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今日も無難に生きる  作者: 山芋
純白の使徒
22/28

餅は餅屋


「おぉ、日本人多い」


 ミケを連れて帰国するとお腹空いたと言われたので自宅近くの回転寿司に来た。


「好きなの頼んでいいぞ」


「全品制覇………!」


「食べれたら、な?」


 タブレットからサーモン、マグロやエビを続々と押していく。到着した寿司をミケは次々と食べていたが、十皿目でギブアップした。


「無念」


「その年でよく食べるよ」


「美味しかった」


 私は二十皿程度で完食。狩人は人よりも何倍も食べるんだよ。食後の軽いデザートと温かいお茶を頼んでミケに今後の生活について話した。


「私の子供になる手続きは向こう側がしてくれて、明日から正式な父親になるみたいだな」


「パパよろ」


「軽いな」


 小学校に一応通わせないといけないから、その挨拶もしないといけない。大学の方は成林が協力してくれてるから問題はない。両親にも挨拶しに行かないと……,


「やる事は色々あるけど、こっちの生活にはゆっくり慣れていこうな」


「了解ボス」


「パパと呼びたまえ」


「パパ好き」


「…………」


 後でアイスでも買ってやろう。


「ちょっと、トイレ行ってくるから待っててな」












 翌日、ミケにベットを占領されて床で目を覚ました。こんなに寝坊がダイナミックだとは………。朝食を軽く作りながら今日はミケの為に生活品を全て揃える。


「………パスタ…折ったら………鬼が来る」


「いつの間に開国を?」


「Buongiorno, padre」


「おはよう、翻訳機付け忘れてるよ」


「ありゃ」


 ミケは日本語はまだ話せないので翻訳機を貸している。こちらで生活するなら必須だからな。小学校であぶれる事がないようにしないと。


「席ついて食べようか」


「うぃ」


 食卓には最近ハマってるだしをかける卵かけご飯セット、こだわりのカリカリベーコンとちょっとしたサラダを作った。いつもなら栄養なんてあんまり考えないが子供に同じ食事を出す訳にはいかないからこだわってみた。


 ミケの好きな料理もあったら作れるようにしておきたいな。


「いただきます」


「……イタだきまス」


 食事を終えた後、朝に弱いのかふにゃふにゃなミケの髪を梳いて、向こうで買った服を着させる。その間に今日の予定を話した。


「ミケの日用品はあまり分からないから今日はパパの妹が来るぞ」


「おぉ〜」


 丁度、その時にインターホンが鳴り向こう側に見慣れた姿があった。


「『お〜い、あ〜けて』」


「開けてるから入っていいぞ」


 扉が開く音がして入ってくると、ハワイでも行ったのか?くらいの服装を着ていた。


「おすおす!元気だったお兄ちゃんよ」


「沖縄でも行ってたのか?」


「先週ね〜、お兄ちゃんのお小遣いさまさまだよ〜」


 狩人は割と稼げるから多めにお小遣いを渡している。そのせいか妹は日本各地を高校生ながら飛び回っている。その内に海外に飛び出しそうだな。


「お!その子がお兄ちゃんの娘?」


「娘だぞ」


「「うぃ〜」」


「パリピかよ」


 気が合うのか謎の挨拶をしている二人を呆れて見ていた。


「今日は頼むよ」


「この二流モデルに任せなさい!」


「二流なのか……」


 我が妹ながら顔は整っている。雑誌では顔を偶に見かける程には仕事をもらっているらしい。よく父が妹が載っている雑誌を送ってくる。私?よく目元だけは似ているねと言われるさ。フッ………。


「まずは家具から買いに行くか」


 電車で近くの家具屋に行くとベットと机、椅子を選びに行く。


「やっぱりこういう場所ワクワクする〜!」


「イイね」


「ベットと机は好きに選んでいいぞ〜」


「よ!お兄ちゃん太っ腹!」


「フトッぱラ!」


「パパは椅子探しに行くよ」


「了解!ミケちゃん行こうか!」


「お〜」


 二人が早速寄り道している姿を見ながら、背後を付けてくる奴の処理をする。まだ、来たばかりなのによく見つけ出せるな。


 死角に入り込み、しれっと護衛の男に近づく。


「カーテンを展示している付近にも一人いますよ?」


「?!」


「それじゃよろしく〜」


「……感謝します」


 さて、ゲーミングチェアでも買ってあげるか!





 

〈別視点〉

「対象を確認した」


『そのまま護衛を開始しろ』


「了解」


 人混みに溶け込んでいる男はミケの護衛を受けていた。


(あの『占い師』からの依頼を受けるなんてな)


 『占い師』として一部の界隈では厚い信頼を受けている存在からの依頼はここ数年はなかった。数年前のあの事件以降は平和であり、男が所属する組織でも彼女が動いていたとは把握していなかった。彼女が動くのは大半が災いを防ぐ時だけだ。


(あの少女がミケ、男の方が田中天瀬。第四級狩人かだったな)


 狩人の証を身に付けていない男の身のこなしはそこら辺の通行者と変わらない。しかし、観察眼がある者なら余りにも影が薄いことに気付く。そして、彼らを付けていた男に近づき一瞬で脳天を突き刺した。


 その男が声を漏らす前に自身の影に落とした。流れるような暗殺は人通りの多い道では一人くらいは気付かれてもおかしく無いはずなのに誰も反応せずに通り過ぎて行く。


(様子を見て男の方には接触しておきたいな)


 二人が回転寿司に入り、他の客に紛れるように他の席についた。違和感を感じない程度に注文をしながら周囲の警戒を男は自然に見せながら監視していた。


「こんにちは」


「……こんにちは、どうされました?」


「席がここだと思いまして」


(……いつ居た?)


 正面に居たのは監視対象である筈の田中だ。トイレに入って行ったのは見たが出た姿を男は捉えられなかった。


「そうなんですか?すみませんが多分、間違えていらっしゃいますよ?」


「何言っているんですか、打ち合わせ場所はここでいいですよ?」


「………あぁ!すみません、すっかりボケてました。こちらへどうぞ」


「ありがとうございます」


(いつから気付かれていた?この男に連絡はしてない筈だが……)


「田中と言います」


「影と言います。今後、()()()をそう呼んで下さい」


 他から見れば営業の軽い交流にしか見えない。その後は事前に打ち合わせた様な世間話を交えて、今後の互いのスタンスと要求を話した。


「その証を持つ者が連絡を担当しています」


「わかりました。家庭への訪問は私が出向くので不要です」


「承知しました」


「では、娘が待っているので」


「はい。今後とも宜しくお願いします」


 互いに行き先の報告、マンション内の護衛は不要であるとを伝えて承諾し合った後、二人は別れた。護衛の男はその場に残らずに会計後に外に出ると、内容の共有をした。


「ーーー以上だ」


「『了解した』」


 通信を切った後、男は二人の方をチラリと見た。仲良く食べている姿は容姿は違えど家族にしか見えない。


「…あの『占い師』が直接依頼を頼み込んだ訳だ。第四級は飾り階級だろうな」


 食事を終えて出てきた二人を見ながら溜め息を男はついた。


(部下が心配だが……、これも経験だ)


 明日護衛に付くことになる部下を不憫に思いながら、マンションに入って行く姿を見届けて消えていった。







 裏方の紹介でした。

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