第一話 13歳の科学者
1912年。北アメリカ南部に位置する国【バジリス王国】があった。バジリスはアメリカ大陸で二番目に権力や軍事力を持つ国であり、アメリカ大陸に初めてフューマが伝来した国であった。そんなバジリスの南部に存在する貧困街の工場地帯にある鉄工所で、一人の少年がとある物質の生成をしていた。
「こんなもんでいいかな」
少年は鉄と木材に手で触れると、木材を分解し炭素だけを取り出し、融合させ、分解した鉄へ融合することで鉄を鋼に変えた。そして生成した鋼を、壊れた工場の機械や壁に使い、修理するという作業をしていた。
「作業がはかどるぜ!さすがアルベルトだ!フューマってやつはすげえや!」
「いいってことよ!俺も修理するだけで賃金もらってるんだ!こちらこそ感謝だぜ!」
この少年の名はアルベルト・ハンフリー。父親がフューマ体質になり、父の体質を受け継いで産まれた子であった。なので彼は、物心のついた頃から物質の融合分解ができていた。
だが彼が幼いとき、バジリス南部の科学実験所に勤務していた父がとある実験の失敗で命を落としてしまった。そして母親もその1年後に後を追うように病で死んだ。
両親を亡くしたアルベルトは、自身のフューマ体質という能力を使い、科学を父の遺物から学び、なんとか今まで精一杯生きているのである。
「じゃあアルベルトよ!次は燃料の石油を作ってくれよ!お前ならできるんじゃないか?」
そう作業員達が期待を高めるが、アルベルトは「国の掟でできないんだ」と断った。
ここで、バジリスの国におけるフューマ使用のルールを説明しておこう。ルールは以下のとおりである。
・物質の融合で価値のあるもの(紙幣、石油など)を生成してはならない
・命。または生命の器となる身体そのものを生成してはならない。成した者は代価として
フューマ体質を破壊する。
・電気分解、熱融合を扱って殺し、障害を負わせてはならない。殺人を犯した場合は極刑
に処す。
・国家レベルのフューマ使用者のみ、危険物(核、毒物など)の生成を許可する
・フューマにより生成、加工したものは、売買してはならない。ただし破壊されたものを
修復し、再利用することは可能とする。
といった感じである。
日が沈みかけている頃。アルベルトは仕事を終え、スラムの自宅へ帰っていた。
そんな帰宅路の路地を歩いているときに急展開は起きた。帰宅中のアルベルトは衝撃的な光景を目にした。
「ゆるして....知らなかったのよ....。まさか売ってたものが人体から生成されたものだった
なんて...」
「言い訳は無用。私は国軍の者でもあり、フューマ使いでもある。したがって、命から
生成されたものを知らずに売買しているとしても、命への冒涜にすぎん。
貴様がフューマを使用していなかったとしても、同罪の殺人だと思え。
法律では人体生成者と関わる者は極刑となっている。始末させてもらうぞ!」
軍人が物売りに言い終えると、鉄塊から剣を生成し、物売りを刺殺した。
アルベルトは、人体を物へと生成したフューマ使用者を裁かず、生成された物と知らずに売買していた物売りを殺した軍人に怒りがこみ上げ、軍人の前へ出た。
「おいおっさん!その物売りは命の生成物と知らなかったんだぞ?なぜ殺すんだよ!?」
「君は自分の身内が物へ変えられ、売られていたらどうする?
多分だが全員が生成した者も売買した者も許さんだろう。それすなわち同罪に処さねばならない。
わかったら坊やは家に帰るんだな」
そう軍人は言い終えると、鋭い眼光を飛ばし、その場を後にしようとした。
だがアルベルトはさらに怒りを上げ、工場から持ち帰った数本の鉄部品を分解し、融合させナイフへと変化させた。そしてアルベルトはナイフを持ち、軍人に襲い掛かった。
だが軍人は即座にナイフへ触れ、酸素と結合し酸化させ、ナイフを錆びさせ粉々にした。
「空気中に鉄の弱点があることがわからんか青二才。そして私を殺そうとしたな?
それすなわち反逆だ。貴様もこの物売りのようになりたいか?」
そう軍人が聞くと、アルベルトは怒鳴りながら返答した。
「ああやってやらあ!罪のない人を殺すてめえら国の犬なんざ!この俺をぶちのめす!
生まれつきのフューマ使いをなめるな!」
そうアルベルトは答えると、落ちていた石を短剣へと変え、軍人に襲い掛かったのだった。




