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少年法の壁スピンオフ  作者: リンダ


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別々の大学へ

少年法の壁 後日談


第15話「別々の大学へ」


光は、先に頂点へ届いた。


高校三年間。


女子フライ級。


インターハイ三連覇。


国体三連覇。


高校ボクシング界では、秋生光の名前を知らない者はいなくなっていた。


強い。


速い。


崩れない。


そして、勝っても驕らない。


光はリングを降りるたび、必ず相手へ頭を下げた。


「相手がいてくれるから、試合ができる」


それが光の考えだった。


一年遅れて、理人も続いた。


ミドル級。


インターハイ三連覇。


国体三連覇。


高校一年の頃から注目されていた少年は、高校三年の夏、ついに高校ボクシング界の絶対的存在となった。


鉄壁のディフェンス。


重いパンチ。


冷静な試合運び。


そして、どんな相手にも敬意を忘れない姿勢。


伊達理人の名前は、全国ニュースでも報じられるようになった。


さらに。


理人と光は、ともにオリンピック代表に選出された。


飯山の小さなジムから始まった二人が、日本代表のジャージに袖を通す日が来た。


記者会見で、理人は静かに語った。


「僕は、横須賀での出来事がなければ、飯山に来ることも、光ちゃんと本気でボクシングをすることもなかったかもしれません。でも、だからといって過去に感謝しているわけではありません。傷ついたことは傷ついたことです。ただ、そのあと支えてくれた人たちがいたから、ここまで来られました」


光も言った。


「理人も美羽ちゃんも、最初から強かったわけじゃありません。怖さを抱えたまま、それでも毎日ジムに来ました。その姿を見て、私も強くなりたいと思いました」


二人は競技者であり、恋人でもあった。


けれど、互いに依存していたわけではない。


並んで立つために、それぞれが自分の足で歩いていた。


光は先に高校を卒業し、信州大学教育学部へ進学した。


教師を目指すためだった。


「強さを、誰かを殴るためじゃなく、人を支えるために伝えたい」


それが光の夢だった。


一年遅れて、理人も信州大学教育学部へ進学した。


オリンピック代表としての活動を続けながら、学業にも手を抜かなかった。


教育を学ぶ理由を聞かれ、理人はこう答えた。


「子どもの時に、救われる場所があるかどうかで人生は変わります。僕は飯山で救われました。今度は、自分が誰かにとってそういう大人になりたいです」


美羽も中学、高校と成長し、兄と光の背中を追っていた。


彼女もまた、全国レベルの選手として知られるようになっていた。


一方。


莉央たちも大学へ進学した。


莉央は首都圏の私立大学へ。


こころも別の大学へ。


獅童も進学した。


それぞれ新しい生活が始まった。


授業。


サークル。


アルバイト。


友人関係。


大学生活は自由だった。


けれど、その自由は、時に残酷でもあった。


誰も過去を知らない。


だからこそ、やり直せる気がした。


けれど、過去が消えたわけではなかった。


スマホを開けば、理人と光のニュースが流れてくる。


オリンピック代表。


信州大学教育学部。


高校三冠。


国体三連覇。


世界へ向かう二人。


莉央は、大学のキャンパスでその記事を見た。


ベンチに座ったまま、しばらく動けなかった。


自分も大学生になった。


新しい生活を始めた。


それなのに。


胸の奥では、まだあの黒い画面の声が消えていなかった。


俺は、お前らを許さない。


莉央はスマホを伏せた。


理人たちは、もう復讐などしていない。


責めてもいない。


ただ、前へ進み続けている。


それなのに、その姿を見るたび、自分の過去が浮かび上がる。


獅童も同じだった。


大学の友人が、スポーツニュースを見ながら言った。


「伊達理人ってすげえよな。高校三冠でオリンピック代表だろ?」


獅童は曖昧に笑った。


「そうだな」


本当は知っている。


その名前を。


その声を。


その過去を。


でも言えなかった。


こころも、大学の食堂で光の記事を見た。


信州大学教育学部に通いながら日本代表。


文武両道。


人格者。


そんな見出しが並んでいた。


こころは思った。


あの人たちは、自分の傷を言い訳にしなかった。


傷を消したわけではない。


でも、そこに座り込まなかった。


その事実が、今も自分には痛かった。


第15話「別々の大学へ」。


光は先に進み、理人は一年遅れて追いついた。


二人は信州大学教育学部へ進み、世界へ向かう。


莉央たちも大学へ進んだ。


けれど、進学とは、過去が消えることではなかった。


新しい場所に立った時。


本当に問われるのは、そこまで何から逃げ、何と向き合ってきたのかだった。

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