第206話 シミュレーション
俺は、見識眼でとーちゃんを見るのをやめると、コンビニに弁当を買いに出かけた。
『お食事処・酔いどれ』に晩飯を食べに行って、とーちゃんを驚かそうかとも考えたけれど、それはとーちゃんの邪魔になりそうなので、やめることにした。
弁当を買い、家に戻ってそれを食べる。
たぶんとーちゃんは、『お食事処・酔いどれ』で晩飯を食べ、その足でぼったくられに行くのだろう。
そして、明日の朝は、またいつもの場所で寝ているに違いない。
俺は、晩飯を食べ終わるとインターネットで新宿C級ダンジョンについて調べてみた。
C級ダンジョンは、第1階層に出る魔物の脅威度がCランク相当だということを示している。
ちなみに、池袋西F級ダンジョンの第1階層はスライム(脅威度Fランク)、第2階層はスケルトン(Eランク)、第3階層はゴブリン(Dランク)、第4階層はオーク(Cランク)、第5階層はファイアーウルフ(Bランク)、第6階層はサイクロプス(Aランク)だ。
インターネットで調べると、新宿C級ダンジョンの第1階層には脅威度Cランクの魔物・ミノタウロスが出るらしい。
ミノタウロスは、牛頭人身の魔物で頭は悪いが力は強い。
手斧を振り回して攻撃してくるが、魔法は使えない。
そういう意味で、ステータスは武力偏重でオークに近い。
ミノタウロスレベル1のステータスは、
HP 30
MP 0
力 25
防御外皮 30
知力 10
速さ 20
器用さ 25
スキル ブーメランスロウ
ドロップアイテム 鋼の手斧
である。
ふーん。
新宿C級ダンジョンの第1階層なら、難なく探索できそうだな。
Sランク探索者なら、Cランクの魔物は軽く倒せて当たり前だろう。
綾華だって、余裕で倒すことができるはずだ。
第2階層は何が出るんだ?
さらに、ネット上の情報を読み込む。
新宿C級ダンジョンの第2階層には危険度Bランクの魔物・コカトリスが出るらしい。
鶏と蛇が混ざったような姿をし、高い知能と素早さを持ち、飛行能力こそないが、爪と嘴に石化毒を持つ魔物だ。
こいつに傷つけられると、体が徐々に石化して、石像になってしまうらしい。
コカトリスレベル1のステータスは、
HP 100
MP 0
力 100
防御外皮 100
知力 300
速さ 300
器用さ 100
スキル 毒爪(石化毒)連撃 毒嘴(石化毒)ドリル突き
ドロップ品 毒爪(石化毒) 毒嘴(石化毒)
である。
こいつは脅威度Bランクに分類されているが、毒爪(石化毒)連撃や毒嘴(石化毒)ドリル突きはかなりの脅威だ。
石化毒を無毒化できるすべがなければ、傷つけられた時点でいずれ死が訪れることになるのだから。
速さもサイクロプスより早いため、脅威度がAだと言われても納得する探索者は多いと言われているらしい。
第2階層でこの脅威度が相手かよ。
……かなり難易度の高いダンジョンだな。
綾華の速さは1212だから、遅れを取ることはないだろうが、石化毒を無毒化するすべがなければ、もしもということがないとは言い切れない。
それは、俺についても同じことが言えるけれどね。
石化毒を無毒化するすべをインターネットで検索すると、石化毒の中和薬があるらしいが、一度石化した部分は治ることがなく、石化毒の中和薬を事前に飲んでおけば石化するのを避けられるらしい。
中和薬の効果時間は2時間だ。
なるほどね。
第2階層に入る前に中和薬を飲み、2時間ごとに飲み続ければ、コカトリスは、それほど脅威ではないってことだ。
だからコカトリスの脅威度はBランクなのだろう。
続いて第3階層について調べてみる。
第3階層に住んでいる魔物は、脅威度Aのレッドオーガだった。
レッドオーガは頭部に2本の角を持ち、皮膚は赤色、身長は3メートル前後で筋肉質、金棒による物理攻撃と、火魔法ファイアボールを得意としている。
レッドオーガ・レベル1のステータスは、
HP 400
MP 400
力 400
防御外皮 300
知力 100
速さ 200
器用さ 200
スキル
火魔法ファイアボール(10) レベル1(MP10を消費して炎の玉を撃つ魔法)
棒術適性(100) レベル2
ドロップ品 鋼鉄の金棒
であった。
うーん。
なかなか強そうだ。
同じ危険度Aのサイクロプスよりステータスはやや高い。
サイクロプスのように見識眼や再生力といった、面倒なスキルは持っていないが、レッドオーガは棒術適性(100)を持っているので、近接戦闘にはかなり気をつけなければならないだろう。
新宿C級ダンジョンの情報を集めて、明日の戦いのイメージを作っておこう。
ミノタウロス、コカトリス、レッドオーガと戦うのだが、いずれも一筋縄ではいかない相手だ。
それに――レイドでの探索ということは、俺の周りに初対面の探索者が大勢いるということだ。
20連スチールなら、1発で倒せるが、大勢の初対面の探索者にいきなり自分の手の内を見られるのはよいことだとは思えない。
スキルを隠しながら戦うためのシミュレーションをやってみる。
まずはスチールで分割思考を使っちゃだめだ。
声を出さないスチールで、1回ずつ魔物のスキルを奪うのは必須だな。
その時に、仲間に俺がスチールしていることが分からないようなものだけを奪う必要がある。
512個を奪っても、奪ったことが分からないようにするには、何から奪ったらいいのだろう。
第1階層のミノタウロスが相手なら、スチールで分割思考を使わず、声を出さずに512個を奪っても、全てを奪ってしまってミノタウロスは死ぬ。
ミノタウロスにはスチールは使っちゃだめだ。
手斧を持つ手を大剣で切り落とし、ドロップを確定させてから大剣で斬り殺す作戦でいこう。
第2階層のコカトリスが相手の場合、1回だけなら無言でスチールしても死にはしない。
1回だけなら奪えるのは512個だから、すべてを奪いきらないで済むからね。
目立たないような奪い方、512個を奪っても、奪ったことが分からないようにするには、――スキルの毒爪(石化毒)連撃、毒嘴(石化毒)ドリル突き、防御外皮100、知力300、器用さ100、力10だけ――の順番でを奪えれば、一番分かりづらいと思う。
ドロップ品の毒爪(石化毒)、毒嘴(石化毒)は、スチールをした後で切り落としてドロップを確定するのが良いだろう。
第3階層のレッドオーガが相手の時は、1回目のスチールで、スキルの火魔法ファイアボール(10)、棒術適性(100)、MP400、知力を2だけ奪うのが1番目立たない。
その後、大剣で腕を切り落として鋼鉄の金棒のドロップを確定してからじっくり削り殺すのが良いだろうな。
HPや防御外皮を奪ってしまうと、目に見えてレッドオーガが弱くなってしまうため、俺のスチールの秘密がばれる。
だから、他のステータスは奪っちゃだめだ。
明日の戦闘シミュレーションもできたし、とーちゃんは帰ってきそうもないので寝ることにした。




