再会
「指名依頼ですか?」
「はい」
いつものように依頼を受けようとすると、知り合いの佐々木さんから指名依頼がある事を伝えられた。
「オーガの討伐依頼です」
「オーガですか……」
「天瀬さんの実績を顧みても、挑んでも大丈夫だと思いますよ」
第三級に昇格する条件として、第四級の最上位、または第三級の下位に位置する魔物を討伐する必要がある。他にも方法はあるが基本的にはこれが一般的になる。
「場所はどこなんですか?」
「群馬ですね」
「秘境ですか」
こっちだと群馬は魔物の巣窟であり、秘境と呼ばれてる。狩人組合の日本における最前線は群馬と呼ばれるほど。
階級が高い魔物が多く、戦闘狂御用達のスポットです。
「危険過ぎません?」
「大丈夫だと思います。同行者がいまして、その方は第二級との事です」
「ますますこの依頼不思議ですね……」
「ただ、これ程条件がいい依頼もないと思います。如何されますか?」
しばらく悩んだが、結局受けることにした。だってお金が欲しいんだもん。
「ーーーそれで、依頼主ですか」
「はい」
狩人組合の近くにあるカフェで同行人と合流すると言われて行ってみると、それはそれは周りの注目を浴びる美女が座ってた。残念な事に見た事がある人物だ。いや、偶然かもしれない。
「待ってましたよ?」
避けていた訳ではないが、何とかなく罠に掛けられた感覚がする。
「オーガの依頼に同行する方ですか?」
「そうです。名前は坂目新芽といいます」
「勿論知っています。初めまして田中と申します」
向かい合って席に座ると、各自注文してからの空気になった。この店期間限定スイーツあったな。頼んでおこう。
「お久しぶりですね」
「そうですね。わざわざ会いに来られるとは思ってなかったですが」
「そんな事言わなくてもいいじゃないですか。私と貴方との仲なんですから」
瞬間、周囲の視線がチラチラ集まり居た堪れない気持ちになる。他人に見られる事なんて余りない人生なので。
「所で居場所はどうやって?」
「組合から聞きました」
「秘密義務とは?」
「さぁ?」
おい、仕事しろ組合。
「情報漏洩で訴えますか」
「冗談です。第一級は秘密情報を知る権利を有しますので。もちろん、取り扱いの責任は付いてきますが」
「昇格したんですか?」
「一応、『候補』ですが」
あれだけの力があればそうか。雲の上の存在だな。
「指名依頼の背景は推測できますが。一応、目的を聞いても?」
丁度、運ばれてきた食事を少し食べた後こちらに微笑みながら一言、
「貴方に会いたくて」
周辺が何故か静寂に包まれたが…まぁいい。大体、この依頼もお礼を兼ねているんだろう。素直に受け取っておくのがいいかな。
「私も同じです」
「おや」
周囲から騒めきと熱い眼差しが注ぐが……まぁ、いい……のか?ユーモア混ぜてみたと思ったら地雷だった?
「ふふ、大学生が高校生を狙っているんですか?」
「それは捕まるのでちょっと無理ですね」
「釣れないですね」
そう言って笑った彼女を見て、一つ開けた席に座っていた女子高校生が気絶してる。芸能人恐るべし。
「冗談はさておいて、今回の依頼についての打ち合わせをお願いします」
「冗談だったんですか。酷いですね」
「………」
下手に口に出さないから黙秘権を行使する。
「そうですね。今回の依頼はお気付きになってるかもしれませんが、一言で言うなら前回のお礼です」
「安定した昇格の手伝い、ですか」
「そうですね」
「意地悪ですが、私が第三級に無相応とは考えなかったんですか?」
「貴方ならいけるでしょう?」
「光栄ですね」
謎の信頼が怖いな。
「それなら約束ですから」
「ん?約束、ですか?」
「はい」
何故か微かに頬を染めているが、残念な事に覚えていない。何か約束したかな?
「………奢り?」
「それもあります」
それも?あれ、他何かあった?え?本当に覚えてないんだけど……、あれ?
「………覚えて、な、ない?」
彼女の微笑みから一転、口が引き攣り始めた。やべぇ、キレ始めてる!徐々に目が冷たくなってきてる。
「いや、あれですよね。あれ、そう!サイン!」
「…………へぇ〜?」
やべ、間違った。他に他に……、何も約束してないだろ!は!まさかーーー
「ーーー何も約束してない、とか?」
「………」
凄く不満げな顔になった。
「そうですか。覚えていないんですね」
「…………」
「年下に黙り込み、と?」
「いやぁ〜」
「嘘は良くありませんよ」
「すみません」
何で手伝いしたのに怒られてるんだろう、理不尽だ!
「忘れているからですよ」
「ぐっ!」
「それがモテない原因では?」
「魔法使いになる為の修行です」
「できないだけでは?」
「ぐはっ!!」
一瞬でも巻き返せると思ったが、細い糸は即座に切られた。高火力な攻撃は周囲にいた一部の野郎にもダメージを与えていた。
「はぁ、まあいいです。こっちで何とかしますので」
「すみません」
彼女も落ち着いたのか、まだ頬が赤いが「こちらも出会って二回目なのに言い過ぎました。すみません」と謝り、依頼について話し始めた。
元々、彼女が群馬の定期的な偵察の依頼を受けたらしいが、戦闘を出来るだけ減らす為に私に依頼を出したそうだ。背景にはお礼も含まれているそう。
「道中、第四級討伐対象の排除や上位の魔物への戦闘時の支援が主な仕事ですか」
「そうなります。依頼にある通り、オーガの討伐に加えて支援の報酬も追加でありますのでお願いします」
提示されていた内容とは異なるが、依頼額は相場よりも高めで良心的だな。
「わかりました。出発日はいつですか?」
「そうですね。私も学業がありますので今週の土日でいいですか?」
「……はい、大丈夫です。現地集合でいいですか?」
「そちらの判断で構いません」
「では、現地集合でお願いします」
「…………そうですか」
なんか「これだから……」みたいな目で見られたが、気のせいでしょ。
その後の食事は上位狩人の常識なんかを教えてもらった。現役の人に聞く話はありがたいな。会計の時もお礼だからと払ってもらったが、周りからの目が痛かった。
年下に奢ってもらって何が悪い!




