか、2000とか。
それを削られやすい近接戦闘は、長丁場で戦い続けるのには適さないのかもしれない。
見れば、『お宝見つけ隊』の3人は、フルプレートアーマーを身につけている。
フルプレートアーマーに大口径マシンガンの組み合わせは、なんか変だ。
俺もフルプレートアーマー(スケルトンナイトの鎧)を持っているけど、クロークに預けっぱなしだもんな。
引き出して、装備しようかな。
装備したとしても、防御力の上昇は誤差の範囲くらいのイメージだよね。
やっぱり動きやすい方がいいわ。
綾華と『ブラックキャット』の3人が姿を現す。
島村真季さんは剣を持ってるから近接戦闘型だな。
あとの2人は、杖を持っているので魔法使いに違いない。
初めて出会う魔法使い――MPはどのくらいあるのだろうか。
「お待たせしてすみません」
小島二千華さんが謝った。
「モーマンタイよー!」
「女子の着替えに時間がかかるのは想定内でござる」
「気にしなくていいのねん!」
「それではさっそく行きましょうか。第1階層の先頭は『白銀の双翼』に任せちゃっていいかしら?」
「任せてください。お姉さま!」
綾華が嬉しそうにライフルを掲げた。
先頭が『白銀の双翼』ってことは、俺が先頭ってことだよね。
地図をチェックして第2階層の入り口までのルートを頭に入れなきゃな。
ちなみに地図は協会から渡された物資の中に入っていた。
綾華が嬉しそうに俺の隣に駆け寄ってくる。
「じゃあ、行くよ!」
「うん!」
綾華の笑顔が眩しいぜ。
俺は先頭に立ってダンジョンに足を踏み入れた。
所々、電球で照らされた暗い下り坂を抜けると、光輝石に照らされた広い草原が広がった。
「第2階層の入り口まで走って向かいますか?」
「歩きでいいのー」
「時間は十分あるでござるぞ」
「あせることはないのねん。体力は温存なのねん」
「分かりました。歩いて進みます」
俺は先頭を歩いていく。
前方にミノタウロスレベル1の気配を感じている。
「綾華! ミノタウロスだ。俺が走ったら付いてきて」
「分かったわ!」
ミノタウロスのスキルはブーメランスロウ――武器の鋼の手斧を投げてくる技だろう。
俺は両腕で大剣を抜いた。
2本の大剣を十字に重ねて構える。
「赤嶺殿は、察知能力をお持ちでござるな。これは頼もしい」
気配察知のスキルを持つ高橋圭吾には分かるらしい。
俺は、ニヤリと笑って応じる。
持ってますと、正直に答える必要はないからね。
……バレバレみたいだけど。
ミノタウロスが視界に入る。
「行くよ!」
俺はミノタウロスに向かって走り出した。
綾華がぴたりと付いてくる。
ミノタウロスが雄叫びを上げる。
「グモ――!!」
大きく右手の手斧を振り上げた。
俺はミノタウロスの間合いに入ると即座に右の大剣を振り抜いた。
防御外皮が一気に切られ、ミノタウロスの右手が手斧ごと飛ぶ。
「グモ――!!」
続いて左の大剣も振り抜いた。
ミノタウロスの腹から多量の鮮血が飛び散った。
「グモ――!!」
ミノタウロスの全身から煙が上がる。
ミノタウロスのHPと防御外皮はそれぞれ30しかないからね。
――1撃で終わっちゃうわ。
「天心君! 私、必要だったかしら」
「ごめん」
綾華が抗議してくるが、俺は魔石と鋼の手斧を拾いながら謝った。
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