第203話 敵の3人の柱
中央に置かれたサッカーボールを囲んで、敵3人が話し合っている。
あれが敵の3人の柱、FWの佐藤豪、中川洋、キャプテン・MFの鈴木賢に違いない。
サッカーボールが中央に戻され、帝都高校ボールで試合が再開された。
1点先行されて、追いつこうと必死なはず、どんな作戦を話し合っていたのだろう。
キャプテン・MFの鈴木賢がボールを横のFWの佐藤豪に軽く蹴る。
同時に中川洋が突っ込んでくる。
鈴木賢もゆっくり中央に走りだし、佐藤豪が右サイドを上がってくる。
石村太晴が佐藤豪の前に立ちふさがる。
上田和仁が敵のキャプテン・MFの鈴木賢をマークしてパスコースをふさいでいた。
俺は佐藤に気付かれないように中川洋へのパスカットをねらう。
佐藤豪、中川洋、鈴木賢のトライアングルが帝都高校の攻撃の要。
佐藤は前に走り込んでいる逆サイドの中川洋にパスを送りたいはず。
普通なら、到底パスカットには届かない距離でポジション取りをしているが、俺のスピードならパスカットできる。
そこが狙い目――罠を張っているんだよ。
石村太晴が佐藤豪に詰めた瞬間、佐藤は迷わず中川にパスを出した。
……ありがとうさん。
俺は、ダッシュしてそのボールをカットした。
そして、一気にトップスピードでドリブルを開始した。
もちろんトップスピードといっても人並みのトップスピードに加減してるよ。
俺のドリブルに合わせてFWの石村太晴・松村琢人とMFの上田和仁、山下颯真、児玉 航も走り出した。
正面に立ちふさがる敵MFを、俺はヒールリフトで抜き去ると、さらに走るスピードを上げる。
目の前には、大きなスペースと敵のディフェンスライン。
後方からは敵のMF達が詰めてくる。
左右から、石村太晴・松村琢人が駆け上がってきている。
そして俺の後ろでは上田和仁、山下颯真、児玉 航がいつでもパスが受けられるように付いてきていた。
俺を止めようと、DFが立ちふさがるが、俺のフェイントを見破れるかな?
俺はシザースワンビートで立ちふさがるDFを切って落とす。
シザースで相手の足を出させ、ワンビートつまりインサイドでチョンと自分の後ろを通して外に流れてから抜いていく技で、ドリブルでスピードに乗った時に有効だ。
俺はそのままふさがったDFを置き去りにし、ゴールキーパーと1対1になった。
ここまでくれば、後はシュートをするだけだ。
横から別のDFが寄ってきていたが、時間は十分残っている。
俺は落ち着いてゴール右隅にボールを流し込んだ。
決して強く蹴る必要はない。
キーパーが届かないところに蹴ってやればいいだけだ。
追加点が決まって、俺は逃げるように走り出す。
仲間に飛びつかれるのは、地味に衝撃を受けるんだよね。
そして自陣の定位置まで戻ってきた。
開始25分、2対0だ。
再びサッカーボールが中央に戻され、帝都高校ボールで試合は再開。
2点先行されて、佐藤豪、中川洋、鈴木賢の3人が、またボールを囲んで相談し、佐藤がボールをチョンと蹴って鈴木に渡した。
FW二人が走りだし、鈴木はゆっくりとドリブルを始める。
松村琢人が鈴木賢のボールを狙い、鈴木は後ろにパスをした。
松村はボールを追って走って行く。
敵MFが逆サイドのMFにパスをつなぐ。
そしてさらに鈴木賢にボールが帰ってきた。
鈴木は中川洋にスルーパスを出した。
中川洋に児玉 航が対峙して、中への侵入を止める。
中川洋はサイドに流れながら前進した。
そしてすぐさまセンターにいた鈴木のボールを戻す。
上田和仁が鈴木に突っ込む。
その前に鈴木はワンタッチで佐藤にパスをした。
そのボールを佐藤もワンタッチで逆サイドの中川にパスを出す。
何度も敵のパスが続く。
パスを回すことで、こっちの守備態勢にズレを作って攻め込むつもりだ。
だんだん狭いゾーンでのパスが混じりだす。
俺たちも、圧力を強めているからね。
ほら、来たよ!
ありがとうさーん。
途中でインターセプトさせてもらったぜ。
並の人間なら、余裕でパスが通っただろうが、俺のスピードをなめてたな。
俺は、そのままドリブルを開始。
トランジションの瞬間に走り出したFWの石村太晴・松村琢人とMFの上田和仁も前線で俺のパスを待つ。
敵MFが、俺の正面からボールを奪いに来た。
俺は、速い球を石村に送り、そのまま中央に走り込む。
ボールを受けた石村が右サイドを駆け上がり、敵DFにマークされた。
石村は、エンドライン手前でセンタリング。
低い弾道で、ゴール前にボールが上がった。
トップスピードでゴール前に走り込んだ俺が、その速い弾に左足でボレーシュート。
敵ゴールキーパーは反応しきれず、ボールはキーパーの横を抜けてネットに突き刺さった。
観客たちから大きな歓声が上がった。
綾華の黄色い声が聞こえたような気がした。
俺は、右拳を突き上げながら、グラウンドを走り自陣ボランチの定位置に帰った。
前半45分、追加点だ。
前半は、あとロスタイムを残すのみ。
敵ボールで再開されるが、そのままロスタイムは何事もなく終了した。
ハーフタイム。
汗を拭き、給水してから監督の前に集まった。
「前半戦、いい感じだったぞ。
後半戦もこのメンバーでいく。
作戦もこのままでいい。
赤嶺は、もっと素早く詰めて、ボールを奪ってもかまわないぞ。
敵の組織力には、個人技で各個撃破してしまうのも有効だからな」
はいはい。俺の個人技を見せてみろって言ってるのね。
……了解。了解。
後半は、どんどんチャージしてボールを奪って見せましょう。
「前回、5対1で負けてるからな。
今回は、それ以上に差をつけてリベンジしよう!」
「「「はい!!」」」
おー、みんな気合が入っているね。
それでは、一丁やってやりますか。
コーチたちに知らない大人が混じっている。
まだ紹介されていないコーチがいたのかな?
それとも新しいコーチが加わったのかな?
「赤嶺! 今日はSC東京のスカウトがお前を見に来ているからな。
活躍すれば、SC東京の練習に参加してもらう可能性がある。
気合を入れて行けよ。
多少無理にドリブル突破を試みても、大目に見てやるから、技を出し尽くして、お前のキープ力を示してみせろ」
「「「おーー!!」」
「すげーな。赤嶺」
周りの選手たちの歓声が上がり、視線が集まる。
「お前らも、積極的にアピールしていけよ。
ただし暴走はするんじゃない。
もっとも大切なのは、状況判断だからな」
「「「はい!」」」
気合が入り、みんなの熱が伝わってくる。
そりゃそうだよね。
活躍すればプロへの道が開けるんだもんな。
俺たちは、気合をみなぎらせて後半戦に臨むのだった。




