第201話 反省会と指名依頼
クロークで買い取りを済ませた俺たちは、今、3階のパーラーで昼飯兼反省会をしている。
「これで、君達の初期研修は無事に終了だよ。
初期研修で、第6階層まで行けたのは素晴らしいことよ。
よく頑張ったと思うわ。
明日からは、『白銀の双翼』の本格始動だね」
「短い間だったけど、俺、沙織さんとご一緒できて、とても楽しかったです」
「私も、とても楽しかった。いろんなことを教わったし、……機会があったらまた教えてくださいね」
「綾華ちゃん。女同士、これからも連絡を取り合っていこうね。今度私の友達も交えて女子会でもしようじゃないの」
「いいですね。探索者の友達ですか?」
「もちろん」
女子会ね――綾華が楽しそうに笑っているのは良いことだな。
俺には関係ないけどね。
「赤嶺君も、これからレイドを重ねるたびに、探索者の知り合いが増えると思うよ。その人たちから、いろいろ教わると良い。探索のこともそれ以外もね」
沙織さんが意味深な笑いを向ける。
……それ以外のことって何なんだよ?
和風ハンバーグを一切れ口に入れる。
日曜の午後、昼のパーラーは相変わらず混んでいた。
「天心君。明日から、『白銀の双翼』はどうすればいいのかな?」
「え! どうすればって?」
「次はいつ探索するの? やっぱり金曜日かな? それとも平日も学校が終わったら一緒に潜る?」
「あ――それなんだけどね」
沙織さんが割って入った。
「実は、『白銀の双翼』に指名依頼があるのよね。できれば月曜から参加して欲しいの」
いきなり指名依頼かよ。
もしかしたら、これに参加させるために、初期研修が早く終わったのか?
「もちろん参加、不参加はあなた達の自由なのよ。
でも、きっといい経験が積めるから、できれば参加して欲しい」
「天心君。どうしようか? 初期研修のレベルアップバージョンだと思えば、やった方がいいよね」
「そうそう。そんな感じで受け止めて欲しいかな……」
初期研修のレベルアップバージョンね……。
「レイドだから、複数のパーティが参加するわ。
月曜から金曜までの4泊5日。
本格的な深層攻略よ」
マジか!
それって……最前線だよね。
「依頼の詳細はこれに書いてあるんだけど」
沙織さんが封筒を1通取り出してテーブルに置いた。
「学校は公休扱い。探索者組合から学校に連絡が入るから心配しなくても出席日数は増えるわよ」
う……俺の弱みをよくご存じで。
綾華が封筒を取り開封する。
中身に目を通してから俺に渡してきた。
俺はその手紙に目を通す。
『指名依頼 白銀の双翼殿
新宿C級ダンジョン深層攻略部隊に参加されますよう依頼申し上げます。
月曜から金曜までの4泊5日。
集合場所 新宿探索者ビル1階エントランスホール
集合時間 毎週月曜午前10
装備はクロークにて受け取ることができます。
探索中の食料は用意されております』
「ここ数カ月、毎週少しずつ攻略しているから、明日から出なくても大丈夫よ。
来週からでも全然オーケー。
たくさんのパーティが参加しているからなかなかいい経験になると思うわ」
「毎週月曜に出発して、金曜日に帰ってくるレイドが募集されてるんですか?」
「そうよ。ここ数カ月は新宿C級ダンジョンの深層を攻略しているわね。A級以上が募集条件だから、メンバーは精鋭ぞろいって感じのはずよ」
精鋭ぞろい――いい響きだな。
精鋭たちに交じって探索をすれば、よい手本を見て学べるってわけね。
「沙織さんたちも参加するんですか?」
「いいえ。明日は私たちに依頼は来ていないわね」
「残念ね」
沙織さんの答えを聞いて綾華が沈んだ声を出す。
「綾華。俺達はどうしようか?
新宿C級ダンジョンって、初めてだね」
「そうね。
私は天心君に合わせるわ。
でも、最初の指名依頼だから断るのも気が引けるかな」
綾華にしては消極的な気がするな。
積極的に参加したいというわけではなさそうだ。
でも、彼女の言う通り、最初の指名依頼を断るのも気が引ける。
俺からすると、学校も公休扱いになることだし、大手を振って学校を休めるのは嬉しい。
「じゃあ、参加してみるってことで良いかな?」
「分かったわ。じゃあ、明日の朝9時に天心君の家の前まで迎えに行くわ。それでいいかな?」
門松さんの運転する車で迎えに来てくれるのか。
――新宿探索者ビルには行った事が無いし、待ち合わせるといっても目印の心当たりがない。
集合場所の1階エントランスホールで待ち合わせてもいいのだけれど、たくさん人がいたら分かりづらいかもしれない。
なら、最初だけでも迎えに来てもらった方が、心配がないのかもしれないな。
「ありがとう。じゃあ、明日の朝9時ころに家の前に出ているよ」
「分かったわ」
「それじゃあ、『白銀の双翼』はレイドに参加ってことで、私が手続きをしておくけどいいわよね?」
「「はい!」」
俺たちは、沙織さんに快く参加を伝える。
「『ブラックキャット』っていう知り合いのSランクパーティが参加するはずだから、あなた達のことをお願いしておくからね。
分からないことがあったら彼女たちに聞くといいわ」
「いろいろ、ありがとうございます」
「その人たちが、女子会の参加メンバーですか?」
「そうそう」
沙織さんと綾華は見つめ合って微笑む。
意味深な笑顔だ――何か通じるものがあるのかな。
俺はまた、和風ハンバーグを一切れ口に入れた。
いつも食べているお気にいりの味だが、遅めの昼食になったためか、いつもより美味しく感じるぜ。
レトルトも不味くはないけど、やっぱりこれだよね。
綾華と沙織さんも美味しそうに食べながら、女子トークに花を咲かせている。
「天心君、今日の試合も頑張ってね!」
突然、綾華が話を俺に振った。
「お、おう……」
「赤嶺君、今日もたくさん点を入れたら、スカウトの目に留まるかもしれないね」
「まだ、今日で3試合目だし、そんなにすぐには無理じゃないですか?」
「そんなことないんじゃないかな。SC東京の下部組織なんだから、活躍すれば連絡が上に行くはずでしょう」
「そんなものですか?」
「そうだよ。だってそのためのユースだもん」
そう言われるとそんな気もするけど、たった3試合でそんなに評価されるものだろうか?
でも、とにかく評価されるように活躍し続けるのは大切だよね。
綾華が俺をにこやかに見つめている。
綾華の期待に応えるように、今日の試合も頑張るぞ。
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