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今日も無難に生きる  作者: 山芋
純白の使徒
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動き出す針


 ミケを引き受けてから一ヶ月が経過した。既に学校にも通い始めており、友人もできたらしい。こちらでは大学生生活も以前と変わらずに過ごしている。狩人としても大学が狩人専門学校のような学校なので問題なく活動している。


 護衛が学校では監視しているので少し安心できる。ただ、送迎は必ず早めに行くようにして一人の時間を作らせないようにしている。


「パパ、今日は牛食べたい」


「『マーケット』で買い出しするか」


 首を振っているミケを引き連れて家から徒歩十分の近場にある組合へ向かった。隣接しているマーケットは大型スーパーの駐車場の敷地面積は軽くある。


「おっきいの沢山」


 家と同じ大きさの魔物も点々と鎮座されていたりして、子供がはしゃいで怒られている姿も度々見る。狩人以外にも人が来れるので非常に賑わっている。

 

「あれ、食べたい」


「うぉ、デカい牛だな」


 丁度、二階建ての家の大きさはある牛型魔物の解体ショーが始まっている。


「あれ、何?」


「あれは『オルニスポウスロンヒ』だね。昔から有名な高級食材として食べられている魔物だよ」


「高級食材……ジュルリ」


 その巨躯の解体は半日かかると言われている。しかし、実際には数時間で終わらせた店主は凄い。解体ショーの効果もあって30分で全て完売している。


 最前列で待機したお陰で良い部位を買うことが出来た。一キロ十数万と高いのに売り切れるのは流石高級食材。


 他にも野菜系の魔物とかファンタジー食材も買って帰宅した。この世界前世の動物とか植物の大半が魔物化してるんだよな……。農家とか収穫の時は魔物の悲鳴が風物詩とか言われる。この世界にほのぼのとした田舎は存在しない。


 折角なので半分はステーキにして食べる。ソースはこの肉自体が異次元の旨みを持っているので焦がさなければそのままでも美味い。


 テレビを見ると坂目さんの姿があった。


『明日、傘元碧さん率いる群馬前線奪還作戦が実行されます』


「いよいよ始まるのか」


 既に何ヶ所か町が滅んでるとかあったな。


『メンバーは第一級狩人3名、第二狩人5名です。その中には坂目新芽さんも参加しており、この作戦成功と同時に第一級に昇格することのことです。この事に町の人はーーー』


 流石、期待の新星。もう関わることは無いと思うけど頑張って欲しいね。






「報告です。イタリアの教会が全滅しました」


『そうですか。彼等は我等が神の奇跡により白の世界へと還った事でしょう』


「……羨ましい限りです」


 仲間が死んだことに悔しそうに涙を流す男の目は、何故か嬉しそうに笑っていた。


『そうです。しかし、我々にはその威光を世界に広める使命があります』


「は!」


『原因はわかっておりますか?』


 脳へ直接話す存在は純白のカーテンに隠れてシルエットさえ確認できない。ただ、その優しい音色は心に溶け込む。


「九つの星の一人、『火星』ファルスファリアを筆頭に侵略を受けています」


『やはり彼女でしたか』


「はい。あの魔女は教祖さまがご降臨された頃から邪魔をしております。かつては力不足であった我等ですが現在は世界中に力を持っております。今こそ、かの魔女を討ち取りますか?」


 血の涙を流して悲願を叶えようとする男の姿は、狂気を感じる。


『いえ、それは今は重要ではありません』


「……あの少女ですか?」


『そうです。我等が神にこの世界を献上するために遂に生まれた神子です。我々の使命はただ一つ、少女を捧げる事のみです』


「流石我等が教祖さま。目先の事に呑まれて本来の使命を忘れた私を罰して下さい」


 そう言って自身の目を躊躇なく抉り取った男は、苦悶声ではなく喜びの声を漏らした。


『それでは全教徒に通達しなさい。()()()()()()()と』


「御意」


 瞬く間に目が再生した男は抉り抜いた目を残して消えた。純白の教会にはその赤色の血は酷く目立った。


『全く、あの子は熱心過ぎますね』


 慈愛に満ちた声と共に血と目は白に呑まれて、再び教会は不純物が存在しない白の世界になった。  


 白の彫刻となった目が不気味に佇んでいた。




 その日を境に日本は白へと染まり出した。







「ぐあぁぁあ!!なんではずれちゃうんだよ!!」


「どんまい」


「くそぉお!!アイちゃんのライブここ最近はハズレなかったのに!!」


「ライブ配信で観戦できるだけいいだろ」


「くぅ、生がいいんだよ」


「キモい」


「ぐはっ!」


 ミケの送迎で一緒だった成林はミケのトドメにミノムシになった。ここ数ヶ月は当たった自慢でウザかったのでこちらとしては喜びしかない。


「ミケちゃん、そんな事言わないでよぉ」


「キモい」


「ぐっ?……あれ?なんだか良いなぁ……」


「え?」


 ミケを抱き上げて変態から離す。


「いやいやいや!冗談だから?!」


「冗談でも終わりだろ」


「えぇえ!!友達じゃないか?!」


「今日で終わりだな」


「お疲れ〜」


「見放さないで〜!」


 成林を揶揄いつつ歩いていると、前方に白の服を着た男がいた。


「成林」


「おうよ」


 こちらに気付いたのか男は血のついたノコギリを構えた。


「おぉ!!神子よ!我々と共に行こうぞ!」


「一人で行けやゴミ『鉄の拳』」


 近づいたら成林は相手が切りつけたノコギリごと粉砕した。


「なんで白一教がこんな街中にいるんだよ?」


「成林、残念なお知らせだ。ここ一体()()()()()()()()


「まじかよ……、ちっ、急いで組合行くぞ!」


「探索は任せろ」


「頼む天瀬!」


 ミケの目を隠して駆け出した。それと同時に道の角や()()から白一色の白一教徒がワラワラと湧き出てきた。中には得物に血が付いている者もいた。


「コイツら……!一般人を!」


「天瀬様こちらへ!」


 教徒を轢いてやってきたのは最初に護衛についた男だった。


「成林乗るぞ!」


「お、おう!」


 スキルを使って止めようとする敵もいたが、日本でも珍しい装甲車は包囲網から安全に脱出させてくれた。






 

 

『オルニスポウスロンヒ』

 鳥の脚に一角が生えた巨大な牛。昔から存在して現在でも高級食材として扱われている。その突進は戦闘機に匹敵する速さを誇る個体もいる。逸話として、小山を吹き飛ばした伝説がある。




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