ミケ迷子中
「それで、天瀬これどういう状況?」
護衛の影に運ばれて大きめのアパートに案内された。周囲には白一教の信者はいなかった。
「こちらは我々が所有しているセーフハウスです。臨時の基地や避難場所として活用しております」
「取り敢えずここは安全ですか?」
「はい。他の仲間もここに滞在しておりますので、協力を仰いで白一教の信者は入る前に排除するように話してます」
スキルで建物を軽く調べると隠しギミックもありそうでちょっとワクワクしている。それにしても厄介ごとに巻き込まれるな?これが主人公補正……!!
「ここまで本格的に動くなんて数年振りか?」
「あぁ〜、歴史で習ったやつね」
「約三十年前にイスラエルで起きた『白像事件』以降ですね。まさかまた国に喧嘩を売るなんて予想にもしてませんでした」
「まだ、こんなに勢力を所持しているなんてな……」
『白像事件』とは、白一教を世界に知らしめた事件の一つ。イスラエルの一つの街を全て白い像へ変えて数万人の命を奪い去ったテロ事件。実行犯である百名以上の信者が命を懸けて起こした儀式が原因と調査結果は出たが、詳細については未だに発見されていない。
その影響でイスラエルを中心とした周辺諸国で白一教狩りが盛んに行われた。最近はあの『火星』を中心としてイタリアから駆逐されたとかニュースにあった。
古代文明の生き残りだとか、魔物が使う魔法を人間が使えるようにした本物の神を崇める宗教団体など、色々な噂が流れてはいるが傍迷惑なものである事だけは確かだ。
「既に警察と軍が動き出しております。排除までは暫く掛かると思いますのでそれまでここで待機を」
そう言って、護衛は一礼すると出て行った。
「天瀬、面倒な事に巻き込まれてるな?」
「そうとも言う。お菓子食べるか二人とも?」
「うん」
「おっ!駅近くのクッキーか!上手いよなそれ」
お菓子を食べながらこれまでの状況を簡単に説明した。ミケ……クッキーの食べ方リスかよ。床に散乱してる……。
「ミケちゃん苦労したんだなぁ」
「……む」
成林が頭を撫でているのに不服そうだが珍しく大人しく受け入れている。色々と過去を憶測はできるが思い出させる必要はない。なるべく楽しい思い出で埋め尽くしてやろう。だから、クッキーを撒き散らすのやめい。
「何かできる事あったら頼んでいいぞ友よ!」
「食事でも奢ってーーー」
「ーーー見つけました」
「『鉄の拳』!!」
突然現れた白い存在がミケの後ろに現れた。成林と同時に攻撃を仕掛けたが、前兆もなく消えた。
「ミケ!」
「くそ!やられた!移動系のスキルだ!」
「……信者が集まってきた。護衛達が応戦中」
「本当に運がない……!」
「さっさと終わらせて情報を集めよう」
「おう」
白一教は国際的なテロ組織だ。前世ならば見つけたら即通報、問答無用の逮捕が行われる。しかし、こちらの世界では身近な危険が多く、人の命が軽い。つまり、この世界では発見と同時に殺害が許可されている。
なんでこんな事を考えているかというと、セーフハウスの周りが地獄になっているせいだ……。
「ここまで多いとは………流石にしばらく食べれないな」
「千人越えの◯体が住宅街にあるのは、地獄だな」
軍や警察の応援もあり、一時間で制圧が完了した。恐らく信者たちは狩人でも五級程度の実力だろう。殆どレベルの少し上がった一般人程度。こちらの被害は殆どない。こういう景色を見ると前世とは違うのだと強く感じる。
「ごめんな成林、突然巻き込んで」
「いいぜ。狩人になったらこういう経験は結局何処かでするものさ」
「お前、なぜかカッコよく見える」
「いつもカッコいいんだよ!」
「まっさかぁ〜、ハハハ!」
「ぐじゃぁああ!!」
「それよりもミケを探さないと」
「……………そうだな」
凄い睨まれているが気にしない。いつもの事だ。
「……あ、ちょっと用事あるから離れるわ」
「組合でも行くのか?」
「いや、ちょっとしたツテがある」
「おいおい、払えない訳ないだろ?」
「本当に今持って無いんです!!」
「あぁ?!テメェが昨日競馬やら賭け事してたのは知ってんだぞ!」
「……行ってません!信じて下さい!」
「クズの言葉誰が信用するか、やれ」
強面の男が男を投げ捨てると、周りにいた手下が次々と取り押さえに家中に散らばった。喚き散らす男を無視して男は外に出た。
「たく、利息なしの慈善融資している筈なのに何でこんなカタギみたいな事しないといけないんだよ………」
「相手がクズ過ぎるだけですよ」
「何だ桜木」
「社長のメンタルケアしに来たんですよ」
「はぁ……」
男の後ろにいたのは端正な顔立ちと、甘く低い声は数多の女性を振り向かせるが、その大胸筋は女性だと一目でわかるものだ。
「犯罪者の社会復帰の為の支援ですからこう言う機会はあるとは思いましたが、彼はどのクズは中々見ませんね」
「選考段階でしっかり選んだ筈なんだがなぁ」
「ああいう弱者の皮を被って自己中心的な奴は、自分の話す事を嘘だと思っていませんので善良な人や真面目な人は騙されますから」
「俺は善良ではないが?」
「バカ真面目でしたね」
「おい!」
「まあまあ落ち着いて下さい」
「メンタルケアはどこに行った?」
「マッサージでもします?」
「するかボケ」
「釣れない」
「釣られたとしてもお前しないだろ」
「はい。したら◯します」
「コイツ………」
散々男を揶揄った女性はその様子を見て大爆笑した。
「でも、貴方なら力で跳ね返せるでしょ?皿目章社長?」
「………誰がそんな恐ろしいことするか」
長い顔を見せた男は日本でも少ないかつて第一級狩人の1人だった。
更新遅れます(事後報告)




